ライリーを連れてメキシコ旅行に出かけたジョン・コナー。それを追っかけてきたターミネーター・クロマティ。シーズン1第1話から延々と追い続けてきたクロマティとサラ・コナー御一行が、ついにメキシコの教会で銃撃戦を交わすことになります。
(「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」シーズン2第8話「銃撃戦 / Mr. Ferguson is Ill Today」)
ちなみにこの第8話の英語の原題「Mr. Ferguson is ill today.」(ファーガソン先生は今日はお休みだ。)というのは、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」におけるクロマティの第一声(シーズン1第1話でクロマティが最初に登場した時のセリフ)です。クロマティが一番最初に発したセリフを、「最期」に持ってきて締めくくった、という形になっています。
→関連記事:ターミネーター・クロマティの名前の由来
そのクロマティが最期を迎えた「メキシコ」の教会のロケ地はこちら。
Veluzat Motion Picture Ranch
Film Location
- Veluzat Motion Picture Ranch
- Forest Rte 5N28, Santa Clarita, CA 91390 U.S.A.
- 座標: 34°29'02.1"N 118°30'23.6"W
34.483918, -118.506554 - http://melodyranchstudio.com/Big_Ranch/virtualtours.html
舞台はメキシコということになっていますが、ロケ地はメキシコではなく、むしろメキシコとは真逆の方向、ロサンゼルスよりも北にあるサンタ・クラリタの、Veluzat Motion Picture Ranch(ベルザット映画牧場)が使われていました。日本でいうところの「映画村」でしょうか。古くからあるロケ地なので、「13日の金曜日3」や「冒険野郎マクガイバー」など数々の映画やドラマで使われています。
サンタ・クラリタ周辺にはこういったランチ(映画村)が複数あり、メキシコをテーマにしたもの、西部劇をテーマにしたもの、中東をテーマにしたもの、などテーマごとに存在しており、ハリウッド映画御用達の地域のようです。
この「メキシコな教会」シーンの見所・解説
スカル(死者の日)とエンドスカル(ターミネーター)
このエピソードは、メキシコの「死者の日」の骸骨と、ターミネーターの「エンドスカル」を掛けた作りにもなっています。RILEY: The only shame is we ran all this way, and there's skulls everywhere.
JOHN CONNOR: What, you don't like skulls?
RILEY: I like other things better.
JOHN: It's for "Dia de los Muertos". The festival's tonight.
ライリー:1つ残念なのは、逃げてきた先が、骸骨ばかりだったってこと。この後、「死者の日」のお祭りで骸骨(スカル)だらけのこの町に、ターミネーターというエンドスカルも加わることで、さらにスカルだらけ、かつ死者だらけになってしまいます。
ジョン・コナー:骸骨嫌いなの?
ライリー:好きということはないな。
ジョン・コナー:今日は「死者の日」なんだ。夜はお祭りだよ。
ちなみに「骸骨(スカル)」といえば、こちらのキャメロンのレザー・ジャケット(革ジャン)で、キャメロンは全身をスカル・ファッションでコーディネートしています。
尚、ターミネーター・クロマティが教会へ向かう際も、その顔と「死者の日」の骸骨の飾りがオーバーラップするような演出もなされています。
ライリーの「深い」言葉
上のライリーのセリフで、骸骨について「好きということはないな。」というのがありますが、何気にこれは深いセリフです。 シーズン2第10話でライリーは、里親の家でのもめ事の際、It's all gonna burn, and you're gonna be nothing but bleached skulls. Don't you get it? You're dead.と怒鳴っています。これは「審判の日」以降の描写なのですが、ライリーがスカル(骸骨)に対して、相当なトラウマとなっていることがわかります。ライリーのセリフの1つひとつを丁寧に聞いていると、何気に核戦争後の廃墟の中で育ってきた悲惨な背景や心理がにじみ出ているところがあり、かわいそうになってくることがあります。
何もかもみんな燃えてなくなるのよ。残るのは骨だけ。わかんないの?みんな死ぬのよ。
クロマティの HK-Slap
この教会に至る直前の警察署内でのクロマティの銃の取り回し方がなかなか無駄なくまとまっていてすばらしく、隠れた見所の1つとなっています。また、クロマティが Heckler & Koch MP5K をHK-Slap するシーンもあります。
HK-Slap とはHK・・・Heckler & Koch(ヘッケラー&コッホ)のMP5などの銃の、引いたままロックされているコッキングレバー(つまみ)をスラップして(パチンとたたいて)ロックを解除(レバーを前にもどす)すること。
HK-Slap については、「(下まで手を下げるので)無駄な動作が生じて撃つのが遅くなる」「アタッチメントに手が当たるなどしてスラップしにくい」「レバーの破損につながりやすい」「手が痛い」等々の理由から、現実にはあまり推奨される銃の扱い方ではありませんが、「かっこよく見える」ので、「ダイ・ハード」シリーズや「マトリックス」シリーズなど、ハリウッド映画では頻繁に登場する所作ではあります。そのため、(本編とは関係のないどうでもよいことですが)映画にMP5が登場した際には、HK-SLAPが見所の1つとなっています。
キャメロンの強い決意表明
ジョン・コナーの救難信号(電話でのプッシュボタンの暗号)で、メキシコの警察署まで駆け付けたデレク・リースとキャメロン。「(クロマティに)見つからないように行くぞ。」というデレクリースをよそに、正面突破で警察署に入っていくキャメロン。 これはシーズン2第12話で、サラ・コナーが、They always come through the front door.と言及している通りで、クロマティもキャメロンもいつも正面突破します。
(ターミネーターは常に正面からやってくる)
そのメキシコの警察署内で、キャメロンはボソッと、
I can't let anything happen to him.と、いつもよりも強い口調で「意思表明」をするのがとても印象的でした。
(ジョンには指一本ふれさせない。)
クロマティに対峙するこの教会内のシーンでも、いつもよりも怒っているような表情を浮かべています。シーズン1第1話から、クロマティからジョンを守る、というのが第一ミッションでやってきたため、並々ならぬ「決意」が表情からも感じられます。T2のT-1000を演じたロバート・パトリックに倣って、銃を撃ちながら極力、瞬きしないようにしているサマー・グローの演技も見ものです。
なぜショットガンでターミネーターを破壊できたのか
キャメロンが教会内でレミントン M1100でクロマティの頭を破壊するシーンがありますが、なぜ12 gauge(ゲージ)のショットガンでターミネーターを破壊できたのか?というと、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」の当時のオフィシャルサイト(www.fox.com/terminator/)のBBSにて、製作者のジョシュ・フリードマンや脚本家がファンの質問に答えるコーナーがあり、そこで以下のように回答していました。The rounds in the shotgun were not your standard bullets. They were uranium laced bullets (nuclear material in the bullets) and were thus able to cause more damage.
通常の弾ではなく、キャメロンはウラニウム入りの特殊な弾丸をショットガンで使用。それゆえこのような大きなダメージをT-888に与えることができたのです。
uranium laced bullets (nuclear material in the bullets) ・・・ウラニウム入りの特殊な弾丸をキャメロンは使用した、とのことです。
希望通りエリソンによりJ.C.の元へ導かれたクロマティ
クロマティはずっと「エリソンがジョン・コナーの元へ導く」と言ってきました。ELLISON: I'll never lead you to her. If that's why you left me alive you'd better just kill me now. I'll never do the Devil's work.
CROMARTIE: We'll see.
エリソン:俺は絶対にお前をサラ・コナーの元へ案内しないぞ。もしそう考えているなら今すぐ俺を殺せ。俺は絶対に悪魔の仕事はしない。
クロマティ:いずれわかるだろう。
※シーズン2第1話「ジョン抹殺 / Samson and Delilah」燃えたサラコナーの家の前にて
CROMARTIE: You will lead me to the Connors.この教会の外でエリソンを見かけ、そのままエリソンに導かれて教会に入っていくクロマティ。そのクロマティを背後にエリソンは、
クロマティ:お前は俺をコナーたちの元へ導くだろう。
※シーズン2第7話「ナブルスの兄弟 / Brothers of Nablus」エリソン型のT-888に襲われたエリソンを助けた際
All things are possible to him who believes.と祈りを捧げます。
「彼(神/ジョン・コナー)を信ずる者は救われる。」
未来で「救世主」とされているジョン・コナーは、実は
ジョン・コナー John Connor = J.C. =Jesus Christ イエス・キリスト
という意味も名前に掛けられていると言われており、このシーンは、クロマティが神(J.C.)の元へ召されるような演出がなされています。
クロマティが両腕を両サイドに挙げているのも、十字架に掛けられたキリスト像をモチーフにしているのでしょう。実際、このクロマティの体が、のちにジョン・ヘンリーとして「復活」します。Resurrection(レザレクション「キリストの復活」)を意識しているように見えます。
シーズン2第21話では、キャサリン・ウィーバーが、ジョンヘンリーに対して「あなたはカインやアベルでもない、神よ。」というセリフもあります。
→詳細:【解説】創世記とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ
この教会での銃撃戦では、まず戦いにおいて優位とされる上のポジション(上窓)からサラとデレクがサブマシンガンで迎え撃ち、クロマティを引き付けておいて、その間にエリソンをはけさせます。そしてクロマティの弾を使わせつつ、キャメロンを至近距離まで誘導させます。
ちなみにこのシーン、全員がクロマティのチップ(頭部)をねらっています。
以前、デレク・リースがジェシーに対して、
Aim for the chip. Aim for the chip, they don't get up.
チップをねらうんだ。そうすればマシーンを倒せる。
と言っているように、対ターミネーター戦は、チップがある頭部をねらうのが鉄則のようです。(ジェシーも潜水艦の中でクィーグの頭部に対して撃っていました。)
「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」は、シーズン1第1話から続いてきたこのクロマティとサラコナー一家のバトルの終焉で一段落がつき、いよいよ「創世記」・・・スカイネットとの対峙(A.I.の成長、第三勢力の登場)へ舞台の本腰を移していくことになります。実はクロマティとの追いかけっこはただの前フリに過ぎなかったことが、明らかになってきます。
この後、クロマティを埋めチップを破壊した荒野のシーンへ続きます。
# Terminator Sarah Connor Chronicles 208