すべてカリフォルニア州内で撮影
「コマンドー」の中の名セリフの1つに、「何がはじまるんです?」「第三次世界大戦だ。」というのがありますが、「第三次世界大戦だ。」と言うわりには、実はすべてカリフォルニア州内の近場で撮影を完了しているという小規模運営のコスパの良さ。おそらく今どきのTVドラマよりも、よほど低予算で作られたのではないかと思われます。飛行時間が11時間もかかるという「バル・ベルデ共和国」という中南米の架空の国("『プレデター』では、グアテマラと隣接していることをうかがわせる描写がある"by wikipedia)も、すべてカリフォルニア州内で撮影されています。
ラスボス・アリアス元大統領とベネットの邸宅がある「離島」も、カリフォルニアのビーチとビバリーヒルズの超高級住宅街がロケ地です。
シュワちゃんとシンディ(レイ・ドーン・チョン)が乗った水上飛行機(水陸両用機 グラマン・グース)も、カリフォルニア州内で離発着しています。
使いまわし映像の多用
ロケ地の狭さよりも、さらにコスパ感が最強に表れているのが、使いまわし映像の多用。例えば以下のような同じ映像が、使いまわされています。同じ場所を何度も下り続ける車
映画「コマンドー」が始まって、冒頭から約15分過ぎたあたりで、シュワちゃん演じるジョン・メイトリックスが、山荘から誘拐された娘ジェニー(アリッサ・ミラノ)を、山の急斜面を車を転がせて追いかけるシーンがありますが、15:02 くらいに登場したのと全く同じ映像が、その約26秒後の 15:28 あたりで再び登場します。同じ映像を使いまわすことでの尺稼ぎと思われますが、ジョン・メイトリックスの車は、結構 山を下ったはずですが、約26秒間、同じところを下り続けていたことになります。
リバース(反転)映像の使いまわし
また、今度は同じ映像をリバース(反転)させて使いまわす、という手法も見られます。 最後のクライマックスでのラスボスの屋敷に乗り込んだシュワちゃん。シュワちゃんが敷地内の物置小屋に隠れハチの巣にされた後、奪ったマシンガン(M60E3)で銃撃戦を繰り広げますが、まずリバース(反転)させた映像が突然出ます。M60E3の給弾口や排莢口が、実物と逆になっているので一目瞭然です。シュワちゃんが銃を左手で撃っているのも、左利きのブルース・ウィリスみたいで違和感があります。その約40秒後、今度はリバース(反転)させていない同じ映像が登場します。
おそらく、前の物置小屋から出た直後、銃を撃ち始めるシーンを撮り忘れた等の理由で、うしろのシーンの映像を反転させて前のシーンにも持って来て、尺をつなげたか、視覚効果をねらって付け足し挿入したものと思われます。
そしてこのマシンガン(M60E3)、シュワちゃんはけっこう長く撃っていますが、弾が減らない(延々と撃ち続けられる/シーンが切り替わるとマガジンの装弾数が増えている)という現象が起きています。
どうもこの屋敷のシーン、上のリバース映像以外にも、シュワちゃんがM60E3を撃っている映像は、使いまわしされている(同じ映像が2回登場する)ものが多いようです。
「シュワちゃんがM60E3を撃っている」姿だけ別にまとめ撮りして、あとで組み合わせたのでこういう仕上がりになったのでしょう。
ざっと見ただけでもこれだけあるので、もっと精査すれば、他にも使いまわし映像が、映画「コマンドー」の中にはあるかもしれません。
同じ建物が何度も爆発
アリアス元大統領とベネットがいる屋敷に侵入し、敷地内にある兵舎をまず爆破するジョン・メイトリックス。たくさん建物を爆破させたように見えますが、実は撮影用に建てられた兵舎は2つ(+監視塔)だけで、同じ建物が爆発している映像を、角度を変えて撮影した映像を使いまわしてたくさん爆破したように見せています。当時、撮影用に建てた兵舎の写真は、以下のサイト
Arnold Schwarzenegger blows up San Simeonで見ることができます。掘っ立て小屋のような建物が2つだけなのが確認できます。ロケ地は以下のカリフォルニアのSan Simeon(サン・シミオン)で、映画の中に登場した桟橋は現在も確認できます。
https://www.sanluisobispo.com/news/local/news-columns-blogs/photos-from-the-vault/article39478413.html
↓画像部分のみ
https://www.sanluisobispo.com/latest-news/75b7b9/picture38525520/alternates/FREE_1140/XOOWJ.So.76.jpg
Film Location
- San Simeon Pier
- 座標:
35°38'35.5"N 121°11'18.3"W
35.643203, -121.188415
映画の中では、桟橋のあるビーチ→ゴムボート→崖→ラスボスの屋敷の兵舎→屋敷・・・という経路でシュワちゃんは侵入したことになっていますが、実際は桟橋と兵舎を建てた場所は隣り合わせになっており、その間に崖は存在しません。エンディングの水陸両用機のシーンも、このSan Simeon Pierで撮影されています。
「ターミネーター」からのセリフも「使いまわし」
映像以外の使いまわしといえば、映画「ターミネーター」からのセリフの使いまわしも見られます。これはむしろファンサービス的に使いまわされたものと見られます。I'll be back.
ジョン・メイトリックスが旅客機に監視付きで乗せられる際、空港でベネットに向かって、I'll be back, Bennett!と、ターミネーターの名セリフをシュワちゃんが吐くシーンがあります。
Wrong.
上の I'll be back. は気づいた人は多いかと思いますが、まだ他にもターミネーターと全く同じようなシチュエーションとセリフが使いまわされています。冒頭の山荘のシーンで、敵の一味の一人が「娘を返してほしければ協力しろ。」とメッセージを伝えたところ、シュワちゃんが問答無用で、
Wrong.と言い放ち、発砲するシーンがあります。
これは映画「ターミネーター」のアラモ鉄砲店と同じ構成になっており、ターミネーターでは、店主が銃に弾をこめたターミネーターに対して「ダメだよ。」と言った後、シュワちゃんが"Wrong.(いいんだ/お前は間違っている。)"と言い放ち、発砲するシーンのオマージュ(パロディ)になっています。
このターミネーターへのオマージュ(パロディ)セリフは、日本語吹き替えだと分かりません。日本語への翻訳すると意味が失われてしまうセリフも、英語で聞けば、さらにコジャレた会話が飛び交っていることに気付くのが映画「コマンドー」です。
4つ発射口があるのに1つのみを「使いまわす」バズーカ砲
上述ラスボスの屋敷のシーンに至るまで、大活躍する4バレル(発射口が4つある)バズーカ砲 M202 FLASH ですが、4つ発射口があるわりには、なぜか向かって右上の発射口(バレル)からしか発射されません。 常に右上のバレルからだけ何発も発射されるという「打ち出の小槌」みたいな魔法のロケットランチャー仕様となっています。4つ穴が開いている意味がまったくありません。インパクトがあるので、この4バレルのM202 FLASH ロケットランチャーをチョイスしたようですが、映画撮影用のプロップということで、右上の発射口にしか、発火装置を取り付けられなかったようです。
以上、名(迷)セリフ以外にも見所満載、「使いまわし」多発でコスパ最強な映画「コマンドー」でした。
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