シュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)といえば、1980年代に、以下の3作品・・・
- 『コマンドー』(Commando,1985)
- 『ゴリラ』 (Raw Deal,1986)
- 『プレデター』(Predator,1987)
SEIKO SNJ025 は シュワちゃんが愛用していた SEIKO H558-5009 の後継(現代)版。デザイン(外見)はほぼそのままに、ソーラー駆動や第2タイムゾーンを設定できるなどバージョンアップしています。
そんなシュワちゃんの腕時計(SEIKO H558-5009)ですが、映画『コマンドー』の劇中、突然、変な腕時計に変わってしまっている・・・という怪奇現象が発生しています。
『コマンドー』の途中、変な腕時計に変身
その変な腕時計がこちら↓この時計、外周に文字盤があるのに、時針も分針もないのです。
謎のインダイヤルが2つ付いていますが、ずっと動いていないので、これは機能していない(使っていない)可能性が高く、見た目もダミー感が否めません。
1.映画序盤は正常な「SEIKO H558-5009」
主人公メイトリックス(アーノルド・シュワルツェネッガー)の腕時計は、映画冒頭の娘ジェニーとの朝食シーンなどでは、普通の「SEIKO プロスペックス H558-5009」でした。腕時計の時針と分針が画面からはっきり確認できます。
2.中盤、カウントダウンする時だけ登場
しかし飛行機の車輪から飛び降りた後、突然、ドアップでこの変な時計が登場します。娘救出までの残り時間(11時間)をセットし、カウントダウンを始めるシーンです。その後もショッピングモールの中や、水上飛行機で孤島へ向かう機内など、残り時間をチェックするたびに、この変な時計が登場します。
3.映画終盤は正常な「SEIKO H558-5009」にもどる
しかし、島に上陸後、バズーカ砲を撃つシーン以降から・・・つまり、もうカウントダウンをする必要がなくなってからは、正常な「SEIKO プロスペックス H558-5009」の状態に戻ります。ちなみにクライマックスのベネットとのナイフでの切り合いや、エンディングのビーチのシーンも、正常な「SEIKO プロスペックス H558-5009」の外見です。
つまり、この突然変異な腕時計は、救出の残り時間をカウントダウン表示するためだけに特別に登場していたことになります。
この変な時計はいったい、何なのでしょうか。
2つの日本のメーカーのハイブリッド腕時計
結論から書くと、この謎の時計は、- 外側・・・「SEIKO プロスペックス H558-5009」
- 中身・・・「CASIOの240モデュール(DW-5200C-1、1984年製)」を入れ、それをデジタル部分のみが見えるようにくり抜いた黒のカバーで覆ったもの。2つのインダイヤル(白と黒の丸いメーター)はダミーで機能しない。
という日本製の2つのブランド、SEIKOとCASIOのハイブリッド特別仕様(映画コマンドーのオリジナルなプロップ)です。
シュワちゃんがカウントダウンする腕時計と、カシオの240モジュールの表示形式が完全に一致します。
カシオの240モジュールは、G-SHOCKなどいろいろなカシオの腕時計に組み込まれていますが、『コマンドー』は1985年の映画なので、おそらく
- 「SEIKO プロスペックス H558-5009」の中身(基盤)を取り外して、
- 「CASIO G-SHOCK DW-5200C-1(1984年製)」の中の基盤(240 Module)を繰り抜いて、「SEIKO H558-5009」の中に無理やり組み込んで、
- CASIOの基盤とSEIKOの外装ガラス版の間に、CASIOのデジタル部分だけ見えるように繰り抜いた、「ダミーのインダイヤル2つ付きの薄い黒のプラ板のようなもの」を挟み込み、
『コマンドー』オリジナルの腕時計を作り上げたのでしょう。
よく見ると、黒い板を繰り抜いたであろう箇所に、手作り感が見られます。
「CASIO DW-5200C-1」の「240 module」ですが、外から見ると四角のように思えますが、中の基盤は丸いので、丸い形状のSEIKO H558-5009にも無理やり組み込もうと思えば不可能ではありません。但し、ボタン操作などにはそのまま使うには無理があるので、微調整が必要だったはずです。
デジタル表示の上にある2つのインダイアル(文字盤/メーター)はダミーです。劇中、まったくそこは稼働していません。
2つの時計を組み合わせた製作者の意図としては、娘ジェニー救出までの残り11時間のカウントダウンを、観客にわかりやすく示したかった(緊迫感を盛り上げたかった)のでしょう。
「SEIKO プロスペックス H558-5009」のほうにもデジタル部分はありますが、表示が小さいのと、ストップウォッチ機能はありますが、カウントダウン機能はありません。
しかし、まったく違う時計を持ってくると、冒頭部分に装着していた「SEIKO プロスペックス H558-5009」と大きなズレが生じてしまうので、苦肉の策で、「SEIKO プロスペックス H558-5009」の外側はそのままに、中身だけCASIOにしたのでしょう。
撮影が始まってから(序盤を撮り終えてから)、緊迫感を高めるために「腕時計でカウントダウンする描写を挿入したほうがいいのでは?」という案が浮かび、急きょ腕時計のドアップシーンが採り入れられたのかもしれません。
単純明快な映画『コマンドー』の象徴
映画『コマンドー』には、こちら 映像使いまわしでコスパ最強映画「コマンドー」でも述べたように、今では考えられない、とんでもない「なりふり構わずの撮影術」が使われています。この小道具にすぎない腕時計1つにも、「観客に伝えるためには手段を選ばない」「とにかくシンプルにわかりやすく」「とにかく勢い(ノリ)だ!」という製作者の努力(なんでもあり感)が感じられます。
筋肉脳映画の『コマンドー』が多くの人にウケている理由の1つに、「単純明快」という点が挙げられます。
この日本製腕時計2種のハイブリッド具合は、そんな『コマンドー』の面白さの象徴と言えるのではないでしょうか。
なぜ特に日本で映画『コマンドー』が人気があるのか?海外の人々が不思議がっています。その原因の1つが、「日本語訳」(吹替)の妙で名セリフがバズッたことが挙げられます。これが日本でのコマンドー人気の20~30%程度を占めているといっても過言ではありません。絶妙な「日本語訳」でマンガ的に楽しめるようになっている映画なのです。「日本語訳」(吹替)が大成功した数少ない事例の1つと言えるでしょう。声優 屋良有作 版と 玄田哲章 版の吹替をダブル収録したコマンドー<日本語吹替完全版>コレクターズBOXにて、その「日本語訳」(吹替)の妙とマンガなリズムを堪能することができます。
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