2021年6月末、カナダ西部が熱波による記録的な猛暑に襲われ、ブリティッシュ・コロンビア州の山間にある町・Lytton(リットン)では、カナダの最高気温の記録を更新し、気温49.6度以上を記録しました。大火災も発生しました。
そのリットンの町からひたすら1本道(Trans-Canada ハイウェイ1号線)を南下した場所に、Hope(ホープ)という町があります。
「ランボーの聖地」カナダ・ホープ
物語はアメリカ設定→ロケ地はカナダ・ホープ
このカナダのHope(ホープ)という町は、1982年のシルベスター・スタローン主演映画『ランボー』(原題: First Blood)の舞台となった町で、「ランボーの聖地」として知られています。Rambo First Blood Filming Location Tour (self guided)
(カナダ・BC州 HOPEのオフィシャル・ホームページ「ランボー・ロケ地観光ガイド」)
https://hopebc.ca/rambo-first-blood-filming-location-tour-self-guided/
(カナダ・BC州 HOPEのオフィシャル・ホームページ「ランボー・ロケ地観光ガイド」)
https://hopebc.ca/rambo-first-blood-filming-location-tour-self-guided/
映画内の設定では、"アメリカのワシントン州にある"「ホープ」という町(ちなみに原作の舞台はケンタッキー州)でしたが、実際のロケ地は"カナダのブリティッシュ・コロンビア州にある"「ホープ」(実在名そのまま)です。
そのため、映画の中でも、冒頭、道路脇を歩くスタローンの背後に、カナダのメイプルのロゴが付いたグレイハウンドバスが通過するシーンがあり、ここがカナダであることを感じさせてくれます。
映画「ランボー」のロケ地はカナダ・BC州
映画「ランボー」のロケ地は、上述のHOPEの公式ホームページに、地図とともに、だいたい網羅されて掲載されています。全体的にロケ地は狭いエリアに集中しているので、個人旅行でも1日か2日あれば見て回ることはできるでしょう。その中でも主なシーンのロケ地は以下の通りです。ランボーが訪れた戦友の実家
映画「ランボー」の冒頭、ランボーはベトナム戦争時代の戦友Delmore Berry(デルマー・ベリー)に会いに、彼の実家を訪れます。水面の光の反射が美しい湖畔のような場所にあったその家のロケ地はこちら。- (near) 4892 Quarry Rd, Coquitlam, BC, CANADA
- 座標:49.321332101004096, -122.67186792147005
Delmoreの家族が洗濯物を干していたその家屋群は、すでにすべて崩壊(倒壊)していますが、かろうじて瓦礫は残っており、そこに家屋が存在していた痕跡を残しています。現在では、映画の中に映っていた川沿いの木が1本だけ、当時の面影を保っています。
尚、その友人Delmareは、ベトナム戦争時の化学兵器(おそらく枯葉剤等)の影響で、癌ですでに亡くなっていました。そのことが本作最後のランボーの号泣への伏線となります。
HOPE(ホープ)の入口のモニュメント
上の戦友の実家を訪れた後、ランボーがFlood Hope Rd.(フラッド・ホープ・ロード / Trans-Canada ハイウェイ1号線)沿いにある、GATEWAY TO HOLIDAYLAND
WELCOME TO HOPE
(ホリデーランドへの玄関口 ホープへようこそ)
WELCOME TO HOPE
(ホリデーランドへの玄関口 ホープへようこそ)
という木製のゲートを歩いてくぐるシーンがあります。 すでにその木製ゲートは老朽化で解体されていますが、そのゲートの一部はその後も保管され、移転を繰り返しながら、現在は
- Hope Lookout Trail(ホープ・ルックアウト・トレイル)の入口
- 座標:49.37254125166262, -121.44183542579391
この辺りはハイウェイの高架橋ができてしまったので、HOPEの町の背後の、遠くの山を高架橋が遮るようになってしまい、映画撮影当時と今では、雰囲気や景色が変わってしまっています。
また、このハイウェイができてからは、HOPEの町に立ち寄る人も減ってしまったようで、山間部の中継地として栄えた町の役目を終えつつあるのが「ホープ」の現在です。
"It's a Long Road"のスタート地点
このランボーが歩いていたFlood Hope Rd(フラッド・ホープ・ロード)は、この映画の主題歌でもあるDan Hill(ダン・ヒル)が歌う「It's a Long Road」の「Long Road(長い道のり)」のまさにスタート地点と言えます。映画でのランボーの長い道のりは、このFlood Hope Rd(フラッド・ホープ・ロード)の先で保安官に出くわしたことから始まり、各地の戦場を彷徨った上で、ようやく「ランボー4」及び「ランボー5」にて、ランボーの実家の家路へと帰結することになります。
特に「ランボー4」でのエンディングで、「ランボー1」の冒頭と同じような恰好をしたランボーが、家路の1本道を歩いていく姿は、スタローンが本当は「ランボー4」をシリーズの最後として撮影に臨んでいたことがうかがえる、感慨深いシーンです。
ランボーが最初に保安官に会った場所
ホープの町に着いたランボーが最初に保安官に遭遇し、車に乗せられた場所。- Water Ave.(Trans-Canada Hwy1),
in front of Gardner Chevrolet Buick GMC Ltd.(シボレー販売店前) - 座標:49°22'33.5"N 121°26'31.8"W 49.375982, -121.442154
ランボーが引き返し逮捕された橋
パトカーに乗せられ、ホープの町の外れのこの橋で、ランボーは降ろされます。が、すぐに橋を引き返して町にもどろうとします。HOPE(希望)という町名に、希望を見出したかったのかもしれません。そして保安官の指示に従わなかったとして身体検査をされ、ナイフ所持で逮捕されたのが、この場所。- Kawkawa Lake Rd(カウカ・レイク・ロード)の橋
- 座標:49.3817882041304, -121.42379072491512
しかし、映画から約30年が経過した2011年、老朽化で取り壊され、新しい橋に架け替えられました。今はもうこの場所に面影は残っていません。かろうじて橋の脇に「映画ランボーが撮影された橋」という案内板が立てられているだけです。
こちらの2011年のストリートビューで、新旧の橋が並立している姿を見ることができます。
保安官事務所
ランボーが連行された警察署・・・正確には保安官事務所(sheriff’s station)が「あった」場所はこちら。- At 325 Wallace Street, Hope, British Columbia, Canada
- 座標:49.37968581969129, -121.44157255004718
尚、(HOPEの町のオフィシャルサイトによると)この保安官事務所として使われた建物は移動し、以下の建物
- 560 Douglas st. Hope BC CANADA
- Golden Age Club
- 座標:49.38359803718172, -121.43827356553697
バイクで空中を飛んだ踏切
ランボーがバイクで逃走する際、踏切でバイクが空中を飛ぶシーンがありますが、その踏切はこちら。- 1001-937 3 Ave, Hope, BC CANADA
- 座標:49.37655846087594, -121.4390963183795
二又の木
上の踏切のシーンの後、妙に印象的だった二又(二股)の木がある道路はこちら。- 5th Avenue and Hudsons Bay Street Hope, British Columbia, Canada
- 座標:49.37936269767404, -121.43682261699679
ランボが身にまとう布を調達したジャンクヤード(廃墟)
ランボーがバイクを乗り捨て、山へ逃げ込んでから、最初に身にまとう布を調達した廃墟のような建物や、放置された廃車、ドラム缶などは、2021年現在も、山の中に残っています。- Junkyard・・・カナダBC州 Coquitlam の Mt.Burke Mountain の Munro Lake Trail 近く
- 森の中なので正確な場所は定かではありませんが、おそらくこのあたり↓です。
座標:49.3255523373498, -122.67850276101562
※ここは映画冒頭の、ランボーの戦友の実家のロケ地の近くです。
ただ、ここへ向かうには、Munro Lake Trail(マンロー・レイク・トレイル)から少し脇道に入っていくような形になり、獣道のような道中、橋がかかっていない岩と苔だらけの小川(渓流)を渡ったりしなければならないので、くるぶしくらいまで濡れてもよいブーツなど、ちょっとした装備で出かけたほうがよいでしょう。水量が多い時(雨後や雪解け水が多い時)は危険です。道も一本道ではなく、途中、道があるような無いような二股路があったりするので、安易にこのロケ地を訪問しようとすると、意外と山の中で遭難してしまう可能性があります。ランボー同様、コンパス(方位磁針)も持っていたほうがよいかもしれません。
ランボーが飛び降りた崖
ヘリコプターから狙撃され、断崖絶壁からランボーがジャンプして下の木へ飛び降りた場所。- Othello Tunnels(オセロ・トンネル)
- Othello Tunnels, Hope, BC, Canada
- 座標:49.377466, -121.369305
ランボーが爆発させたガソリンスタンド
最後のクライマックスで、HOPEの町へもどってきたランボーは、ガソリンスタンドを爆発させますが、そのガソリンスタンドは、爆発用に作ったセットだったようで、今も昔も、このセット以外にこの場所に作られた建物はないようです。爆発で危険なので、町の外れに作られたものです。- 191 Old Hope Princeton Way, Hope, BC CANADA
- 座標:49.37409712388733, -121.4393654323685
今もこのガソリンスタンドがあったスペースは残っていますが、草ぼうぼうの更地となっており、当時の面影はありません。道路を挟んだ向かいには、本物のガソリンスタンドがありますが、このガソリンスタンドは映画では使われていません
映画「ランボー」の見所
スタローンはアカデミー賞をねらっていた?
シルベスター・スタローンが主演した1976年の映画『ロッキー』(Rocky)は、第49回アカデミー賞(作品賞・監督賞・編集賞)を受賞しましたが、スタローン自身はノミネートはされたものの、アカデミー主演男優賞は逃してしまいました。ジョン・ランボーの最後の号泣シーンや、全体的な作風(エンタメよりもベトナム帰還兵の苦悩に重点を置いている点など)などから、この「ランボー1」は、ロッキーでアカデミー賞を取り損ねたスタローンが、アカデミー賞狙いで選んだ作品のように見えます。
そのような視点で見ると、ランボーは1作目だけ、かなり作風が違うように感じます。
ただこの後は、演技派(アカデミー賞)は、すっぱりあきらめたのか、「ランボー2怒りの脱出」しかり、「ロッキー4」しかり、超エンタメ商業主義路線に突っ走っていったようです。
「御守り」サバイバル・ナイフ
ヒットした映画には、印象的な小道具が付き物ですが、この「ランボー」といえば、サバイバル・ナイフが代名詞となっています。ナイフ所持を口実に逮捕されたことで、「ランボー」シリーズは起動し、上述警察署から逃亡する際も、ランボーはナイフだけピックアップします。
断崖絶壁から飛び降りた後、腕の傷を、サバイバルナイフのグリップ内から応急処置セットを取り出して、自ら傷口を縫うシーンはあまりに有名です。 映画内で使われたサバイバルナイフは、有名なナイフ職人(刃物師/鍛冶屋)である、Jimmy Lile(ジミー・リル)がデザインしたものです。ジミー・リルは「ランボー1」に続き、「ランボー2」のナイフもデザインしました。 ジミー・リルのナイフを扱うサイト(https://jimmylile.com/knives/)にて、オフィシャルなランボー・ナイフのレプリカが販売されています。
ランボー1のナイフ
Lile Model FB Knives映画「ランボー1」に登場したオリジナルのジミー・リルのナイフに基づいたこの「 Lile Model FB」は、「14ある歯」(ノコギリ状の刃)が特徴とのことで、お値段は1995ドル~。Cerakote(セラコート/セラミックでコーティングされたもの)はプラス500ドル。
The Lile Model FB is a 14 tooth “movie-style” knife inspired by the original Jimmy Lile knife made for the movie Rambo First Blood.
ランボー2のナイフ
Lile Model FB II Knives映画「ランボー2」に登場したオリジナルのジミー・リルのナイフに基づいた「Lile Model FB II」もお値段は1995ドル~。こちらもCerakote(セラコート)はプラス500ドル。
An absolutely stunning knife, inspired by Jimmy Lile’s original knife made for the movie Rambo First Blood II – The Mission.
ランボーにとってナイフは「御守」
「エクスペンダブル」の名セリフが飛び出した「ランボー2」の船上のシーンにて、コー・バオのお守り(ネックレス)に言及したあと、コー・バオが、What's bring you a good luck ?
(あなたに幸運をもたらしてくれるものは何?/あなたのお守りは?)
と尋ねた際、ランボーがニョキっとこのナイフを見せて、"I guess this."(これかな?)とぼやくシーンが印象的です。ジョン・ランボーにとってはサバイバル・ナイフがお守りとのことで、ランボー・シリーズでは貴重なアイテムとしてナイフは全作品に登場します。
- 『ランボー1』では、警察署(保安官事務所)から逃げる際、ナイフだけ持ち出します。
- 『ランボー2』でも、ベトナムでの拘束場所から逃げる際、ナイフだけ持ち出します。
『ランボー1』で最初に使った武器はナイフ、そして『ランボー5』(Rambo: Last Blood)で最後に使った武器もナイフでした。ナイフで始まり、ナイフで終わったランボー・シリーズということになります。