T-800カールの矛盾【ターミネーター:ニュー・フェイト】

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T-800ターミネーターの矛盾
ひどい内容で大コケ、大赤字で爆死した『ターミネーター:ニュー・フェイト』(原題 Terminator: Dark Fate)。複数の敗因が作用しないと、これほどのターミネーター史上最悪レベルの酷い結果に終わるということはありません。

その失敗した理由の1つが、ストーリーや設定が矛盾だらけで観客にスッと設定が入ってこなかった、という点です。

押しつけがましい無理やり設定が多く、観客の許容限度を超えていました。

その無理やり設定で矛盾に満ちていたものの1つに、シュワちゃん演じるT-800「Carl/カール」の存在があります。

当ページでは、『ターミネーター:ニュー・フェイト』の数々の矛盾の中で、T-800「Carl/カール」の矛盾についてクローズアップします。

1.スカイネットのデフォルト設定はどこ行った?

まず、T-800の根本的な設定矛盾 というのが存在します。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』に登場するシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーが演じるT-800(通称 Carl/カール)は、「ターミネーター1」(T1)や「ターミネーター2」(T2)に出てきたT-800とまったく同じ機種(正式名称:Cyberdyne Systems Model 101 Series 800 Version 2.4 )です。

T-800のデフォルト設定

そのT-800については、T2では以下のような説明がなされていました

T-800:My CPU is a neural net processor, a learning computer.
But Skynet presets the switch to read-only when we're sent out alone.
「私のCPUはニューラルネットプロセッサー、ラーニングコンピューターだ。
しかし、スカイネットが送り出す際、リードオンリー(読み込みのみ)に設定してある。」

つまり、T-800はROM(Read-only Memory リードオンリーメモリー)設定であり、勝手に書き込みや上書きはできない設定です。

そこでT2ではジョン・コナー少年が、

JOHN CONNOR:Can we reset the switch?
「スウィッチをリセットできるの?」

と尋ね、一度チップを引き抜いて戻せばリセットできる(しかしT-800自身では引き抜いて戻すことはできない)ということで、ジョンとサラコナーがチップを引き抜くことで、T2ではT-800のディープラーニング(深層学習)が始まり、それがT2の最後のシーンでの「人間がなぜ泣くのか分かった。」につながることになります。
【T2の矛盾】:
ちなみにここでT2にも矛盾が生じています。T2に登場したT-800は、未来でジョンコナーら人類抵抗軍が、スカイネットのT-800を捕獲して、「再プログラム」したものを、1994年のジョン・コナーの元へ遣わしています。つまり、その再プログラムした状態のT-800のチップをリセット(引き抜いて、元に戻す)したら、再プログラム状態が消去され、元のスカイネットが出荷した状態(デフォルト)に戻ってしまうはず・・・なのになぜかデフォルトではなく「再プログラム」状態に都合よくまた戻っている・・・という矛盾が生じています。

しかし、『ターミネーター:ニュー・フェイト』では誰もチップを引き抜いてリセットしていないにも関わらず、なぜかT-800カールは、勝手に「人間を理解し人間側に寝返る」というディープラーニング設定になってしまっている・・・という「とんでもない設定矛盾」が存在します。

同居人がチップをリセットした?

では『ターミネーター:ニュー・フェイト』では、T-800カールと同居していた母子がカールのチップを引き抜いて元に戻したのか?というと、この母子はカールが「T-800ターミネーターであることを知らない(カールを人間だと思っている)」とのことなので、この母子がリセットした、という可能性はありません。

ミッション達成したら自動解除される?

ではミッション(ジョンコナーをターミネートする)を達成したら、スカイネットのデフォルト設定がすべて解除されるのでしょうか?そんなチープなポンコツ不良品設定ならば、欠陥品T-800をリコール(消去)するために、大量に別のターミネーターを過去にも送り付けているでしょうし、そもそもスカイネット自体が人間の良さに寝返り、攻撃をしない(審判の日を起こさない)はずです。

この辺り、『ターミネーター:ニューフェイト』では完全に矛盾しており、納得のいく説明もまったくなく、モヤモヤ設定のまま、ストーリーが展開していきます。

「人間と人工知能の関係を描きたい」ということで『ターミネーター:ニューフェイト』は作られたようですが、描き方が唐突かつ稚拙すぎて、T2のような感動的な「マシーンと人間の関係」描写からは、月とスッポンほどの落差が生じ、大失敗に帰結しています。

2.カーテン屋(逃亡潜伏)生活は不可能という矛盾

T1では他のサラコナーらや警察署を襲撃し多数の犠牲者を出し、T2でも警官やSWATに対して発砲し、サイバーダイン社を爆破までして、写真も撮られまくられた第一級指名手配犯と  まったく同じ外見をした者が、カーテン屋(ドレーパリーズ)まで開いて、しかも米国内(テキサス)で白昼堂々と生活していること自体が不可能であり、現実に矛盾しています。

実際、T2ではT-800が到着して1日も経過しないうちに、「1984年のあいつがまた出現した。」とPescadero State Hospital(ペスカデロ警察病院)に収監されているサラ・コナーにT-800の新しい写真が提示されており、警察やFBIがすぐに「シュワちゃん顔」を把握したことが分かります。
T-800カールの矛盾
警察もFBIも威信をかけて探しまわっているはずにもかかわらず、T-800カールは、さらに同居人らとあちこち旅行にも出かけて写真まで撮りまくっているという無茶苦茶設定。カーテン屋の営業車には名前や電話番号まで書いてある始末です。

「森の中でひっそり過ごしていた」だけならまだしも、カーテン屋やあちこち旅行設定は「やりすぎ」でした。

まったくリアリティーがなく、首をかしげるような拍子抜けした無理な設定も、「ターミネーター:ニュー・フェイト」がコケた原因の1つと言えます。

3.同居生活も矛盾

前述のように、人間の母子との長年の同居生活にも無理があります。しかもこの母子は、カールがマシーン(サイボーグ)であることを知らない、とのこと。飲食はどうしていたのか?夜の営みは?トイレは?などなどすべてにおいて無理があり、スルーし難い設定です。

同居母子にターミネーターだとバレないほど「浅い」人間関係なのに、自分の身を挺すほど「人間を理解した」とは到底、説得力ない薄っぺらい設定でまったく腑に落ちません。 つまり、カールがRev-9に立ち向かう動機付けも希薄すぎるわけで、バトルの大義名分も感じられない点に、「ニューフェイト」のアクションが単調で退屈な原因になっています。 

ニューフェイトはコピペ(パクリ)が多い

人間と同居するターミネーターは、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」にも登場しており(→人間と家庭生活を営むターミネーター・ヴィックの家)、元ネタはそちらですが、サラ・コナー・クロニクルズのターミネーターVICKほうが、もう少し辻褄が合う形で潜伏生活が描かれていました。

また、人間社会の中で会社を作って商売をし、タワーまで作ってしまうターミネーター(マイロン・スターク)も、すでに「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」にも登場しています。
→詳細:マイロン・スタークがシークを観た映画館

最後、ダニーがグレースの子ども時代を見に行くシーンといい(→類似参考:デレクとカイル・リースが野球をしていた公園)、「ターミネーター:ニュー・フェイト」は、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」からのコピペ(パクリ)のようなシーンやネタが多いのも気になるところです。

エンドスケルトンを液体金属で覆ったRev-9は、「ターミネーター3」のT-Xそのままですし、強化人間グレースは「ターミネーター4」のマーカスと代わり映えしません。

クライマックスの動力源を敵方に突き刺して仕留める、に至っては、「ターミネーター3」そのまま過ぎて、開いた口が塞がりません。

4.「ジョンのために」なっていない矛盾

この『ターミネーター:ニュー・フェイト』では、「ジョンのために(For John)」といえば観客は感動するだろう、と踏んでそれをキーワードにして作られたようですが、「ジョンのために(For John)」というのが、あまりにわざとらしく、観客に響かなかったのが大失敗、大コケした原因の1つとなりました。

まず「ジョンのために」と言いながら、母親であるサラコナーをリスクにさらしてターミネーターを始末させるのは、まったく「ジョンのために」なっておらず矛盾しています。サラコナーがターミネーターとのバトルで亡くなってしまったら、ジョンとサラ親子は無念すぎます。
しかも、サラコナーはターミネーターを倒せるような決定的な武器も持っていません。
→詳細:サラ・コナーの疑問点(ターミネーター:ニュー・フェイト)
「サラコナーに生きがいを与えるため」というT-800カールの屁理屈は無理がありすぎます。

これは例えていうなら、ひき逃げの交通事故で子どもを失った遺族(親)に、ひき逃げ犯が自主もしないで、「遺族に生きがいを与えるため」という屁理屈で、「次の交通事故が発生する現場を教えるから、あんたら(遺族の親)が交通事故を防ぎなさい、亡くなった子どものために。」と隠れた場所からEメールだけ送り付けているのとまったく同じことであり、感動どころか不快でしかなく、憤りも感じます。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』の監督であるティム・ミラーの『デッド・プール』同様、屈折した人間描写の悪趣味ぶりがにじみ出ている点であり、これも『ターミネーター:ニュー・フェイト』が大コケした原因の1つでしょう。キャラクター描写が淡泊で稚拙すぎます。
ジェームズ・キャメロンが監督していたら、もう少しジョンも感動的に扱われていたはずであり、悔やんでも悔やみきれない駄作に『ターミネーター:ニュー・フェイト』は仕上がってしまいました。

5.味方を消してしまった可能性も

T-800カールからの一方的かつ断片的すぎる情報に基づいて、サラ・コナーはタイムトラベルでやってくるモノを次々と片づけたことになっていますが、人類側の味方も消してしまった可能性があります。

カールはタイムトラベルを検知しただけで、やってくるモノ(者・物)の内情までは知りません。それを知らないにもかかわらず、サラ・コナーに片づけさせる、というのはかなりヒドイ話です。

実際、これまでもタイムトラベルでは、サラ・コナーを救いにカイル・リースが、ジョン・コナーを救いに再プログラムされたT-800・・・など人類側、サラ側の味方もやってきてます。到着早々、サラが片づけた場合、こうした人類側の味方も片づけてしまった可能性があり、かなりひどい話に「ニューフェイト」は仕上がっています。

6.老化設定も無理がある

そもそもターミネーターの老化設定に無理があります。20-30歳代ぐらいの外見で誕生(製造・出荷)したのに、そこから人間とまったく同じように老化していく・・・というのも変な話ですが、それよりも、老化ターミネーターが、もうターミネーターにはまったく見えない、という根本的な矛盾があります。ただの態度がデカい爺さんにしか見えません。ターミネーターなのにターミネーター感がまるでないという矛盾も、老化ターミネーターが登場した2作品「ジェニシス」と「ニューフェイト」がコケた理由の1つでしょう。

シュワちゃん無し案もあった

前作「ジェニシス」がシュワちゃん前面出しでコケたこともあり、
Other filmmakers on the project had suggested making the film without Schwarzenegger, but Cameron disliked the idea as he and Schwarzenegger were friends.
https://en.wikipedia.org/wiki/Terminator:_Dark_Fate
とあるように、当初、他の製作者からはアーノルド・シュワルツェネッガー抜きで『ターミネーター:ニュー・フェイト』を作ろう、という案もあったそうですが、ジェームズ・キャメロンがシュワちゃんと友人であるため、その案は却下されたとのこと。こうした「なぁなぁな関係」で、ストーリーを捻じ曲げてしまったのも、『ターミネーター:ニュー・フェイト』が大失敗した原因の1つと言えます。
→関連記事:老化ターミネーター(お爺ちゃん)は失敗-続編消滅(ジェームズ・キャメロン談)

なぜシュワちゃんが出るとマズイか

シュワちゃんをターミネーター役で出す場合、その時点でストーリーの7割がたは決まってしまいます。シュワちゃんは「もう悪役はしたくない」というのが出演条件であり、シュワちゃんがおいしいところを全て持っていくということが作る前から決まってしまい、どうしてもストーリーはワンパターンになってしまうためです。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』でシュワちゃんを出すのなら、人間役で出すなど、これまでの一ひねり、二ひねり以上の工夫が必要でした。例えば、ターミネーターの顔の元になった人間役(元兵士)として出演させ、「なぜターミネーターがシュワちゃん顔ばかりになったのか」の謎が明らかになりながら、ターミネーター及びスカイネット誕生に貢献してしまったことを悔いて、サラコナーらに協力する老人役という役にする、など今までと一味違う工夫をするべきでした。
→例:仮想ターミネーター・ニューフェイト(孫娘と宝塚)

7.T-800カールが存在し続ける矛盾

T2では「自分の部品が存在し続けるとスカイネットを発生してしまう可能性がある」ため、T-800は溶鉱炉に沈んでいきます。

つまり、T-800カールが存在し続けることで、スカイネットまたはそれに類する何かが発生する可能性があるにもかかわらず、T-800カールはぬけぬけとサラコナーにパシリをさせながら、自分はあちこちを旅行したりと「人間的家庭生活」をエンジョイし続けている、いう矛盾があります。

Rev-9が、Versionがあることが前提のRevisionの略ならば、このT-800カール(Cyberdyne Systems Model 101 Series 800 Version 2.4)が存在し続けたために、スカイネットに酷似したリージョン(レギオン)が誕生した可能性があり(→詳細:Rev-9はなぜ弱いのか【ターミネーター:ニュー・フェイト】)、本当に「ジョンのために」というのなら、まずT-800カールがすぐに自分自身を消滅させることが最優先事項になるはずです。

デフォルトROM設定を簡単に覆したなら、自己消去防止機能も簡単に解除できるはずです。本当に「ジョンのために」と理解しているのなら、カール自身が、真っ先に消滅すべきです。

8.なぜ4年もかかるのか?

T-800カールいわく「1994年にスカイネットが爆破されたことにより、スカイネットは消滅」。それ以降はスカイネットはその時間軸から消滅しターミネーターを送れないので、カールは1994年のスカイネット爆破前に現代に送られたことになります。

南米グアテマラの例のジョン・コナーのシーンは1998年なので、ジョン・コナーを探すのになぜ4年間もかかったのか、疑問です。T1のT-800も、T2のT-1000もT-800も、サラ・コナーあるいはジョン・コナーなどターゲットを1日程度以下で探し出しています。なぜ4年もかかるのでしょうか。無理やり設定に思えてなりません。

なぜT2にカールが登場しないのか?

バックアップターミネーターとして送られたのなら、T2にカールが登場してもおかしくないのに登場しません。後付け無理やり設定感は否めません。

関連して、
  • T-1000が送られたことに気づいたジョン・コナーは、再プログラムしたT-800(ボブ叔父さん)を後追いさせます。では、なぜバックアップ・ターミネーターであるT-800カールが送られたことに気づかなかったのでしょうか?
  • さらには、T2で現代に到着した再プログラムT-800が、バックアップターミネーターT-800の存在にも気づいてもよいものの気づきません。
このあたり、『ターミネーター:ニュー・フェイト』の設定は、全体的にご都合主義すぎます。

9.なぜ毎回シュワちゃん顔ばかり送られてくるのか?

T-800カールもシュワちゃん顔でした。なぜ毎回やってくるのはシュワちゃん顔ばかりなのでしょうか。ターミネーターT-800はインフィルトレーター(潜入者・潜伏者)として作られているので、外見はいろいろな顔のT-800がいるはずです(すべて同じ顔なら外見で一発でバレてしまうので潜入できません)。モデル101型以外にも102型、103型・・・と無数にいるはずです。

実際、1998年のグアテマラのシーンでも、サラコナーが入口に背を向けて不自然にボケーっとしてさえしていなければ、遠くからでも、すぐ「シュワちゃん顔」がやってくることに気づき、対応できたはずです。

T-800カールが送られた1994年の時点では、まだシュワちゃん顔は「味方」として成立していないため、「シュワちゃん顔を送ればジョンもサラも油断する」という理由は成立しません(T1の事象をふまえて、T2ではいろいろなターミネーターが送られてきているため、T2の間に送られてきているのなら、まだシュワちゃん顔はT1の敵としての認識であるためです)。

毎回シュワちゃん顔しかやってこないことは矛盾でありもはやコントでしかなく、ターミネーターの世界観を非常に狭くしてしまっています。そのため、ターミネーター作品は作れば作るほど大失敗、大コケ、赤字額の増加・・・と悪化していっています。

まとめ

無理やり作り出した感が否めない『ターミネーター:ニュー・フェイト』は、結局、ジョンやサラ・コナーら主要人物の名誉失墜のみならず、T-800というキャラクターも失墜させた挙句、興行収入も大赤字という、ダレトク?な(誰も得をしない)ターミネーター史上、最悪な作品に終わってしまった、と言えます。

# Carl DRAPERY DRAPERIES 800 555 0199 We never leave you hanging!

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