「ドラえもんの四次元ポケットから出てくる数々の未来のガジェット」的なスパイグッズが魅力の1つである「ミッション・インポシブル」シリーズ。
その中でも大活躍した工作員グッズが、「ぴちょん!」と水滴が滴る音を発する小道具です。
映画『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(Mission: Impossible – Ghost Protocol、2011年)のロシア・クレムリンのシーンで登場します。
水滴音を出す機械は販売しているのか?
このスパイの小道具が気になった人は多いようで、ネット上には、「Amazonで買えるのか?」「プレゼントで買いたいのだが、どこで売っているのか?」という質問が、英語や日本語でも散見します。ベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)が使っていたこの「ぴちょん!」という音を発する物は、購入できるのでしょうか?そもそも実在するのでしょうか?
水滴音発生器はどんな仕組み?
フィクションの創造物
答えを先に書くと、この水滴音を鳴らすグッズは実在しません。フィクションの創作物です。よって販売もされておらず、購入することもできません。この水滴音を発生させる小道具の、映画で使われたプロップはこちら 179 Kris Peck Interview part2のサイトで見ることができます。
名前は quacker(クエッカー)
そのサイトを見ての通り、その機械は見せ掛け(見た目だけ)で、その機械が実際に音を発するわけではありません。劇中の水滴音は別に挿入されています。この機械の名前は「 quacker(クエッカー)」と命名されているようです。
仕組みは意外とハイテク?
ペンライトのようなしっかりとした金属のグリップにボタン、先端にはエリザベスカラーのような音を増幅させる丸く広がってた形状の傘のようなものが付いており、その傘の中央には何やら細いアンテナのような繊細な金属の棒(電子機器?)が数本、確認できます。映画初見時は、てっきりアナログのシンプルな小道具かと思いきや、よく見ると意外とハイテクな機械・・・という設定だったようです。
フィクションの創作物ではあるものの、その形状から「 quacker(クエッカー)」が実際に機能するとしたらどのような仕組みなのか?と「SF救援隊」的に考察してみると、以下のように2パターンの可能性が推察できます。
- 水滴音を録音したのを単に増幅させている
- 水滴音のような音を内部で機械的・電子的に作ってそれを増幅させている
1の可能性については、一番、現実的ですが、単純に録音した水滴の音を増幅させるだけの機械の線です。水滴の音はYouTubeなどでもたくさん公開されています。ただ、それにしては「 quacker(クエッカー)」は音がリアルすぎる気がします。
2の可能性については、「 quacker(クエッカー)」の内部で電子的または機械的に水滴の音を作って、それを増幅させなが発している、というものです。「チャッカマン」のように先端で火花(静電気)のようなものを発生させて、その音を水滴音に改変しているのかもしれません。その意外としっかりした作りから、こちら2のほうが設定的には可能性が高いです。
但し、1にしても2にしても、ただ音を増幅させているのではなく、パラメトリック・スピーカー(指向性音声発生器)のように、ターゲットにした特定の空間にいる人間にだけしっかりと音を届けられるような、ハイスペックな機能を備えているようです。
なぜなら単に音を鳴らしただけなら、聴いた人は、その音がした方を見るはず(音を鳴らした場所がバレるはず)です。
しかし、映画の中では、ロシア・クレムリンの警備兵は、まったく音がした方向を見ていません。音が飛んで壁にぶつかった場所あたりから音がしたような反応を示しています。
よって、そのコミカルな使われ方に反して、この「 quacker(クエッカー)」は、かなりハイスペックな機能を備えたハイテクな機材(という設定)だったことがうかがえます。
通販で似たものを探すと・・・
この「 quacker(クエッカー)」は通販では買えませんが、コンセプトが似た商品は、Amazonなど通販で買うことができます。クリッカー
それがこの「クリッカー」です。「クリッカー(Clicker)」は犬や猫などペットのしつけ(トレーニング)に使われるものです。中にアルミなどの反発性がある金属の板が入っていて、ボタンを押すと「カチッ」と音がでます。その音を条件反射的にペットに学習させて、ペットをしつけるという道具です。
電池など一切入っておらず、完全にアナログな商品です。
残念ながら、「 quacker(クエッカー)」のような綺麗な水滴音は出すことができません。
パッチンカップ(ポッピンアイ)
また、その他にも「 quacker(クエッカー)」に近いような音を出す玩具があります。それがこちら。
このパッチンカップ(ポッピンアイ)は、ゴムの反発力を使って、ジャンプさせて遊ぶものですが、反発する際に「パチン」「ペコン」と音を出します。
「反発」という点で、前述の「クリッカー」と同じ原理ですが、残念ながら、こちらも「 quacker(クエッカー)」のような綺麗な水滴音までは出すことができません。
水滴音「ぴちょん」の原理
「ぴちょん」という水滴音が発生する原理は、以下のサイトに説明がありました。高さおよそ9センチから直径4ミリの水滴を水に落とし、ハイスピードカメラで分析してみたところ、音が発生したのは水滴が水面の衝突した瞬間ではないことがわかりました。水滴が水面に当たると、その衝撃が水面下まで伝わって大きな凹みができ、最後に小さな気泡が取り残されているのがわかります。映像と音声を分析すると、この気泡が細かく振動することで、ぴちょん、という音が発生がしていました。つまり、この気泡こそが音の正体だったのです。
https://data.wingarc.com/sound-of-splash-11711
ただ、この説明だとよく分からない、というか違う気がします。
幸い、(一般的に)日本人は音を左脳で聴いているので、音を「声」として聴き、分解することができます。
例えば、一般的に欧米人は、虫の声を右脳で聴いているため、虫の声を「雑音」とみなし、聴き取れていない。しかし日本人は虫の声を左脳で聴いているので「声」として認識するため聴き取れている、と言われています。日本人が音を「りーん、りーん」と表現したり、周囲の音に風流を感じたりするのもこのためです。
この「ぴちょん」という音も、単に気泡の1音だけでなく、少なくとも3つの音が連続して起きているように感じます。
つまり、「ぴちょん」=「ぴ」+「ちょ」+「ん」ということです。
- 水滴が水面に当たる時に「ぴ」が発生し、
- 次に水滴が水中にもぐった時に「ちょ」が発生し、
- 最後に水面が閉じる時に「ん」が発生している
ように感じられます。
水滴が大きくなるにつれて、「ぴちょん」→「ぽちゃん」→「どぼん」・・・と音は大きくなっていきます。少なくとも日本人はそのように音を聞き分け、左脳的に音を表現していきます。
水滴が鳴る仕組みは、反発という点で「クリッカー」や「パッチンカップ」に似ていて、それらがヒントになりそうです。
この3つの連続音をうまく再現できる素材を使えば、「クリッカー」などの延長線上に、「 quacker(クエッカー)」のような水滴音を出す道具を、しかもアナログで安価に作り出せるかもしれません。
映画『ミッション・インポシブル』シリーズで登場した、数々の夢のスパイグッズの中でも、この「 quacker(クエッカー)」が一番、実現化に近いモノと言えるでしょう。
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