映画『スター・ウォーズ』の、特にジョージ・ルーカスが監督したオリジナル6作品(エピソード1~6)は、日本語を含めた日本文化が数多く登場し、日本が「スカイウォーカー・サーガ」のモチーフの1つになっていることがわかります。
(残念ながらディズニー移行後の後期三部作:エピソード7~9は、その辺りが薄めです。)
よく知られている話なので「今さら」ではありますが、そんな『スター・ウォーズ』に登場する「日本」を今一度、拾い上げてみました。
日本語を話すジャー・ジャー・ビンクス
未公開シーンなのであまり知られていませんが、『スター・ウォーズ エピソード1/ ファントム・メナス』(原題:Star Wars: Episode I – The Phantom Menace)では、ジャー・ジャー・ビンクス(Jar Jar Binks)が日本語を話すシーンがあります。水ダメ、水ダメ!
クワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービが、ジャー・ジャー・ビンクスの乗り物トライバブル・ボンゴ(Tribubble bongo)にて、ナブーの首都シードに到着早々、滝に飲み込まれそうになり、ジャー・ジャー・ビンクスが「Mizu-dame, Mizu-dame! (水ダメ、水ダメ!)」と日本語を叫び、水になかなか飛び込まないシーンがあります。↓「エピソード1/ ファントム・メナス」のエンドロールを見ていると、日本人名らしきスタッフも何人か確認できるので、おそらくその中のどなたかが、「水ダメ」と進言して採用されたのではないでしょうか。
ちなみにクワイ=ガン・ジンの名前の由来は、「開眼人」ではなく、「生命や宇宙のエネルギー」を表す中国語の「気功神」(Qui-Gon Jinn)から来ているようです。
クワイ=ガン・ジンを襲ったダース・モール(Darth Maul)の外見は赤鬼、動きは忍者から派生しているように見えてなりません。
関係ありませんが、この『エピソード1/ ファントム・メナス』の幼きアナキン・スカイウォーカーは大谷翔平選手に似ているように感じます。
スターウォーズの日本と日本語由来の言葉やキャラクター
スターウォーズは、製作年が古いものほど、日本の影響が強く、新しくなるほどその影響度は薄れていきます。これは1950-60年代に子どもだったジョージ・ルーカスが黒澤映画に影響を受けたことや、1970年代、80年代ではアジアといえば高度経済成長を迎えた日本が一番、目立っていたことも影響しています。
そのため、スターウォーズで最初に作られたエピソード4~6、次いでエピソード1~3ぐらいまでは日本の影響度が感じられます。
- ジョージ・ルーカスの語る黒澤明と『スター・ウォーズ』
https://www.youtube.com/watch?v=7mpt06A5NCE - George Lucas on "The Hidden Fortress"
https://www.youtube.com/watch?v=TEJ6CzG9zVc
オビ=ワン・ケノービ (帯のNo.ワン、黒帯)
オビ=ワン・ケノービの名前の由来は、柔道や空手の道着の、「帯の1番(ワン)・黒帯」=「オビ No.ワン クロオビ」=オビ=ワン・ケノービ とはよく言われている通りです。そのため、ジェダイの騎士の衣装も、柔道や空手の道着(柔道着・空手着)のようになっています。
ジェダイ = 時代(劇)
これも黒澤映画の影響が強いですが、ジェダイの騎士の「ジェダイ」は「時代劇」の「ジダイ」から来ています。時代劇→JIDAI(ジダイ)→JEDI(ジェダイ)
そのため、前述のように、ジェダイの騎士の衣装は柔道着のようになっていますし、エピソード4のダースベーダーとオビワン・ケノービの殺陣(たて)は剣道スタイルとなっています。
ダースベーダー ← 鎧兜・将軍
これはもうここであえて書く必要もないことですが、ダース・ベイダー(Darth Vader)の衣装や立ち振る舞いは、侍の兜、鎧そのものです。全体としては武将のイメージに仕上がっており、悪役なのにあの圧倒的な存在感と人気度は、侍のトップが醸し出す独特な雰囲気と威厳が外国人を圧倒し魅了しているのではないでしょうか。 海外の子どもたちに、折り紙の兜を「ダースベーダーのヘルメットだよ。」と言って、新聞紙などの大きな紙でかぶれるように作ってあげるとすごく喜び、家まで紙兜をかぶったまま帰る子が続出します。剣道の動画を見せて、新聞紙でカブトとハリセンを作って、サムライごっこをさせたり、「ダースベーダー・ゲーム(ジェダイ・ゲーム)」などと称して、ジャンケンさせて勝った人がハリセンでカブトを落とさせるゲームを外国人にさせると、とてもウケます。C-3PO と R2-D2 のモデル = 太平 と 又七
C-3POとR2-D2の凸凹コンビのモデルとなったのは、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』(The Hidden Fortress)の登場人物である太平と又七であることは、ジョージ・ルーカスが明言しています。太平と又七のような、庶民目線で物語が描かれていくのが良いと考えたようです。Star Wars Hidden Fortress Comparison(スターウォーズと「隠し砦の三悪人」の比較)
スターウォーズの元ネタ的な「隠し砦の三悪人」は、2008年にリメイクされたものがありますが、そちらの英題は「The Last Princess」(最後の姫)となっています。この英題のほうがプリンセス・レイア(レイア姫)に焦点が当てられており、よりスターウォーズの世界観を表しているようにも思えます。
アミダラ女王 = 阿弥陀如来、ファッション=雛人形・花魁
そのレイア姫の母、アミダラ女王(パドメ・アミダラ)の名前は阿弥陀如来から来ており、ファッションは雛人形や花魁(歌舞伎)、着物から来ています。あの髪型や顔に付けている「点」は、雛人形そのものです。 尚、アミダラ女王を演じたナタリー・ポートマンはインタビューで、『以前、日本の歌舞伎座で鑑賞した歌舞伎の「ゆっくりした動き」を演技に取り入れた。』と明かしてくれています。他に歌舞伎大好きハリウッド俳優として、BOSSの缶コーヒーのCMでおなじみのトミー・リー・ジョーンズ氏がいます。→詳細:トミーリージョーンズ氏は日本でCM撮影してるの?
ハン・ソロ = 半蔵
ハリソン・フォードが演じたハン・ソロは、服部 半蔵(ハットリ・ハンゾー)のハンゾーから来ていると言われています。そのハンソロの相棒のチューバッカは西遊記の猪 八戒(チョウ ハッカイ/ジューバッガーイ*広東語)とのことです。
フォース = 神道
ジェダイといえば「フォース」ですが、英語の綴りは forceで「力(ちから)」というそのままの意味ですが、その概念は「神道」(しんとう/Shinto)に根差しています。フォースとは
フォース(The Force)とは銀河系の森羅万象に宿る形而上的、霊的、統合的、偏在的なエネルギー場である。
https://starwars.fandom.com/ja/wiki/フォース/レジェンズ
Size matters not. Look at me. Judge me by my size, do you? And well you should not. For my ally is the Force, and a powerful ally it is. Life creates it, makes it grow. Its energy surrounds us and binds us. Luminous beings are we, not this crude matter. You must feel the Force around you; here, between you, me, the tree, the rock, everywhere, yes. Even between the land and the ship.
【要旨】
(フォースを操るには)サイズは問題ではない。フォースは生命が作り上げ、育てたものだ。フォースのエネルギーは我々の身の周りにあふれ、我々を結びつけている。筋肉のような粗野な物でなく、光輝な存在だ。おまえの周りにあり、ここにも、我々や木や岩の間にもあるフォースを感じねばならない。この地面と戦闘機(X-wing starfighter)の間にもフォースは存在している。
『スター・ウォーズ エピソード5/ 帝国の逆襲』ヨーダによるフォースの説明
神道とは
一方、神道は地上の森羅万象に神が宿る・・・動物や植物だけでなく、その他生物ではない物質・・・例えば石や土、水などあらゆるものが神であり「力」が宿るものとして、自然の力を崇拝するアニミズム(精霊信仰)的な宗教です。フォースはそのあらゆるものに宿っている自然の力を利用します。自然の力は、人間に恵みを与える一方、猛威もふるい、陰陽の両面を持ち合わせている点で、フォースのダークサイドなどに通じるものがあります。 フォースの説明は、『スター・ウォーズ エピソード5/ 帝国の逆襲』(Star Wars: Episode V The Empire Strikes Back)でのルークのトレーニング・シーンでのヨーダによる説明(上記)がわかりやすいように感じます。
映画のレビューサイトなどで『帝国の逆襲』がスター・ウォーズ・シリーズの中でも評価が高いのは、こうした「~道」の追及と主人公の成長を丁寧に描いている点も大きいと言えます。
イウォーク語 = 一部 日本語
『スター・ウォーズ エピソード6/ ジェダイの帰還』(Star Wars: Episode VI Return of the Jedi)に登場するイウォーク族が話すイウォーク語にも日本語が混ざっています。 イウォーク語は主に中央アジアの言語(モンゴル語、チベット語、ネパール語)をベースに、オセアニア(ミクロネシア、ポリネシア、メラネシア)や日本などの言語から面白く聞こえる部分をピックアップしてミックスして作られています。そのため、イウォーク語を聞いていると、日本語やマオリ語(どちらの言語も母音が5つ)のように、単語のすべてに母音[ア(a)イ(i)ウ(u)エ(e)オ(o)]が付いているものもあり、日本語に聞こえてくるものがあります。
また、イウォーク語は、誰でも親しみがもてる、誰でも話しやすそうに聞こえる言語になるように、幼児語に近づけて作られています。
そのため、
「ちゃ・ちぃ・ちゅ・ちぇ・ちょ」
「ぴゃ・ぴぃ・ぴゅ・ぴぇ・ぴょ」
といった音が目立ちます。
『エピソード6/ ジェダイの帰還』のオリジナル版(劇場公開版)のエンディングでは、イウォーク族の大合唱からエンドロールに入っていきますが、その最後の大合唱部分は、
「ア・エ・ウ・エ・ア~」(あいうえお?)
の大連呼で終わっていきます。
この辺りのイウォーク語の選別は、エンディングのオーケストラと連動するため、作曲を担当したジョン・ウィリアムスも関わっているとのことで、リズムとインパクトがある母音の五音をサビに持ってきたように感じます。
それ以外にも、イウォーク族の会話の中で(空耳も含め)「日本語に聞こえるイウォーク語」が以下のように指摘されています。
- 「ウマイー」(うまい)・・・イウォーク初登場シーンでレイアから食べ物をもらって。
- 「ヤッチャー」(やったー)・・・帝国軍兵士を倒した時の雄たけび
- 「カミサマー」(神様)・・・イウォークが神と崇めるC-3POへの生贄シーンで、レイアを取り囲むイウォーク族が発します
- 「ナワシバレ」(縄しばれ)・・・同じく生贄シーンで呪い師のイウォークが号令をかけます。侍映画からセリフをコピペしたのでしょうか。
- 「アレ、ヤメンナッチャッタ」(あれ、止めになってしまった)・・・イウォークがAT-STを乗っ取る際のチューバッカとの会話
スターウォーズ エピソード7~9の中の日本
ジョージ・ルーカスが手掛けていないスターウォーズのエピソード7~9の新三部作については、だいぶ日本の影は薄まりましたが、それでもJ.J.エイブラムス監督いわく、以下のような日本関連のものがあるようです。
J.J.エイブラムス監督は、
https://www.tokyoheadline.com/477845/
- 惑星「タコダナ」←高田馬場
『フォースの覚醒』に登場する「タコダナ」という地名について「最初に東京に来たときに高田馬場のユースホステルに泊まったんだ。」と由来を明かし - カイロ・レンのマスク修繕←日本の伝統技術「金継ぎ」
「今回はカイロ・レンが割れたマスクを直すシーンで、日本の伝統技術の“金継ぎ(きんつぎ)”を取り入れています。欠陥があってもそれを隠さず修復するという意味合いが込められている。 - レン騎士団←黒澤映画
他にもレン騎士団は黒澤映画からの影響だし、 - 日本人も出演
劇中には僕の友人の村上隆さんも出演してます。
https://www.tokyoheadline.com/477845/
「金継ぎ」若者に静かなブーム キット&教室も人気(2021年11月24日)
https://www.youtube.com/watch?v=_cTmOcI3efM
スターウォーズの新三部作:エピソード7~9については、例えば、フォースは「テレパシー」や「物を物理的に浮かす・動かす」といった派手な面がことさら強調され、武士道や神道というより、魔法的・西洋魔術的(ハリーポッター的)に変わってしまっている点や、レイの衣装も古代ギリシャのオリンピアの採火式の衣装のようになっている点、カイロ・レンとの殺陣も力づくでブンブン振り回すだけの西洋式になっている点などが残念なところです。
シリーズの中では、エピソード1『ファントム・メナス』がいまいち世間的評価が低いようですが、ディズニーでは絶対に作れない、ジョージ・ルーカスでしか創れない難しい部分を切り開いているので、特に日本人はエピソード1~3をもっと再評価しても良いように感じます。
関連記事