このメキシコの教会での銃撃戦でターミネーター・クロマティを破壊した後、アメリカへの帰り道の車中。サラ・コナーは気分が悪くなり、ジョンは途中で車を停めます。
「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」シーズン2第9話「フィッシャー / Complications」
路肩で嘔吐するサラの脇に、亀がひっくり返っていて、サラ・コナーは体調が悪いながらも亀を気遣い、起こして道路わきに移してあげます。それをかなり不思議そうに見つめるキャメロン。
その亀がひっくり返っていた道路のロケ地はこちら。
Overturned Tortoise Place
Film Location(ロケ地)
- Baldwin Hills Oilfield(Inglewood Oil Field)
- Blair Hills, Culver City California U.S.A.
- 座標: 34°00'41.2"N 118°22'43.6"W
34.011453, -118.378775
「TIJUANA 39」(ティファナまで39km)という(フィクションの)道路標示板を映していることから、ここはまだメキシコという設定ではありますが、メキシコな教会での「銃撃戦」でのシーン以外は、クロマティを埋めチップを破壊した荒野同様、すべてこのBaldwin Hills Oilfield(Inglewood Oil Field)をメキシコとみなして、撮影をおこなっています。
シーズン2第17話のジェシーとデレク・リースの射撃練習のシーンも、背後に石油のポンプジャックが映っており、この亀のシーンと同じくサラコナーの家がある石油採掘場で撮影されていることがわかります。
この亀のシーンの見所・解説
この「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」シーズン2第9話「フィッシャー / Complications」は、人間とマシーンの対比やマシーン(A.I.)の成長が1つのテーマとなって展開しています。亀とブレードランナー(フォークト=カンプフ検査)
なぜ亀が出てきたのかというと、それは映画「ブレードランナー」(1982年)にヒントがあります。映画「ブレードランナー」にてレプリカントと人間を識別する方法としてVoight-Kampff Test(フォークト=カンプフ検査/フォークト=カンプフテスト)を実施するシーンがあります。
→Youtube: Blade Runner - Voight-Kampff Test (HQ)
そのフォークト=カンプフ検査の中で亀を用いた心理テストの質問があります。
You're in the desert, you see a tortoise lying on its back, struggling, and you're not helping — why is that?
(あなたは砂漠にいて、亀がひっくり返ってもがいているのを見ている。しかしあなたは助けない。なぜだ?)
レプリカントはこの質問の意味が理解できず、ストレスを感じ、隠し持っていた COP 357 Derringer を発砲してその検査官を殺してしまいます。
フォークト=カンプフ検査(Voight-Kampff Testing)とは、人間とレプリカントを識別するための感情移入度検査法である。レプリカントには感情移入能力が欠けているため、高い知能を誇るネクサス6型にも有効であるということが確認されている。試験者が感情を刺激する質問を行うことで相手の呼吸、心拍数、赤面反応、目の動きを測定し感情移入の度合いを測ることができる。通常、20から30問の質問を行えばレプリカントの判別が可能である。
(フォークト=カンプフ検査(Voight-Kampff Testing)とは、)「感情移入反応だ。いろいろな社会的状況に対するやつ。動物に関係のあるものが多い」(リック・デッカード)
https://bladerunner.fandom.com/ja/wiki/フォークト=カンプフ検査
つまり、亀を助けるという行為の意味を、ターミネーター(キャメロン)が理解できるか?がこのエピソードの1つのテーマとなっているのです。
「感情移入」を理解するキャメロン
キャメロンは最初、サラコナーが亀を助けた行為の意味を理解できませんでしたが、後のジョンとの会話でその意味を(キャメロンなりに)理解していることが分かるシーンがあります。(エリソン宅の前でエリソンが帰宅するのを見張っているキャメロンとジョン・コナーの会話)
CAMERON: There are many things I don't understand.
The tortoise. It was on its back by the side of the road in Mexico. Your mother turned it over.
(理解できないことがたくさんある。あの亀。メキシコの道路脇でひっくり返っていた。サラが元に戻した。)
JOHN: She was helping it. (亀を助けたんだよ。)
CAMERON: I know, but why? (わかってる。でもなぜ?)
JOHN: Because that's what we do. When we see something that's in pain or in trouble or whatever, we try and help it.
(なぜって、人間ってそんなもんなんだよ。誰かが苦しんでたり困ってたりしたら、助けようとするもんなんだ。)
CAMERON: Empathy? (感情移入?)
JOHN: Somthing like that. (そんなもの。)
But not everyone would turn the tortoise over. Some would just leave it there. Some would probably drive over it and crush it.
(でもみんなが亀を助けるわけではない。そのまま放置する人もいるだろうし、車でそのまま引きつぶしてしまう人もいるかもしれない。)
JOHN: Yeah, I guess they would. Is that what you'd do?
(ああ、そういうやつもいるかもな。お前はそうするのか?)
CAMERON: It didn't seem like much of a threat. We're not bult to be cruel.
(亀はたいした脅威じゃない。むごいことはしない。)
JOHN: Yeah, that's one for cyborgs. (ああ、サイボーグはそうでなきゃ。)
CAMERON: Yes. (そうよ。←キャメロン不敵な笑み)一応、キャメロンは(ブレードランナーでレプリカントの一体が理解できなかった)「感情移入」を理解した(クリアした)ような(「自分は上位モデルよ」みたいな)反応を見せます。
このくだりは「ターミネーター2」で、T-800が最初の頃は「なぜ人間が泣くのか理解できていない」状態だったのが、最後には「なぜ人間が泣くのか分かった」状態に「成長」することにもかぶせているのでしょう。
T-800: Why do you cry?(なぜ泣くんだ?)と会話の構成が似ています。
JOHN: You mean people?(人間のこと?)
T-800: Yes. (そうだ。)
JOHN: I dont' know. We just cry. You know, when it hurts.
(わかんないよ。ただ泣くんだ。傷ついた時。)
エリソンを亀と同じくひっくり返して情けをかけるキャメロン
おまけとして、こんなシーンがあります。このジェームズ・エリソンの家にてエリソンを問い詰めた際、ジョンの命令に従って、エリソンの首を締め付けていた手をキャメロンが離します。
そして床に転がっているエリソンを、亀と同じようにキャメロンがひっくり返してその場を立ち去ります。
「情けをかけてやった」というキャメロン流の表現が笑えるシーンとして挿入されています。
その一方で、このシーズン2第9話「フィッシャー / Complications」では、人間の行動原理をターミネーター側に教える、スカイネットの協力者フィッシャーという人間のエピソードも同時進行で展開していきます。エピソード全体が「人間とマシーンの対比」という構成になっており、英語の原題「Complications」の通り、人間の複雑さを表す複雑なエピソードとなっています。
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