映画「ターミネーター3」(T3)は、ジョン・コナーの年齢設定が3歳ズレている(間違っている)ことで有名ですが、なぜ「ターミネーター3」で年齢の間違いが生じたのか、解説します。
ちなみに「ターミネーター3」では、サラ・コナーの年齢も6年、間違っています。
ジョン・コナーの年齢の拠り所(T1,T2)
まず、ジョン・コナーの年齢の拠り所ですが、これは映画「ターミネーター1」(T1)と「ターミネーター2」(T2)を観れば分かります。T2におけるジョン・コナーの生年月日は 1985年2月28日です。その理由は以下の2つです。
1.警察(パトカー)の記録
T2の液体金属T-1000が到着後にパトカーに乗り込んだ際、ジョン・コナーについて警察の記録を検索するシーンがありますが、そこのジョン・コナーの生年月日等が表示されています。LAST NAME: CONNORT2の舞台は1994年なので、ジョンコナーは1994年に10歳(数え年)ということになります。
FIRST NAME: JOHN
SEX: MALE
RACE: CAUCASIAN
AGE: 10
DOB: 2/28/85
2.ターミネーター1の史実とも合致
ちなみに、「ターミネーター1」(T1)の舞台は1984年5月12日1:52amに始まり、その際に、カイル・リースと出会ったサラ・コナーが身ごもり、およそ「十月十日(とつきとおか)」(=昔の「数え」で9ヶ月と10日=約262日)を経てジョン・コナーを出産することを考えると、1985年がジョン・コナーの生誕年になりますので、上述のパトカーの記録とも矛盾はありません。以上から、ジョン・コナーは1985年生まれ、となります。
ターミネーター3におけるジョン・コナーの年齢
一方、T3におけるジョン・コナーの年齢間違いが発覚したのは、映画の冒頭、ジョン・コナーが自己紹介がてら、バイクに乗りながら過去を回想するシーンの中での以下の「語り」部分です。When I was 13, they tried again. Machines from the future.この"they tried again."(再び抹殺にやってきた。)というのはT2の事象のことを述べているのですが、前述のように、T2の舞台は1994年で、その時ジョンコナーは10歳です。
(ボクが13才の時、彼らは再び抹殺にやってきた。未来からマシーンたちだ。)
なので、このT3でのセリフは、本来、When I was 10(ボクが10歳の時に) と言わなければならないのですが、「13歳の時に」と言ってしまっています。
(誤)When I was 13
↓
(正)When I was 10
それではなぜ、T3はこのような年齢ミスを犯してしまったのでしょうか。
T3がジョン・コナーの年齢をミスった原因
なぜ映画T3がジョンコナー年齢をミスったかというと、結論から先に書くと、T3製作者が、T2の舞台を1994年ではなく1997年と勘違いしたからです。1997年に"they tried again."(再び抹殺にやってきた。)=T2の出来事 が起きたと勘違いしたので、
1997(T2の出来事※ミス)-1984(T1の出来事)=13
または
1997(T2の出来事※ミス)-1985(ジョンの生誕年)=12(数え年で13)
という計算で、T3ではジョン・コナーの年齢が3歳ズレる、というミスが生じてしまいました。
T3のジョン・コナーのセリフから、"they tried again."(再び抹殺にやってきた。)という史実がベースになっていることは明らかであり、史実をベースにしなければ、年齢ミスを犯すことはおそらくなかったと思われます。
T2の引っかけ問題
ただ、T3が間違うのも理解できなくもありません。なぜなら、T2はその舞台設定について、ややこしい引っかけ問題のようになっているためです。T2の引っかけ問題1
まず、T2の冒頭では、Three billion human lives ended on August 29,1997.というサラ・コナーによるナレーションが入ります。
「1997年8月29日=審判の日に30億人が核爆弾で命を落とした。」
これによって、「1997年」という数字が脳裏に刻まれます。このT2という映画が1997年が舞台である、とここで誤認してしまう人もいるでしょう。
T2の引っかけ問題2
さらにT2では映画の中盤に、以下のようなT-800シュワちゃんによる説明が入ります。In three years Cyberdyne will become the largest supplier of military computer systems・・・The system goes on-line on August 4, 1997・・・It becomes self-aware at 2:14 a.m. Eastern time, August 29.ここでもまた1997年8月29日という数字が印象付けられてしまいますが、よく聞くと"In three years"(今から3年以内に)と前置きしています。
「今から3年以内にサイバーダインは最大の軍事コンピューターシステムのサプライヤーになる。そしてシステムは1997年8月4日に稼動し、8月29日2:14amに自我に目覚める。」
今から3年以内で1997年になるということは、
1997-3=1994
1997>1996>1995>1994・・・1994年=T2の舞台
ということになるのですが、1997年というイメージがあまりに強いために、引き算をせず、「1997年がT2の舞台」とT3製作者は勘違いしてしまったのでしょう。
T3という映画自体が、T3における審判の日の直前を舞台にしているため、T3の製作者らは、勝手に「ターミネーターというのは審判の日の直前を描くものだ!」「T2も審判の日の直前が舞台だ」という思考回路に陥ってしまったのではないでしょうか。
サラ・コナーの年齢間違い(T3)
ちなみに、T3はサラ・コナーの年齢も間違っています。T3では、サラ・コナーの墓石(棺桶)には、
SARAH CONNOR
1959-1997
NO FATE BUT WHAT WE MAKE
と刻まれていましたが、サラ・コナーが生まれた年は1965年です。
その根拠は、
- T2のalternate endingにて、2029年に64歳とサラ・コナーが言っている
- 1984年が舞台のT1では、サラコナーは19-20歳の大学生という設定である
からです。
T1では サラコナーの Southern University の Student ID card(学生証)も登場し、1984年当時のサラ・コナーは、19-20歳で、友達とルームシェアをしながら大学に通う大学生、アルバイトはウェイトレス、愛車はホンダのスクーター(1984 Honda Elite Scooter)という設定で描写されていました。
T3では、サラ・コナーの設定年齢が6年ズレていることになります。
Wikipediaの間違い
ちなみに昔、Wikipedia(日本版)https://ja.wikipedia.org/wiki/ターミネーター3には以下のような記載がありました。前作(『ターミネーター2』)おいてジョンの年齢は10歳という設定であったが、それから10年後の世界が舞台であるはずの今作では23歳 (本来なら20歳) になっており、ジョンの回想でも前作時には13歳であったと話されている。これは前作でジョンを演じたエドワード・ファーロングの当時の年齢と混同したものと考えられるが、この基本的な設定ミスは、当時続編製作に断固反対だった生みの親のキャメロン監督の怒りを増幅させたとされる。
この「エドワード・ファーロングの当時の年齢と混同したものと考えられる」というのも間違いです。
T3の設定は役者の実年齢ベースではない理由
そもそも、いちいち演じた各俳優の年齢ベースでキャラクターのドラマ設定をしていたら大変なことになります。実際、T3でジョン・コナーを演じたNick Stahl(ニック・スタール)の実年齢と、T3のジョン・コナーの年齢も同じではありません。
もしT3が役者の実年齢ベースでキャラクターの年齢設定をしていたというのなら、サラコナーの年齢も、演じたリンダ・ハミルトンの実年齢「1956年生」になるはずですが、T3のサラコナーは前述のように「1959年生」となってしまっています。
つまり、T3における年齢ミスは、役者の実年齢ベースによって生じたものではない、ということは明らかです。
以上からも、T3のジョン・コナーの年齢が3年ずれた理由は、T2の舞台1994年を、1997年と3年ズレて勘違いしたことによるものだということが分かります。
尚、wikipediaは2010年11月7日現在までに、上記該当箇所を削除しましたが、wikipediaの記事のコピペで形成されている、terminator.fandom.com/ja/wiki/ターミネーター3には今もその記述が残っています。
T3の映画宣伝のキャッチコピーは「恐れるな。未来は変えられる。」でしたが、実際のT3は真逆の内容で、「審判の日」は避けられないという未来確定説(未来は変えられない)が展開されており、「抗うな。未来は変えられない。」の趣旨の下、T3が変えたのは未来ではなくキャラクターの年齢とターミネーターという映画の評判だった・・・「恐れるな。年齢と評判は変えられる。」というオチに終わった作品でした。