日本では2022年7月8日、「カスタム銃」「目的達成」という点で、映画『ジャッカルの日』のジャッカルを超えたと言っても過言ではない銃撃事件が発生しました。
そんな映画『ジャッカルの日』(The Day of the Jackal)は1973年公開ということで、2023年で50周年ということになります。
「ジャッカルの日」は実話ではありませんが、クライマックスの舞台年は1963年8月25日の「パリ解放記念式典」で、場所は実在する「1940年6月18日広場」(モンパルナス駅前)です。
ロケ地も同じく実在する「1940年6月18日広場」で、以下の通りです。
ジャッカルの狙撃地
- Pl. du 18 Juin 1940(1940年6月18日広場)
- 22 Rue Littré, 75006 Paris France
- 座標:48.84450707794928, 2.3242335206605307
ジャッカルが狙撃場所として選んだ地点は、上写真の矢印の箇所、最上階の向かって左側の窓の部屋です。
地震や湿度などで建物の寿命が短い日本と違い、欧州だけあって、映画から50年経った今も、この辺りの建物はほとんどそのままの状態で存在し続けています。
この辺り一帯はすでに1900年頃には出来上がっており、おそらく19世紀後半(1860年代~)には建てられているので、この建物自体は築100年以上は経過しているはずです。広場は昔は馬車が走り、次にトラムが走り、現在は車で占められています。
もちろん、1階を中心とした入居テナントなどはすべて入れ替わっていますが、全体的な雰囲気は当時のままです。
「ジャッカルの日」の見所・解説
EUになる前の欧州の「めんど臭さ」が楽しめる
某国が加盟するとか(逆に離脱するとか)、戦地を訪れたフォンデアライエン欧州委員長の防弾チョッキ姿が「ターミネーター・ニューフェイト」のサラ・コナーに似てるとか似てないとか、最近も何かと話題続きのEU(欧州連合)ですが、そのEUが発足したのが1993年(マーストリヒト条約)。「ジャッカルの日」の20年後ということになります。つまり、「ジャッカルの日」では、EUになる前の欧州の様子を垣間見ることができます。
EU誕生以前は、ひしめき合っているにもかかわらず、ヨーロッパの国々を越境するには、いちいちパスポートその他越境審査が必要でした。そのため、ジャッカルも偽造身分証そして銃をレンタカー(アルファロメオ・ジュリエッタ・スパイダー)の下部シャーシに隠し、国境検問では車を降ろされ荷物チェックを受けたり、車体の下を鏡でチェックされる、という越境の「めんど臭さ」が、映画の中の1つの「山」となっていました。
現在でしたらEUのシェンゲン協定内をスイスイ移動できてしまうので、もしリメイクを作ったとしても、「国境越えの腕の見せ所」のような見せ場も失われ、単調な映画になってしまうのかもしれません。
「ジャッカルの日」は、EU前の欧州がどんな風だったのか?を知る、ちょっとした学習教材にもなります。
ほぼ主役なカスタム・スナイパーライフル
この映画の準主役というか、ほぼ主役なのがジャッカルが使用する22口径の Custom-Made Sniper Rifle(最上図)です。ライフルとしての機能を必要最小限にまで削ぎ落した「機能美」を実現させています。
22口径は6mmBB弾とほぼ同じサイズの小さな口径ですが、カスタムの mercury explosive bullet(水銀の炸裂弾)を使用し、映画の中でも抜群の存在感を発揮しています。
この銃がないと、そもそもこの映画は存立しないので、ジャッカルと同等の主役と言っても過言ではないでしょう。
日本では(旧)和室工房さんが、ガスを薬莢に詰める形の6mmBB弾を発射するガスガンを出していました。とても精巧に作られているので、ガスガンというよりもモデルガン・・・おまけでBB弾が発射できるモデルガン・・・といった感じの優れモノです。
たまにネットオークションで見かけますが、(アメリカに行けば一般的な実銃が何丁も買えるくらいの)高値が付いています。
「ジャッカルの日」ライフルレプリカ エアガン 旧和室工房製
開始価格:250,000円
入札:1 - 終了
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/q434158960
そしてこんなTweetも見かけました。
ヤフオクで「ジャッカルの日ライフル」に高値付いてますが今年末から来年くらいには再生産しますからね。
— (旧)和室工房@和室 (@g_wasitu) March 23, 2022
(旧)和室工房@和室 @g_wasitu
ヤフオクで「ジャッカルの日ライフル」に高値付いてますが今年末から来年くらいには再生産しますからね。
ジェームズ・キャメロンの映画もそうですが、マニアックな銃が出てくる映画は、名作が多い傾向があります。「製作者のこだわり」が強いからです。少なくとも「ジャッカルの日」は、職人気質な人にはウケる映画と言えるでしょう。
ジャッカルの効き目は左目?
どうもジャッカルの効き目は左目のようです。スイカを使ってライフルの試射と照準調整をすシーン。スコープ調整のための最初の3発は右目でねらいますが、最後の仕上げの1発は左目で絞って撃っていました。
クライマックスの広場のシーンでも、左目で撃っています。
つまり本番(決めの1発)は左目で絞って撃つようで、独特な狙撃スタイルです。ジャッカルの効き目(マスターアイ)は左目なのかもしれません。
「ジャッカルの日」のブルーレイのパッケージやご当時(昭和48年)モノの映画のパンフレット、ポスターなども、そのあたりをふまえてか「左目で狙うジャッカルと銃」・・・という構図になっています。
ちなみに利き腕は右手のようです。お得意技のチョップは常に右手で行い、パンチも右手で行い、銃も右で撃っているので、ジャッカルは右利きで効き目は左目、ということになります。
スコープを使うライフルなどで、どちらの目を使うか?については、いろいろありますが、まずジャッカルが使った銃は自動排莢ではなく、かつストックも低い位置にあるので、左目で撃っても、ストックや銃の後部が顎や頬に干渉することはないので問題はありません。
自動排莢のライフルの場合、右で構えて左目で撃つと、右目の分だけ銃の反対側に飛び出すので、排莢される薬莢が顔に当たる可能性などデメリットがあります。
ただ、左目で撃つ場合、「より体の重心に銃を引き寄せられる」というメリットもあります。
ライフル系の銃を撃つ際、「左目問題」に悩んでいる人は以下のように多いようです。
銃を右に構えてスコープを左目で覗くのは変ですか?右に構えたら右目で覗くのがいいのですかね?
照準器は両目を使い、利き目で照準するのが基本です。基本的に利き目よりも利き手を矯正するほうが楽なので、右利きで左目利きの射手は左目で狙う構えをするか、それが無理なら左構えに矯正します。(そうでなくとも、左右どちらの構えでも射撃だけはできるように訓練しますしね)イギリス軍で使われているL85シリーズなどのブルパップかつ右構えしかできない設計のライフルは厄介で、左目で狙えるように照準器をハイマウントするか、右目で狙えるように矯正するしかありません。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11238156521
長モノを構える時、利き目が左で利き手は右の人はどうすればいいですか?
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10191229310
利き目が左目 右手でライフル構えるのはどうやりますか?マック堺の雑談
https://www.youtube.com/watch?v=KaDFxGqEWsM
オチは「背の低さ」
この映画の最大のオチは、「低身長(背の低さ)」でした。全体のあらすじは端折りますが、ジャッカルは松葉杖に偽装した狙撃銃を組み立て、大統領を暗殺すべく狙撃を行うが、勲章の授与とビズのために屈んだ瞬間であった為に、弾丸はド・ゴールの頭に命中する事無く路上に着弾した(イギリス人らしいジャッカルは、パブリックな式典の場で口付けの挨拶をするフランスの習慣に馴染みが無かったと推測される)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャッカルの日
とあり、確かにその通りなのですが、付け加えると、広場での受勲シーンの途中から「受勲者の一人が妙に低身長であること」が強調される前フリ演出となっています。
受勲者の身長が普通の人よりかなり低かったために、ドゴール大統領が、通常よりもさらに背をかがめなければならなかったことが、ジャッカルの弾丸を大きく確実に避ける結果につながっていました。
暗殺者に事故や予測に反した事態が起きる、というあたりは、映画「ノーカントリー」にも通じるものがあります。
ジャッカルとは誰だったのか?
「ジャッカルの日」のエンディングは以下の言葉で終わります。・・・so there's no way of proving his identity at all, but if the Jackal wasn't Calthrop, then who the hell was he?
彼の身元を証明するものがまったく見つからなかった。だがジャッカルがカルスロップでないのなら、ジャッカルとはいったい誰だったんだ?
結局、ジャッカルとは誰だったのか?と、エンディングで無名戦士の墓地のようなところに名無し(無縁仏、行旅死亡人、ジョン・ドゥ)として埋められる様は、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」のカイル・リース、デレク・リースの埋葬地を彷彿させるものがありました。
→関連記事:カイル・リースとデレク・リースの墓地