映画製作会社バッド・ロボット・プロダクションズ(Bad Robot Productions)のロビーに展示されている、『ミッション: インポッシブル』の撮影で使われた手袋とゴーグル↓。
引用元:https://twitter.com/bad_robot/status/368100640402055169These gloves & goggles have been 2,700 ft over Dubai. Now they're housed in our lobby. #FoundAtBR #tbt @TomCruise pic.twitter.com/YoZTT4IPU0
— Bad Robot (@bad_robot) August 15, 2013
手袋の仕組み
映画に登場した手袋はフィクションなので(映画撮影時現在は)壁を登れる機能は実在はしません。いつものようにトム・クルーズ自身がアクションをこなしてはいますが、メイキングを見ての通り、撮影中は手袋ではなくワイヤーで宙吊りとなり、そのワイヤーは映像上からはVFXで消されています。魔法の手袋に関しては、映画の中の説明や使い方を見る限り、どうやらバイオミメティクスの技術が使われているようでした。
そして、それが実現するのでは?という技術革新がここ最近、起きています。
バイオミメティクスとは
バイオミメティクス(biomimetics)とは、bio(生物/生体)+ mime(パントマイム)/ mimic(模倣、擬態)+ tics(技術)が組み合わさった造語で、「生物/生体模倣技術」と訳されます。要は生物からパクる/生物を模倣する・・・生物が元々持っている特徴(構造や機能)をパクって、技術開発・製品開発に応用しようというものです。
『ミッション: インポッシブル』の劇中、ベンジーがイーサン・ハントへ説明していた この手袋の使い方によると、
- (壁面に対して)平行な動きだと粘着性が強く、垂直に引くと離れる(粘着しない)
→マジックテープと同じように横の動きには粘着し、上下だと引きはがせるイメージ。 - Blue is glue. Red is dead.(ブルーだとグルー、レッドだとデッド)・・・(手の甲にあるライトが)青い点灯時は粘着OK、赤い点灯時は粘着性はない(機能していない)
というものでした。
おそらく手袋に微電流を流して特殊な触手を起毛させ、粘着力を発生させる。その起毛させた触手は、横(壁に対して平行)の動きには強く、縦(壁に対して垂直)の動きには弱い(離れる)という特徴があるようです。
この仕組みはつまりバイオミメティクスということになるのでしょう。人工的に作った触手を起毛させるだけなら、少ない電力で済みます。大がかりなモーターやファンも不要で、この手袋の形状に合致します。
手袋に応用できそうなバイオミメティクス
この手袋の仕組みに応用できそうな以下のような技術が、すでに現実世界に存在しています。【生きものマネたら新素材!】ハエの脚がヒントの新型接着材!
生物からヒントを得て新たな素材を作る。バイオミメティクスという手法で新開発!
上の動画の、蠅の足由来のバイオミメティクスは、『ミッション: インポッシブル』の劇中での説明や実際の手袋の使い方に、かなり合致しています。
ポイントは、毛管力 と 分子間力 とのことで、毛管力・分子間力ともに接着面との距離ができると弱まるという特徴を利用しています。
上記のハエの技術以外にも、例えば、
米スタンフォード大、垂直ガラス壁も容易に登れる「ヤモリ」に倣ったグローブを開発
https://news.militaryblog.jp/e607208.html
や、
背中に背負った掃除機を利用して壁(ガラス)との間に真空状態を作りだして、吸引しながら登る大がかりな壁登りグッズ
といった技術もありますが、ハエのバイオミメティクスのほうがコンパクトで『ミッション: インポッシブル』の手袋に近そうです。
映画の中では、片方の手袋が途中で壊れてしまいましたが、使用している環境が悪すぎたようです。砂漠地帯のドバイということで、砂の粒子や砂嵐による磁気などが繊細なバイオミメティクスの手袋に影響を与えたものと考えられます。
(映画製作的には、トム・クルーズのアクション・シーンを作り出すためのただの前フリですが。)
いろいろな技術が詰まった便利グッズ(スパイの小道具)が登場するのが魅力の『ミッション: インポッシブル』シリーズですが、この『ゴースト・プロトコル』では、なぜかいろいろなスパイグッズが不調です。
メッセージを伝えた後、自動的に自己破壊するはずの公衆電話の自己破壊機能(データ消滅機能)が機能しなかったり、マスクを作る3Dプリンターが壊れたり、手袋が不調だったり・・・とギャグめいた描写がたくさんありましたが、あたかも「技術を過信し過ぎるな、最終的に頼れるのは自分自身だ。そして生身のアクションこそこの映画の真髄だ。」とのメッセージのようにも感じられました。
何はともあれ、映画と現実がリンクしていくのを見るのは、とてもおもしろいものがあります。
# gadget