正統な続編の根拠は薄い【ターミネーター・ニューフェイト】

ターミネーター

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ターミネーターの正統な続編
「正統な続編」(「正当な続編」とも一部では表記されている)という単語が独り歩きしている『ターミネーター:ニュー・フェイト』(原題 Terminator: Dark Fate)ですが、その正統(正当)性の根拠は薄い、というお話です。

コケたら黒歴史化

まず、歴代、ターミネーター・シリーズは、コケた作品は無かったこと(黒歴史化)にされるので(←特にアメリカ国内の評価は厳しく、ドライ)、ターミネーター史上、最も大コケ爆死したこの『ターミネーター:ニュー・フェイト』も、数年後には無かったことにされる(黒歴史化)のは必須です。
(ニューフェイトは海外でもいまいちでしたが、海外の売り上げは評価に加味されません。)

確かに『ターミネーター:ニュー・フェイト』はひどい内容で、今改めて俯瞰するに、「2020年アメリカ合衆国大統領選挙」へ向かっていく最中に、トランプ・アレルギーを発症してしまった製作陣が作った、極めて政治色(リベラル・ポリコレ色)が強い偏重醜い政党宣伝のプロパガンダ映画でした。

しかも中国企業の利益のために無理やり作りだされ、中国市場第一主義で、中国の検閲に沿うようストーリーをねじまげてしまうという、あまりに情けないチキン映画です。→詳細:ターミネーター映画大失敗の致命的な原因

この映画を作ったタイミングが最悪、監督選びも失敗の始まりで、まさにターミネーター史上、暗黒時代に作られてしまった後悔の1作と言えます。

これでは政治に関心のない無党派層もドン引きで、純粋にエンタメとしてターミネーターという作品を楽しみたかったファンが激怒するのも無理はないでしょう。

そんな『ターミネーター:ニュー・フェイト』の正統性(正当性)の薄さの理由は以下の通りです。

1.法的にはどれも正当な作品

「正統な続編」(「正当な続編」)として「ニューフェイト」が無かったことにしたい?他の作品・・・

  • 『ターミネーター3』(原題:Terminator 3: Rise of the Machines)
  • 『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』(Terminator: The Sarah Connor Chronicles、TSCC)
  • 『ターミネーター4』(原題:Terminator Salvation)
  • 『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』(原題:Terminator Genisys)

ですが、これらはいずれも法的に・正式に「ターミネーターの商標権利」を得て、正当に作られた公式なターミネーター作品です。

T1,T2の権利者&制作会社と、それぞれの作品の権利者&制作会社が違うのは、ニューフェイトも同じです。

あとは観客がどれを「正統な続編」(「正当な続編」)として選ぶか、というだけになります。つまり観客の価値観次第ということです。

特に「ジェニシス」は、「ニューフェイト」と同じ権利者、同じ制作会社が作った姉妹作品であり、「ジェニシス」を否定するということは、「ニューフェイト」も否定することと同義となります。自分で作っておいて、それを無かったことにするのは滑稽な話で、「ニューフェイト」のみ正統性を主張するのは無理があります。

「ニューフェイト」は中華製

ちなみに「ニューフェイト」は、中国の会社 腾讯影业(テンセント・ピクチャーズ)が作った映画です。
Tencent Boards Skydance's 'Terminator'
Skydance Media Press Release April 23, 2018
Tencent Will Co-Finance and Distribute the Film in China
https://skydance.com/news/tencent-boards-skydances-terminator/
「ジェニシス」を作ったスカイダンス社が、中国企業に買われて、その中国企業がターミネーター【2019年問題】(脚本家35年のルール)が施行される前に、急いで「高額なターミネーター権利」の元を取ろうとして、無理やり作り出したのが「ターミネーター・ニューフェイト」です。
そのため、内容も中国の検閲に沿うよう、醜く捻じ曲げられています。→詳細:ターミネーター映画大失敗の致命的な原因

2.公式に「3」と表記されているのは1作品だけ

意外と気づかれていませんが、ターミネーター作品でタイトルに「3」と公式に印字されているのは、『ターミネーター3』のみです。原題(公式な英語のタイトル)も "Terminator 3: Rise of the Machines "となっています。

他のターミネーター作品の公式タイトルに3とナンバリングされたものはありません。

もし公式なタイトルを基準にするならば、T3が「正統な続編」(「正当な続編」)、正当な「3番目の作品」ということになります。

また、事実上、
  1. 1984年「ターミネーター1」
  2. 1991年「ターミネーター2」
  3. 2003年「ターミネーター3」
と、製作年順でいっても、『ターミネーター3』(Terminator 3: Rise of the Machines)が、ターミネーターの3番目の作品になることは確定事実です。

ちなみに、「ターミネーター3」にはT1、T2に続いて、アール・ボーエン(Earl Boen)本人が演じるピーター・シルバーマン博士(Dr. Peter Silberman)も出演しています。

3.ジェームズ・キャメロンが言ったから?関わったから?

ジェームズ・キャメロンが発起したわけではない

実は『ターミネーター・ニューフェイト』は、T1やT2と違って、ジェームズ・キャメロンが発起して持ち込んだ企画ではありません

当時のターミネーター商標権利者(エリソン)がまずティム・ミラーに監督を打診し、そこからなんとかジェームズ・キャメロンを製作に引きずり込んだ・・・という形です。ジェームズ・キャメロンは無理やり駆り出された感は否めず、実質、名前貸し程度の関与、製作調整程度に過ぎないことが製作過程からも明らかで、その意味でも正統性は薄いです。このあたりのことは、こちら作る前から失敗していた「ターミネーター・ニューフェイト」にまとめてあります。

ジェームズ・キャメロンが言ったから?

ジェームズ・キャメロンがニューフェイトのことを、もし正統な続編と言ったということが根拠とするのなら、ジェームズ・キャメロンは発言の撤回癖があるので、全く信用できません。典型的な例が、この「ジェニシスこそターミネーター3だ」ジェームズ・キャメロン語録です。

もしこれが「言わされた、本意ではない」ということなら、ニューフェイトのことを「正統」というのも、製作会社や人間関係から、無理に言っている/言わされた、口からの出まかせの可能性があり、信用なりません。また数年後にはニューフェイトについて本音を吐く可能性があります。
最近は「あのジェームズ・キャメロンが~した」という宣伝文句は、世間的にもかなり胡散臭いと思われるようになってきています。

ジェームズ・キャメロンが製作に関わったから?

もしジェームズ・キャメロンが製作に関わったニューフェイトが正統である、というのが根拠ならば、このニューフェイトの一体どこにジェームズ・キャメロン色(キャメロン・クオリティー)があったのでしょうか。微塵もありませんでした。

監督はティム・ミラー監督であり、ジェームズ・キャメロンは監督も脚本も担当していません。製作に外郭的に名前貸し程度にしか関わっていません。
始動するにあたり、キャメロンは、監督であるミラーに、「撮影するのは君。これは、君の映画だ」と言ったという。

キャメロンは、撮影現場に来ることもなければ、編集作業中に顔を出すこともしなかった。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saruwatariyuki/20191127-00152578/
実際のところ、プロデューサーとしてキャメロンは『ニュー・フェイト』の撮影現場を一度も訪れていなかったとのこと。
https://theriver.jp/new-fate-creative-difference-2/
『ターミネーター:ニュー・フェイト』の撮影期間中、『アバター』続編のモーションキャプチャー作業にあたっていたキャメロンは、プロデューサーでありながら、本作の撮影現場を一度も訪れていない。
https://theriver.jp/new-fate-creative-difference/

上記からもわかるように、ファンが期待するようなジェームズ・キャメロンらしさ、キャメロンクオリティーは、ニューフェイトにはまったくありませんでした。これもニューフェイトが大コケ爆死に終わった原因の1つでしょう。

ジェームズ・キャメロンが監督でもなく、本格的に関わってもいない「ターミネーター・ニューフェイト」を正統な続編、というには内容的にもかなり厳しいものがあります。

4.リンダ・ハミルトンが出演したから?

「ニューフェイト」の大きな売りは、リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役にカムバックしたことですが、リンダ・ハミルトンが関われば「正統」と言えるのか?というとそうでもないでしょう。

なぜならリンダ・ハミルトンは、「ターミネーター4」(T4)で、声で出演してますし、写真も使われています。
→詳細:ターミネーター4どのエンディングが好き?

これはリンダ・ハミルトンがT4を作品として認めていることの証左でもあり、リンダ・ハミルトンが出ている、というだけで「正統」(正当)というには、根拠が薄いと言えます。

5.シュワちゃんが出てるから?

シュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーが出演してるから正統な続編である、というのはもうまったく根拠にはなりません。ターミネーター3にも5(ジェニシス)にもシュワちゃんは出演しています。また4(サルベーション)にもCGとして顔出ししています。

ニューフェイトは、シュワちゃんが出演していた他作品を、無かったことにしているわけなので、シュワちゃんの存在有無は、正当性のなんの根拠にもなりません。

6.「正統」なわりには矛盾が多い

「正統な続編」という割には、『ターミネーター:ニュー・フェイト』には矛盾が多すぎます。

例えば、T-800カールの設定。T2ではROM(Read-only Memory リードオンリーメモリー)状態でスカイネットから出荷される、といっていたのに、なぜかリセットもせずに勝手に自己学習して「人間を理解した」お話にねじ曲がっています。この詳細はこちら→T-800カールの矛盾【ターミネーター:ニュー・フェイト】

また、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーにも疑問点が多々あります。→詳細:サラ・コナーの疑問点(ターミネーター:ニュー・フェイト)

「ニューフェイト」の設定は「正統」にまったくなっていません。

「ニューフェイト」はあまりに矛盾や疑問点が多いので、こちら矛盾だらけ【ターミネーター:ニュー・フェイト】疑問点まとめにまとめ直しています。

「政党な俗編」に陥落

以上から、『ターミネーター:ニュー・フェイト』(原題 Terminator: Dark Fate)を「正統な続編」とする根拠は薄く、大失敗に終わったことをふまえると、この「ニューフェイト」も今後、無かったことにされることでしょう。

時間経過とともに今、改めてニューフェイトを振り返ってみると、作った時期が最悪だったと言えます。

前述の通り、ニューフェイトの製作時期は、トランプ政権下でアメリカが分断され、かつ「2020年アメリカ合衆国大統領選挙」へ向かっていく時期にもろにバッティングし、特にリベラル層がトランプ・アレルギーを過度に発症していたタイミングです。

ニューフェイトの製作陣や出演者は、リベラル層が寄り集まっており、結果、ポリコレ臭がきつすぎ、一般の人々がエンタメとして楽しむことができない、無党派層がドン引きするような政治色が強すぎる「政党な俗編」に終わり失敗したのが、「ターミネーター・ニューフェイト」だったと今、総括できます。

無党派的な、ただエンタメとして楽しみたかったからファンからすれば、文化に政治を持ち込まれ、ただただ大迷惑なターミネーター史上最大の失敗作品でした。

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