Rev-9はなぜ弱いのか【ターミネーター:ニュー・フェイト】

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Rev-9とは

映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』(原題 Terminator: Dark Fate)を検索してみると、ターミネーター:ニュー フェイトとともに、「爆死」や「ひどい」、「疑問」「矛盾」といったマイナス・キーワードが列挙されます。これはたくさんの人が、この映画のタイトルと併せて、そうしたキーワードで検索している人が多い、ということを意味しています。
ターミネーターニューフェイトの評判
つまり、多くの人が、『ターミネーター:ニュー・フェイト』の内容がひどいと感じ、疑問や矛盾を感じていることの現れであり、『ターミネーター:ニュー・フェイト』が興行収入でもターミネーター史上最大規模の失敗(大赤字)に終わったのが、検索結果からもうかがえる結果となっています。
→関連記事:老化ターミネーター(お爺ちゃん)は失敗-続編消滅(ジェームズ・キャメロン談)

これだけ大コケするには、敗因は単純に1つだけでなく、複数あるのが常ですが、その敗因の1つと言えるのが、敵方(悪役)のターミネーター、Rev-9の物足りなさと言えます。

Rev-9とは(意味・由来)

『ターミネーター:ニュー・フェイト』には、未来からやってきたターミネーター・Rev-9が登場しますが、そもそも「Rev-9とは何か?」から振り返ってみると、Rev-9とは以下の2つの意味をかけて命名されたようです。
  • Revision 9
  • Revelation 9

Revision 9

1つは、Rev-9のRevとはRevisionの略という点。Revisionは「リビジョン」として、昨今では日本語でもそれなりに浸透している単語で、「修正」や「改訂」「見直し」と解されています。例えばホームページを更新した際に、編集画面のリビジョンという項目にて過去の更新履歴がずらっと表示されたりします。

ただ、このRevision(リビジョン)は、基本的には、何かオリジナルなVersion(バージョン)が元々存在しており、それの修正版という意味でRevision(略すとRev.)を使用する、というのが前提となる単語です。

つまり、Revisionの前に「Versionという何か」が存在していたことになります。

元はスカイネット?

ターミネーターで「Version」を紐解いてみると、ターミネーター・T-800にVersionが使用されていました。T-800の正式名称は、Cyberdyne Systems Model 101 Series 800 Version 2.4 です。

また、Rev-9がT-800カールに以下のようなセリフを話しかけます。
You and I were built for the same purpose. Legion’s the only future.
(お前と俺は同じ目的で作られた。リージョンが唯一の未来だ。)

このことから、Rev-9はT-800が何たるかを識別できているわけであり、サイバーダイン社開発でスカイネットに発展したT-800などのターミネーターが元になって、Rev-9が作られた・・・という推測が成り立ちます。Rev-9のエンドスケルトンの外観がT-800に酷似していることも、この推測に矛盾しません。

元凶はカール(T-800)?

『ターミネーター:ニュー・フェイト』では、カール(T-800)の居場所を示す座標がグレースのお腹に刺青されていました。これは、以前にもカール(T-800)が絡む同じような事象が起きていた(同じようなタイムラインが少なくとも1度は発生していた)、ということを意味しています。

そのことから、カール(T-800)がミッション達成後、現在に残り続けてしまったことが、Rev-9などスカイネットに代わる「リージョン」が発生する元凶になってしまったのではないか?とも推察できます。

Revelation 9

Rev-9に掛けているもう一つの意味は、Revelation 9 です。Revelation 9 のRevelation(レベレーションは「啓示/神のお告げ」のことで、9とは新約聖書「ヨハネの黙示録」第9章のことです。この第9章ではDestroyer(デストロイヤー/破壊する者)として怪物キメラが登場します。

この怪物キメラが、胴体が馬っぽく、頭がライオン、尻尾が蛇・・・ということで、「ターミネーター:ニュー・フェイト」の未来の戦闘シーンで出てきた、背中に蛇のような触手が複数付いて、四つ足歩行で襲ってくる敵方のマシーン(Rev-7?)に似ています。

元々ターミネーターは「審判の日」「救世主」「終末思想」など、聖書(旧約聖書~新約聖書)ネタをベースに作られており、特に「新約聖書」では「福音」にて「救世主」(ジョン・コナー)が登場したりしますので、この「ターミネーター:ニュー・フェイト」の未来のシーン及びRev-9は、新約聖書「ヨハネの黙示録」第9章をモチーフに作られていることは間違いないでしょう。

Legionは「リージョン」ではなく「レギオン」

「ターミネーター:ニュー・フェイト」ではスカイネットではなく、「リージョン(Legion)」という組織名が登場します。(スカイネットという名前が使えなくなった理由は、こちらターミネーター映画大失敗の致命的な原因にまとめてあります。)

Legion というのは、発音は「リージョン」に聞こえますが、ラテン語式の発音では「レギオン」となり、日本だとむしろこれまで「レギオン」として使われてきたケースのほうが多いようです。

その「Legion(レギオン)」とは、新約聖書「マルコによる福音書」5章に登場する「悪霊」(単体ではなく複数、集団)のことで、この点からも、Rev-9も新約聖書ベースで「Revelation 9」の意味が掛けられていることが分かります。

尚、「ターミネーター:ニュー・フェイト」の脚本担当の一人は、この創世記とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズで解説したサラ・コナー・クロニクルズの脚本&製作(ディレクター)だった、ジョシュ・フリードマンですので、新約聖書ベースであるのは確実と言えます。

Rev-9に強さがなく弱い理由

そんなRev-9ですが、確かに俊敏に動き、それなりのスペックはあるようには見えますが、なぜかパッとしません(ゴキブリっぽく見える時さえある)。

結局のところ、ターミネーターはフィクションですので、こうしたキャラクターは、作り手のサジ加減1つで、強くも弱くもなるので、「アレとコレはどっちが強いか?」(例えばT-XとT-1000が戦ったらどっちが強い?)といった「強さの比較」を真面目に議論しても意味がないのは確かです。

毎回、なぜかT-800シュワちゃんがいつもおいしいところを持っていくという、「T-800が最強」がデフォルトになっているのも、マンネリというか、作り手のサジ加減1つであることの証左であり、Rev-9が弱いのも、結局、演出次第だったことがわかります。

では具体的になぜRev-9が弱く(インパクトが弱い/実際に弱い)、観客への訴求力が無かったか、と列挙していきます。

1.粘りがない

Rev-9がガッカリだった理由の1つに、いまいち粘りがない(あっさりしてる)というのが挙げられます。例えば、国境の収容所からヘリコプターでサラコナーらが飛び立つ際、Rev-9はヘリコプターに飛び掛かるものの、あっさりサラコナーに退けられてしまいます。
ここは「ターミネーター2」のT-1000のように、このもう一粘り↑が欲しいところでした。手をびよ~んと伸ばしてなりふり構わず食らいつく・・・というこの一伸び、一粘りがあるかないか?で観客に与えるRev-9の恐怖感がかなり変わってくるのですが、ジェームズ・キャメロンではなく、経験が浅いティムミラーが監督だった・・・という差が出てしまった部分です。

最後のダムの水力発電所のシーンでもあっさりRev-9の外皮(液体部分)は消滅してしまいます。しつこさがまるで感じられません。あの外皮(液体部分)は一体、どこへ行ってしまったのでしょうか?あの程度の衝撃で消滅するほどRev-9は軟弱だった、ということです。

2.頭が悪い?

どうもRev-9は直線的な動きばかりで、戦略的に頭があまり良くないようです。

ダムの水中シーンでは、せっかく2対1でT-800を挟みうちしているのに、完全に倒さず、なぜか腕だけチョロっとちぎってその場から離れています。ここでT-800を完全に仕留めておけば、その後のあらゆる展開が楽になり、目的を達成していたことでしょう。

また、同じくダムの水中シーンで、車内のサラ・コナーとダニーを襲いに行ってしまうという痛恨のミスを犯します。あそこは車外でずっと監視するだけで溺死する、または車外に出て来ざるをえないのに、戦略的計算機能があまりよろしくないようです。

頭脳面までふまえると、Rev-9より液体金属T-1001(キャサリン・ウィーバー)のほうが圧倒的に強い(スペックが高い)と言えます。

3.しらけるセリフが多い

Rev-9が弱く見えてしまう理由の1つに、口数が多い(しらけるセリフが多い)というのがあります。全般的におしゃべりですが、特に、
My whole body is a weapon.(全身が武器だ。)
Give me the girl.
I know she’s a stranger to you. Why not just let me have her?
(その娘を寄こせ。お前には関係ないだろ。なぜ彼女を寄こさない?)

といったセリフはかなり興ざめで不要でした。今まで散々バトルしておいて、この期に及んで「その娘を寄こせ」の交渉はまったく意図不明です。

これはアメコミに影響を受けて育った人が監督すると必ず出てくる悪い癖なのですが、悪役に「ふっふっふっ、実はオレ様は●●なのだ!」的な しらけるセリフを吐かせてしまいがちなのです。若手監督はこれが「かっこいい」と勘違いしているのですが、観客からすると悪役が自分のすごさを自己申告すると、ズッコケて見えてしまうのです

同じく経験が浅い新米監督が撮った前作「ターミネーター・ジェニシス」もこれと同じ過ちを犯しており、
T-3000:I'm not a man, not a machine... I'm more!
(オレは人間ではない、マシーンでもない、それ以上だ!!)

と大声で自己申告してしまいます。

強いか・凄いかは、映像があるので観客には一目瞭然です。にもかかわらず、自分で自己申告しないと、強さ・凄さが伝わらないとなると、その映像表現は失敗だった、ということになります。

T1のT-800、T2のT-1000は、必要最小限のセリフのみで、寡黙でした。沈黙の恐怖というのがRev-9には欠けていました。

4.美しさがない→Rev-9の元ネタは中華「ヴェノム」

T2のT-1000に比べると、Rev-9はタールかヘドロっぽく、いまいち美しくない、というのもRev-9の地味さに拍車をかけてしまっています。

T2のT-1000については、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」のシーズン1第7話で、シルバーマン博士が、
The second one was almost beautiful, like perfect, like a changeling. The face of mercury.
「2人目の男は美しかった。完璧といっていい。神の申し子のように神々しい顔をしていた。」

と表現されるほどでした。

しかし、Rev-9については、特に目を惹く美しさはないどころか、他の映画での既視感ありまくりでした。

ヴェノム(Venom)

その「他の映画」とは、「ニューフェイト」の前年に公開された映画『ヴェノム』(Venom)です。Rev-9の黒くネバネバした動きや、T字形の手刀、触手などがヴェノムにそっくりでした。
ヴェノムとターミネーター
前述の未来のシーンに出てくるRev-7?も含め『ヴェノム』そっくりで、ニューフェイトは『ヴェノム』だらけ。Rev-9は、T-800の鉄骨にヴェノムを被せただけと言えます。

なぜこんなにそっくりなのかと調べたところ、「ニューフェイト」も「ヴェノム」も、制作会社として中国のテンセント・ピクチャーズ(腾讯影业)が関わっています。「ニューフェイト」製作のスカイダンス社の株主が「腾讯影业」です。「ヴェノム」のねばねばなVFX技術がそのままRev-9に転用されたものと見られます。
映画『ヴェノム』の勢いが止まらない!・・・全世界興収は約760億円!
世界で最後の公開国となる中国が11月9日(金)にオープニングを迎え、3日間で1億1100万ドルと記録的大ヒットのスタートを切りました。これまで中国で公開されたすべてのソニー・ピクチャーズ作品の記録を塗り替え、“スーパーヒーロー映画”作品史上2位、海外映画作品史上で5位の成績となり、『ブラックパンサー』をはじめとする多くの作品の数字を打ち破りました。中国の大ヒットスタートにより、週末の世界興収ランキングは3度目の1位を飾り、全世界興行収入は驚異の6億7350万ドル(約767億円/1ドル=113.9円 11/12現在)を突破! https://qetic.jp/film/venom-181113/302299/

とのことで、とにかく『ヴェノム』の中国でのヒットにあやかりたいということで、「柳の下のどじょう」をねらって、ひたすら中国人様、中国共産党様にお気に召していただけるように作られたのがRev-9であり、「ニューフェイト」だったということです。

それにしても、中国の方々は、こういう黒いネバネバがご趣味なのか、この安っぽい怪物発想がまさに中華的と言えますが、世間的にはあまりウケはよくなかったようです。
そして中国媚びの度が過ぎてしまったのか、結果的には「ハシゴを外される」ような形で、「ターミネーター・ニューフェイト」は中国でもコケてしまったのは皮肉なものです。

5.特徴(分離のメリット)をいかしていない

二体に分離して行動できる(戦える)というのが、Rev-9の唯一とも言える特徴のはずですが、なぜか肝心な時には一体にもどって一緒にやられる・・・という、自分のメリットを全否定する戦い方ばかりしているのも、かなり滑稽でした。

この辺りにも戦略的計算機能の精度の悪さがうかがえます。

既視感

結局のところ、Rev-9は、機能上、T2のT-1000やT3のT-Xとあまり代わり映えがしない、という新鮮味の欠如も、Rev-9のインパクトの弱さの原因になっていました。
ターミネーターの手刀
やっていることも、いつかどこかで見たようなことばかりです。ちなみにこのRev-9や「ジェニシス」T-1000の二刀流(二刀腕)は、「サラ・コナー・クロニクルズ」のT-1001キャサリン・ウィーバーが元祖です。

5.ガブリエル・ルナがいい人すぎる

Rev-9のデフォルトの姿が、なぜかチェックのコットンシャツという、カジュアル過ぎる出で立ちも失敗の要因の1つと言えます。

服装もさることながら、お顔もとてもいい人そうで、実際、Rev-9を演じたGabriel Luna(ガブリエル・ルナ)はとてもナイスな人で、新宿・歌舞伎町で開かれた日本でのプレミアでは、レッドカーペットに降り立った後、降り立った場所よりも遡って両サイドのファンに、右へ左へとフットワーク軽くサインや記念撮影に応じていました。

ニューフェイトの出演者の中では、一番ファンサービスが良く、演者のとてもナイスな内面が、そのままRev-9に出てしまっていたのも、Rev-9に恐怖を感じなかった一因と言えます。

T2では警官の姿だけど悪役というギャップ、そして終始言葉少なく無表情に徹していたT-1000を演じたロバート・パトリックの存在がすごかったことを「ニューフェイト」で改めて思い知らされました。

6.ニューフェイトは超ポリコレ女性至上主義なので男役は軽視

「ニューフェイト」は作った時期が最悪の時期で、製作者や主要出演者に民主党支持者が集結。アンチ・トランプの火病を発症して、度が過ぎたポリコレ要素がてんこ盛りとなってしまいました。

そのため、ニューフェイトにおいてはポリコレ優先・女性至上主義、男性はどうでもいい存在で、Rev-9などの男役キャラクター構成は「おざなり」(手抜き)になっています。

さらに、先述のように中国市場第一主義(中国検閲忖度の中国媚び)が、内容を捻じ曲げてしまっており、大コケ・爆死で終わったのは当然の結果と言えます。
Rev-9強さ議論

検索結果を見てみると「Rev-9 弱い」で検索している人が多いことがわかります。Rev-9の「強さ」に疑問を持っている人と、前作「ターミネーター・ジェニシス」に登場したT-3000と「デザインが似ている」とのことで、比較している人も多いようです。

なぜT-3000とRev-9のエンドスケルトンのデザインが似ているか?
というと、同じ制作会社(スカイダンス)だからです。ストーリーはつながっていませんが、「ジェニシス」と「ニューフェイト」は同じ権利者・同じ制作会社下で作られた姉妹作品ですが、どちらも敵方ターミネーターがいまいち弱く、不評だった、という共通点があります。

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