矛盾だらけ【ターミネーター:ニュー・フェイト】疑問点まとめ

ターミネーター

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ひどい内容で大コケ、大失敗に終わった『ターミネーター:ニュー・フェイト』(原題 Terminator: Dark Fate)。
ターミネーター・シリーズはコケたら無かったことにされるので、『ターミネーター:ニュー・フェイト』は続編(次回作)製作中止どころか、この作品自体が黒歴史化になる可能性が高いです。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』が観客に受け入れられなかった理由の1つに、とにかく内容が押しつけがましく無理があり、前作を台無しにしたうえに矛盾や疑問点があり過ぎて、観客の許容量を超えてしまった点が挙げられます。

そんな『ターミネーター:ニューフェイト』の数々の矛盾点と疑問点をまとめました。

ジョン・コナーが4年間 成長していない矛盾

冒頭、南米・グアテマラ1998年のシーンでジョン・コナーが登場しますが、T2の舞台(1994年)当時と、ジョン・コナーがまったく成長していない、という矛盾が生じています。10歳から14歳へ、成長期で4年も経過したのなら、かなり身長も顔も変わっているはずなのに、まったく変わっていません。

ジョン・コナーを演じたのは、
  • T2がEdward Furlong(エドワード・ファーロング)で1977年8月2日生なので、撮影(公開)当時は1991-1977=14歳
  • ニューフェイトがJude Collie(ジュード・コリー)で2004年5月6日生なので、撮影(公開)当時は2019-2004=15歳
ということで、演者の年齢もほぼ同じで、その意味でも「成長していない」ことが分かります。

現在のCG技術の限界で、「4年成長したジョン・コナー」をきちんと描けないのであれば、あの矛盾したジョン・コナーのシーンは作るべきではありませんでした。また、あのシーンを覆すほどの魅力をまったく提供できなかった、この『ターミネーター:ニューフェイト』は、いろんな意味で、CGの火遊びで大やけどを負ってしまった映画、と言えます。

この辺りは「ニューフェイト」と同じ権利者・同じ制作会社の姉妹作品である「ターミネーター・ジェニシス」が、「旧T-800 vs 新T-800」のCG再現シーンに力を入れ過ぎて、見所がそこしかなく「20 minutes movie(20分間ムービー)」(最初の20分しか見所がない)と揶揄されて失敗に終わった、デジャヴ(同じ失敗の繰り返し)と言えます。

スカイダンス社が作ったこの2作品(ジェニシスとニューフェイト)は、ともに大失敗に終わりました。

根本的にストーリーが破綻

この『ターミネーター:ニュー・フェイト』、そもそも根本的なストーリーが破綻しています。
この『ターミネーター:ニュー・フェイト』が言っているのは、せっかくグレースらが命をかけて守った主人公ダニーが、次の作品の冒頭、あっけなくズドンで終わり・・・ということとまったく同じことなので、ストーリーが破綻しており、観ていてやるせないものがあります。

キャラクター不信

あっけなく主要キャラクターが消されてしまうと、すべてのキャラクターの存在が「軽く」なってしまい、感情移入ができない。「はい、お次はこの人でーす!」と言われても、「あーそうですか・・・」としらけてしまい、観客離れが進む。大臣がころころ変わって政治不信に陥るのと同じ。

後出しジャンケンはウケない

T1,T2を全否定、「実はこうだった」という後から改変(改悪)の後出しジャンケンという禁じ手を使ってしまったために、『ターミネーター:ニュー・フェイト』自体も「結局、後出しジャンケンで覆るんでしょ!?」ということで観客は興冷め、大コケに終わりました。

結局、グレースは何のために戦ったのか意味不明です。グレースのお腹のタトゥー(座標)の存在は、過去にも同じような事象があったことを意味しており、グレースは何度も無駄死に・・・のループにいることを告げています。グレース意味なし、でした。

グレースを送った過去があるのであれば、なぜグレースの体内に予備の動力源を入れておくなど改善を施さないのか?なぜ何度もグレースを死なせてしまうのか?ダニーのリーダーとしての学習性と素質にかなり疑問が残ります。

なぜ一体しか出てこないの?

前述の内容に関係しますが、「実はターミネーターが一人のターゲットにつき、何体も送られていた」というのが、この『ターミネーター:ニュー・フェイト』の味噌になっています。それならなぜRev-9一体しか登場しないのでしょうか?矛盾しています。

「一度に何体も送られてきたら映画がおもしろくなくなるから」という理由なら、T2において「一度に何体も送られてきていた」という設定にしたこの『ターミネーター:ニュー・フェイト』自体もつまらなくなってしまうことに、製作者は気づかなかったのでしょうか。

奇策に転じたはいいものの、その奇策が生み出す副作用を、製作者は予想できなかったようです。これでは酷評・大赤字に終わるのは無理もありません。

どうもこの『ターミネーター:ニュー・フェイト』は、観客(ファン)目線が欠落しているように感じてなりません。監督の人選失敗が致命傷でした。
→関連:作る前から失敗していた「ターミネーター・ニューフェイト」

なぜ1984年~1994年に送らないの?

上の「なぜ一体しか出てこないの?」に関連しますが、スカイネットがT-800カールを筆頭にそんなに何体もバックアップ・ターミネーターを送れるならば、なぜT1には一体しか現れないのでしょうか?もしくはなぜT1(1984年)以降、T2(1994年)までの間には一体も現れないのでしょうか?

さらに言えば、1984年よりも前に刺客を何体も送ったほうが、目的達成の成功率は上がるはずですが、なぜか出てきません。

1994年以降にしか出てこない、ということは、つまり製作者がただ単に「ジョン・コナーという存在を消すことだけが目的化している」証拠であり、「ニューフェイト」のストーリーに必然性や合理性がまるで感じられません。無理やり設定の度が過ぎます。
→ジョンコナーが描けない背景:ターミネーター映画大失敗の致命的な原因

グレースの無限銃(ウィンチェスター1300)

メキシコでの自動車工場でのシーン。グレースがダニーの父親に化けたRev-9に対してショットガン(Winchester 1300/ウィンチェスター1300)を連射します。
しかし、このウィンチェスター1300のロングマガジン(extended mag tube)の仕様だと、最大でも10発しか装填できないところ、グレースはリロード(再装填)無しで13発以上 連射しています。

リロード(弾の装填)無しで撃ち続けられる無限銃は、ハリウッド映画「あるある」の名物ではありますが、この『ターミネーター:ニュー・フェイト』でも漏れなく、実銃との矛盾が生じています。

サラ・コナー到着の矛盾1

グレースが現代(メキシコ)の道路にタイムトラベルで到着時、それを道路で引きかけたのが「サラコナーが運転する車だった」・・・という矛盾があります。

  1. T-800カールが、携帯電話網の磁場の乱れからタイムトラベルを探知して、「ジョンのために」というメッセージとともに座標をサラコナーにメールで知らせる。
  2. サラコナーはその送られてきたメール記載の座標の元へかけつけて到着物(ターミネーター)を退治する(これまでも何体もそうやって退治してきたと劇中述べている)

という流れであるにもかかわらず、タイムトラベル到着とサラコナー到着が同時、というありえない現象(矛盾)が生じています。まるで「どこでもドア」でサラコナーが車ごと瞬間移動してきたことになります。サラコナーはこの道路脇にでも住んでいたのでしょうか?

この『ターミネーター:ニュー・フェイト』、この描写といい、グレースのタトゥーといい、Rev-9の不要なおしゃべりといい、無駄な描写が多すぎます。ティム・ミラー監督の悪趣味炸裂といったところですが、前述の通り、監督の人選は作品の成否に大きく作用することを改めて明らかにした『ターミネーター:ニュー・フェイト』でした。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』がジェームズ・キャメロン作品(クオリティー)とかけ離れていた点で、観客のがっかり感は半端なく、爆死に終わったのも至極当然と言えます。

サラ・コナー到着の矛盾2

上の「サラ・コナー到着の矛盾1」と関連しますが、カールから座標が送られてきてターミネーターを倒すには、タイムトラベル到着とほぼ同時にその現場にサラコナーも到着しておかないといけません。にもかかわらず、Rev-9が到着した際、サラ・コナーは現場にいません。サラ・コナーは「これまで何体もターミネーターを倒した。」と言っていましたが、タイムトラベルと同時に現場に到着できないのに、一体、どうやって倒してきたのでしょうか?矛盾しています。

そしてサラ・コナーがRev-9と初対決した道路は、Rev-9のタイムトラベル到着現場からかなり離れています。ダニーらが勤めていた工場は、弁当持参で車で行かなければいけないほどの距離にあり、その近くの道路です。サラ・コナーが都合よくあの道路に登場する、というのはかなり無理があります。

越境の矛盾

これも前述の「サラ・コナー到着の矛盾」と関係しますが、劇中、メキシコとアメリカの国境を越えることがとても難しいとの描写があり、サラ・コナーの以下のようなセリフもあります。

You want to cross the Mexican border with an undocumented Mexican national and a woman who had her own episode of America's Most Wanted?
全米指名手配の女と一緒にメキシコ国籍の密入国者を越境させる気?

そして国境警備隊はさも「悪である」かのごとく何人も撃つという反トランプのポリコレ描写のあと、実際、サラ・コナーらは収監されます。

しかし、「サイバーダイン社が爆破される前」に何体ものバックアップ・ターミネーターを送られたということなので、それらはすべてT-1000らと同様に、当時サラ・コナーらがいたアメリカ・ロサンゼルスにタイムトラベルで到着するはずです。

そのロサンゼルスに到着した何体ものターミネーターを、メキシコか中南米にいるサラ・コナーが、T-800カールからメールを受け取って、その都度、瞬時にロサンゼルスまで越境して、倒していたのでしょうか?

また逆に、アメリカ側からメキシコへ越境するのは、そんなに簡単だったのでしょうか?

完全に矛盾しています。

サラ・コナーが変

前述「サラ・コナー到着の矛盾」にも関連しますが、この『ターミネーター:ニュー・フェイト』、とにかくサラ・コナーが「変」です。

ジェームズ・キャメロンが現場で演出していたら、明らかにこうはならなかったであろう、という残念な描写が多々あり、サラ・コナーはひたすら空回りし続けた結果、いてもいなくてもどうでもいい存在に陥落する、というなんともいたたまれない後悔の1作となってしまいました。具体的には、

  • ターミネーター相手に3発しか入らない小さなショットガンをチョイス
  • アゴしゃくれ過ぎの過剰演出
  • 無警戒すぎるサラ・コナー(入口に背を向けて、ボー)
  • 一体、どのターミネーターを倒したの?(本当に倒せたの?)
  • ジョンの顔を思い出せない?(ヒューマニズムの薄っぺらさ)
  • ターミネーターを倒せる武器を持っていないのに、何体も倒してきたことになっている

など奇妙な点が多々あります。
これについては、こちらサラ・コナーの疑問点(ターミネーター:ニュー・フェイト)にまとめてあります。

時間軸の矛盾(タイムパラドックス)

ターミネーター・ニューフェイトの矛盾
「ニューフェイト」の劇中、T-800カールは「スカイネットは消滅した」と言っているにもかかわらず、消滅したはずの時間軸から、何体もターミネーターがやってきてそれをサラ・コナーが倒した・・・という時間軸の矛盾(タイムパラドックス)が発生しています。これについては、こちらターミネーター:ニュー・フェイトの矛盾(タイムパラドックス編)に詳しくまとめてあります。

T-800カールの矛盾

製作準備段階では、シュワちゃんを出演させることに反対意見もあったにもかかわらず、シュワちゃんを無理に出したことでストーリーを捻じ曲げてしまい、それも『ターミネーター:ニュー・フェイト』の大失敗の原因の1つとなってしまいました。具体的には、シュワちゃん演じるT-800カールには以下のような矛盾が生じています。

  • スカイネットが送り出す際、T-800はROM(Read-only Memory リードオンリーメモリー)がデフォルト設定されており、勝手に書き込みや上書きはできない設定(T2参照)にもかかわらず、勝手に学習し人間を理解し基本設定を覆す、という矛盾。
  • 長年のカーテン屋(逃亡潜伏)生活は不可能という矛盾
  • 人間との同居生活にも数々の矛盾
  • 「ジョンのために」なっていない矛盾・・・本当に人間を理解しているとは到底、思えない勝手な理屈を展開
  • 老化設定も無理がある
    →関連記事:老化ターミネーター(お爺ちゃん)は失敗-続編消滅(ジェームズ・キャメロン談)
  • T-800カールが存在し続けることでスカイネットまたはそれに類する存在が発生する可能性があるという矛盾(「T-800なぜ生きてる」問題)
  • 毎回、シュワちゃん顔のT-800しか送られてこないという矛盾(もはやコントでしかない)

「正統な続編」を名乗るなら、T-800の設定も正統に引き継いでもらいたいものです。これについてはこちらT-800カールの矛盾【ターミネーター:ニュー・フェイト】にまとめてあります。

「ジェニシスこそが3だ」の矛盾

これも『ターミネーター:ニュー・フェイト』をかなりしらけさせる要因の1つですが、前作『ターミネーター・ジェニシス』公開時に、ジェームズ・キャメロンは宣伝に駆り出され、「ジェニシスこそがターミネーターの3作品目だ!ルネサンスだ!期待をはるかに超える大どんでん返し!」という仰々しい大宣伝が展開され、集客しました。
→詳細:「ジェニシスこそターミネーター3だ」ジェームズ・キャメロン語録

それほど昔ではない2015年に「ジェニシスこそがターミネーター3だ!」と言っておきながら、今度は『ニュー・フェイト』が「正統な続編」と言う完全なる矛盾が存在します。

ジェームズ・キャメロン自身がオオカミ少年化しており、「あのジェームズ・キャメロンが●●した!」という宣伝文句は、効果がないどころか、もう「胡散臭さの象徴」のようになってきています。

以上、「正統な続編」という割には、設定にも正統性がない『ターミネーター:ニュー・フェイト』の矛盾と疑問点のまとめでした。

すべてはサラ・コナーの夢だった?

T2はサラ・コナーのナレーションに始まり、サラ・コナーのナレーションで終わりました。

一方、ニューフェイト(Dark Fate)は、サラ・コナーのナレーションで始まったものの、エンディングにはナレーションがありません。南米グアテマラでボーっとジョン・コナーを眺めるうちにうたた寝してしまった冒頭からのサラ・コナーの悪夢がエンディングまで続いているのでしょうか。ニューフェイトのすべてがサラ・コナーの「ただの夢」だったのかもしれません。

# Terminator Dark Fate New Fate Genisys Fake Fate

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