AIが学べた核戦争の無意味さを人間は学べるか【ウォー・ゲーム】40周年

洋画

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ウォー・ゲーム

40年前の当時よりも、今 見たほうが、ネタがタイムリーでおもしろい映画もあります。それが『ウォー・ゲーム』(WarGames、1983年)です。

1983年公開ということは、2023年で40周年を迎える、ということになります。

この『ウォー・ゲーム』では、2023年2月にカナダ上空で未確認飛行物体である気球を撃墜させたことで話題になった、NORAD(ノーラッド・・・北アメリカ航空宇宙防衛司令部: North American Aerospace Defense Command)が登場します。


A.I.(人工知能)と核戦争を扱った映画です。

1983年の作品なので、映画『ターミネーター』(1984年)よりも1年も早く同テーマを扱っていた、ということになり、「ターミネーターの元ネタの1つは、この映画だったのではないか?」とも思えるような描写もたくさんあります。

特に、

  • 『ターミネーター2』の核戦争阻止要素
  • 『ターミネーター3』の軍で人工知能が起動していく様子

などがそっくりです。

そんな『ウォー・ゲーム』の気になった見所をまとめました。

日本にも核ミサイル飛来

映画『ウォー・ゲーム』のクライマックス、核戦争シミュレータ用の人工知能「WOPR」(War Operation Plan Response/ウォーパー・・・戦争作戦計画対応)が無数の核戦争のシュミレーションを行いますが、その中に日本もチラッと登場します。
ウォーゲームの中の日本

そのWOPRの核戦争シュミレーションでは、どうやら日本は東京と大阪に核ミサイルを撃ち込まれたらしく、そのミサイルは遥か遠方、ソ連(ロシア)の内陸部から中国を飛び越えて飛来してきたようです。

簡単なあらすじ

映画『ウォー・ゲーム』の簡単なあらすじは、

  1. ゲーセン好きな主人公・高校生のデビッド(マシュー・ブロデリック)が面白いゲームを探して、ある日、自宅から、あるゲーム会社らしきコンピューターにハッキングして侵入し、A.I.と核戦争ゲームを始めた。しかしそのA.I.は実はアメリカ軍のコンピューター(人工知能「WOPR」)だった。
  2. 遊びのコンピューターゲームのつもりだったが、リアルな世界では、米軍の防衛システムが、「ソ連が核攻撃に動き出した」と認識。
  3. リアルな世界で米軍が防衛レベルの段階を引き上げたことで、ソ連はそれを挑発と認識し、両国間の緊張が高まる。
  4. また、米軍はヒューマンエラーを防ぐために、すべての核発射システムを自動化してしまっていたため、核が着弾した(とコンピューターが認識した)ら自動的に報復の核ミサイルを発射するシステムになっており、手動ではアメリカからの核の報復発射は止められない。
  5. そこでデビッドは、WOPR開発者フォルケンの力を借りながら「ある方法」(下記参照)を使って、WOPRの処理能力を遅延させつつ、勝者がいないゲームがあることを人工知能WOPRに学習させ、核戦争ゲーム(シュミレーション)を終わらせることに成功した。

というものです。

〇×ゲーム(三目並べ)で勝者不在を学ばせる

人工知能と三目並べゲーム
上記5の「ある方法」というのが、三目並べ(〇×ゲーム)です。これを「対戦者ゼロ」に設定、つまりA.I.内で自動対戦させることで、ゲームは延々と続いていきます。

結果、WOPRの処理能力に負荷を掛け、コンピューター設備の一部が爆発します。

AIが学べた核戦争の無意味さ(を人間は学べるか)

三目並べ(〇×ゲーム)で「勝者がいないゲームがあること」を学んだWOPRは、次に、核戦争ゲームのあらゆる勝ち方をシュミレーションし始めます(そのシュミレーションの中に前述の日本も含まれていました)。

シュミレーションを終えた結果、WOPRは以下の結論に達し、画面に表示します。

A STRANGE GAME.
THE ONLY WINNING MOVE IS
NOT TO PLAY.

奇妙なゲームだった。
唯一の勝ち手は、プレイしないことだ。
(核戦争に勝つ唯一の方法は、核戦争をしないことだ。)

「核戦争に勝つ唯一の方法は、核戦争をしないことだ。」・・・「核戦争の無意味さを問う」・・・これが、この映画『ウォー・ゲーム』の主題でした。

今、まさにこの時期、核攻撃をちらつかせて戦争をしかけたり、ミサイルを連日発射し続けている、どこかの国々のトップにぜひ、観てほしい映画です。

その他にもこの映画は示唆に富んでおり、いかなる緊張下であっても、相手との最低限のコミュニケーション(ホットライン)を保ち、誤解(偶発的な衝突)を防ぐことの重要性、他国との疑心暗鬼に陥ることの危険性も問うています。

低予算だが良作

音楽も印象的

映画はそこそこヒットし、テーマ曲「History Lesson」や「Edge of the World」)などが印象的で、当時、あちこちでBGMとして使われていた記憶があります。

映画『バタリアン』(1985年)の音楽を何となく思い出せるようなテーマ曲は、この時代(1980年代)特有の、テクノ調でシュールな音調にあふれています。

現実世界にも影響

また、

試写会に招待されたレーガン大統領は観賞後、ただの高校生がペンタゴンのコンピューターにあっさり侵入できたことにショックを受けた。すぐにこの映画の実際に可能性のある現実に基づいているのかどうかを調査するように当局に指示した。結果は映画以上に深刻であることが判明し、「電気通信・自動化情報システムのセキュリティ」と呼ばれる一連の研究が行われることとなった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウォー・ゲーム_(映画)

とのことで、アメリカの防衛システムにも影響を与えたようです。

ロケ地でも分かる低予算ぶり

この映画『ウォー・ゲーム』は、基本シアトルが舞台ということになっているのですが、ロケ地の多くは映画スタジオ・ハリウッドがあるロサンゼルス近郊で撮影されており、できる限り低予算で作ろうとしていたことがうかがえます。
  • デビッドの自宅
    • 333 South Arden Blvd, Los Angeles, CA U.S.A.
  • デビッドが通う高校
    • El Segundo High School
    • 640 Main Street, El Segundo, CA U.S.A.
  • デビッドが拉致(逮捕)されたセブンイレブン
    • 7-Eleven, 41440 Big Bear Blvd, Big Bear Lake, CA U.S.A.
  • NORADの基地のトンネル
    • Mt. Hollywood Tunnel in Griffith Park(グリフィスパーク・トンネル)
    • Mt Hollywood Dr, Los Angeles, CA 90027 U.S.A.
    ※実は『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で登場したトンネルと同じロケ地です。
バックトゥザフューチャーとウォーゲームが同じ
どちらの作品も、トンネル内の道路を水で濡らして、光の反射を綺麗に見せる(明るく見せる)演出がなされているのが、いかにもハリウッドという感じがします。

スペースニードルが収まったシアトル全景の映像が途中で挿入され、「シアトルが舞台である」感を出していますが、実際の『ウォー・ゲーム』のロケ地は上記のように、カリフォルニア州内、ロサンゼルス近郊で撮られているシーンが多いです。

これは映画『コマンドー』(1985年)が、南米の国含めてすべてがロサンゼルス近郊で撮影され、低予算で作られたことに通じるものがあります。
→参照:映像使いまわしでコスパ最強映画「コマンドー」

この時代の映画は、『ターミネーター1』然り、低予算だが良作、「小さく作って大きく当てる」面白い映画が盛りだくさんあります。背景にあるのは、映像技術(SFX)を駆使しつつも過信し過ぎず、脚本とアイデア、そしてハートで勝負しようとする製作者の姿勢にあるように感じられます。

CG(VFX)に頼り過ぎて、中身がスッカラカンどころか、むしろ『ひどい』現在の映画に学んでほしいところが多々あります。
→関連記事:高品質なCG(VFX)で大失敗した映画2例

荻昌弘さんの評価

ちなみに映画評論家(映画解説者)の荻 昌弘さんは『月曜ロードショー』のこの『ウォー・ゲーム』の前説にて、

  • 1980年代のアメリカ映画の1つの代表作といってもいい
  • コンピューターというものをこんなにも生き生きと、しかも目で見ても楽しい活劇の道具にしてしまった
  • 主演の2人の初々しい青春映画にもなっており、異様な現代的な活劇を堅苦しいサスペンスにはしてしまわなかった

と語っています。

スカイネットとウォーパー(WOPR)との違い

ターミネーター・シリーズのスカイネットと『ウォー・ゲーム』のウォーパー(WOPR)は人工知能ですが、比較すると以下のようになります。

共通点

  • 軍のコンピューター(A.I. 人工知能)
  • 核ミサイル発射システムと連動している
  • 人命の価値(重さ・尊さ)は理解していない

違い

ウォーパー(WOPR)

数あるゲームの中の1つである「核戦争のシュミレーション」として稼働している。あくまで基準はゲームでの「勝ち負け」。人間に対して特に特別な意図を持っているわけではない。「勝ち負け」がつかないゲームは面白くない(無意味)と評価している。

スカイネット

自我に目覚め、行動基準は自分の「生存」。自分に死(シャットダウン)をもたらす可能性がある人類は敵であると算出するに至り、シャットダウンを避けるために人類に宣戦布告、核戦争を仕掛ける(自分の「生存」のために人類の「滅亡」が目的)。
この辺りは、ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズで深く描かれています。
→詳細:ジョン・ヘンリーとは(A.I.とシンギュラリティ2.0)

2022年にブルーレイが発売

そんな見応えがある『ウォー・ゲーム』ですが、40周年を記念してか、はたまたネタがタイムリーなせいか、4Kブルーレイが発売されるそうです。

傑作サスペンスが4K化『ウォー・ゲーム』【海外盤Blu-ray発売情報】
WARGAMES - 4K UHD BLU-RAY with DOLBY VISION/4K DIGITAL RESTORATION
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17574924

頭の中の記憶では、荒い画素数の古ぼけた映像のイメージしかないのですが、それが4Kブルーレイでどう変わって現代に蘇るのか、気になるところです。

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