ターミネーター3の評価【ジェームズ・キャメロン語録】

ターミネーター

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「ターミネーター」という名前が付いた映画が公開されると、とにかくジェームズ・キャメロンの名前を持ち出して、あたかもキャメロンがその新作にお墨付きを与えたがごとく宣伝し、その新作の評価を高めようとすることが半ば「恒例」となっているのがターミネーター・フランチャイズ。
(T5「ジェニシス」の時もキャメロン発言駆り出しの似たようなことが起きました。
→その一例:「ジェニシスこそターミネーター3だ」ジェームズ・キャメロン語録

その走りとなったのが、映画「ターミネーター3」(原題:Terminator 3: Rise of the Machines)でした。

2003年7月の「ターミネーター3」(T3)公開時は、日本でもこんな宣伝文句が飛び交いました。

ジェームズ・キャメロンが『T3』を高く評価!

前2作を監督したジェームズ・キャメロンが語る『T3』への思い

『T1』『T2』の監督ジェームズ・キャメロンがインタビューで『T3』と ジョナサン・モストウ監督を高く評価!

『T3』は“すばらしい”の一言に尽きるよ。僕のなかには、この作品が面白くないことをどこかで願っている自分もいたんだ。でも同時に、この作品が成功することを望んでもいた。そして『T3』は見事に成功した。ジョナサンはすばらしい映画を作ってくれた。アーノルドもすごく良かった。『T3』がこんなにすばらしい作品になって、本当に嬉しく思う。もし僕がメガホンを取っていたら違う演出をしただろうね。でも結局は同じところにたどりついたと思う。ジョナサンがした仕事は賞賛に値するよ。
http://www.eigafan.com/mailmagazine/2003/backnum_172.html

記事の原文はちょっと違う

このwww.eigafan.com(2012年10月10日サイト消滅)の元ネタとなった記事は、以下のBBC Oneのジェームズ・キャメロンへのインタビュー記事のようですが、状況や原文を読んでみると、ニュアンスが少し違うことがわかります。

インタビューに至る背景としては、

  1. 2003年7月2日にT3が公開された直後、
  2. 大量のマスコミに押しかけられ(T3の製作を断ったにも関わらずT3についてのコメントを求められ)うんざりしたジェームズ・キャメロン監督が、なかば開き直りの皮肉まじりに、
  3. 2003年7月6日に、BBC Oneの記者にこう語ったとか語らなかったとか

・・・という感じだったようで、確かにぶっきらぼうに答えているようにも見えます。原文は以下の通りです。

- BBC ONE interview(?) -

BBC One had the chance to talk to James Cameron and had this to say about Terminator 3:
JAMES CAMERON: In one word : Great. There was a small part of me that hoped it wasn't good - but another part of me hoped it succeeded. And it did. And I'm so glad it did. Jonathon's made a great movie. Arnold's in great form. I really like what he's done with it.
記者: If he had done it, would he have handled it differently?
JAMES CAMERON: Yes. That's only natural. I mightn't have structrued it the same, nor may I have ended it the same way. But coming in where he has, such a hard thing to do, and I give Jonathan points for it.

特にeigafan.comの和訳は、後半のニュアンスが変えられているように見えます。原文にそって訳すとこうなります。
ジェームズ・キャメロン:「ああ、もちろん当然違うだろうね。僕がメガホンを取っていたら違う演出をしただろうし、違う結末にしていただろう。でもたどりついたのがどこであれ、彼(T3のジョナサン監督)がやってきた監督業は、とても困難だっただろうから、だからその点についてはジョナサン監督にポイントをあげるよ。

記者の質問の箇所が、(ジェームズ・キャメロンに直接訪ねているのなら)本来、"you"になるべきところが"he"になっていたりと、正直、この「ジェームズ・キャメロンの発言」(?)らしきものは、信憑性が疑われる部分はあります。

実際、このキャメロンの発言は、(本当だったとしても)アメリカではリップサービスだったと受け止められており、アメリカでも日本で言うところの2chレベルのフォーラムやゴシップ系のマスコミでしか扱っていません。

BBC Oneもこの記事は削除しており、また、T3の英語版wikipediaもこの発言に触れながらも、続けて、
but later said he felt it and its sequel had ruined the franchise and that he would not return because of this.
「しかし後にジェームズ・キャメロンは 続編はターミネーター・フランチャイズを崩壊させてしまった。よってキャメロンはもうターミネーター製作にもどることない、と発言した。」
https://en.wikipedia.org/wiki/Terminator_3:_Rise_of_the_Machines
・・・と挿入してキャメロンのT3など後続作品に対する考えがまとめられていました。

ジェームズ・キャメロンの本音は・・・

本当のところ、ジェームズ・キャメロンがT3などについてどう思っていたのか?は以下の発言などからうかがい知ることができるでしょう。

スープに小便

ジェームズ・キャメロンの考えが一番わかりやすいのが、このT2で完結,スープに小便【ジェームズ・キャメロン語録】です。やはり後続作品は「蛇足」「無用の長物」と感じていたようです。
それ以外にも、キャメロン監督の考えが伝わってくる、次のような記事もあります。

時間はあったけどT3は作らないことにした

ジェームズ・キャメロン監督がT3に関わらなかったのは「多忙だったから」とネット上に書かれていることがありますが、それは間違いのようです。次の2010年8月のインタビューでは、キャメロン監督は、
映画「タイタニック」(1997年)の後(つまり5年間以上も)時間的余裕があったが、しかし、作る必要がないから「意図的に」T3を作らなかった。
と述べています。つまり、ジェームズ・キャメロンの中では、ターミネーターはT2で完結したというのがやはり本音なのでしょう。
http://www.showbizspy.com/article/210472/james-cameron-put-titanic-ahead-of-terminator.html
JAMES CAMERON:The only thing to me that has any kind of franchise life to it at this point is Avatar. With Titanic we are going back and doing it in 3D・・・But the other stuff I don’t feel the need. I had a choice when I was finishing Titanic to do another Terminator film and it just didn’t feel right. So I’ve moved on from that.
現時点で私がフランチャイズの続編で興味があるのは「アバター」だけ。「タイタニック」は今すでにある映像だけを3D化する予定。しかし他の作品は(続編製作の)必要性を感じない。「タイタニック」の撮影終了後、映画版「ターミネーター」の続編を作る選択権があったが、私は作るべきとは感じなかった。だから私は「ターミネーター」からは離れたよ。

ターミネーター権利はお金の無駄

また2010年1月にはこんな記事もあります。
http://www.koco.com/r/22117521/detail.html
JAMES CAMERON:People ask me why I didn't want to get involved in trying to re-capture the rights to `Terminator', for one, who wants to spend $50 million on the rights, and then another $25 million or $30 million on actors? By the time you get to it, how much do you actually have to make the movie? That's robbing the audience.
みんな なぜ私がターミネーター権利を再編することに関わらないのか聞くけど、誰が5000万ドル(約42.5億円)も権利に、そしてさらに2500万ドル~3000万ドル(約25.5億円)も俳優のために使いたがるというんだい?そんなに事前に費用がかかっていたら、1本 映画を作るのに一体いくら必要だというんだ?観客に対する詐欺みたいなもんだよ。

T3は出演料以外に何も得るものはないよ

同じようなセリフ(3000万ドルの出演料の皮肉)をアーノルド・シュワルツェネッガーが「T3に出演したい。」とキャメロンに相談した時にも返答しています。
Nothing less than $30 million.
「T3は出演料($30 million)以外には何も得るものはないよ。」
と。ジェームズ・キャメロンもその実際の価値以上に高騰しすぎている「ターミネーター商標権」と、高すぎる俳優陣の出演料に警笛を鳴らしています。

そんな頑なに続編製作関与を断り続けてきたキャメロンが、中国・Tencent Pictures(腾讯影业)が株主になったことで何か大人の事情が働いたのか、「ターミネーター・ニューフェイト」の製作関与に駆り出され、やはり大コケに終わり(→三部作頓挫)、自ら「もうターミネーターに価値はない」ことを証明してしまったことは何とも皮肉ではないでしょうか。

何年にも渡るジェームズ・キャメロンの姿勢から、やはりターミネーターは「T2で完結した」というのが、キャメロンの本音であり、それが正解だったのでしょう。「飛ぶ鳥跡を濁す」「弘法にも筆の誤り」といったところでしょうか。

QooQ