サラ・コナーの癌(ガン)克服物語(Hope of Isotope)

サラコナークロニクルズ

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ターミネーター・サラ・コナー物語
「ターミネーター3」で亡くなったことになっていたサラ・コナーの復権が図られたのが「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」。

それをふまえると今後、「ターミネーター・ニューフェイト」で消えてしまったジョン・コナーの復権(復活)を図る作品が登場してもまったく不思議ではありません。
→関連記事:ジョン・コナー死亡は復活への伏線【ターミネーター】

「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」のおもしろいところは、「複数の軸(ストーリー・ライン)」が同時進行で展開していた点です。その「複数の軸(ストーリー・ライン)」とは、例えば以下の4点です。

  1. サラ・コナーの物語
  2. ジョン・コナーの成長物語(なぜ救世主になれたのか)
  3. A.I.(スカイネット)の成長物語(どのように現代に広がっていったか)
  4. 新A.I.(サイボーグレジスタンス)の成長物語(シンギュラリティ=AIによるAIの育成)
    →参考:【解説】創世記とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ

特に1に関しては、サラコナーの母としての日常・苦悩だけでなく、時空を超えた「親子の愛」が「癌を克服する物語」を通して終始一貫、描かれていたことがわかります。

「サラ・コナー・クロニクルズ」はSci-Fiドラマですので、今回はそのサラコナーと癌の部分に着目してSF的な趣向も踏まえ解説します。

なぜか「希望」(アイソトープ)

「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」の第1話では、とても不思議なシーンがあります。

この貸金庫型タイムマシーンの銀行の貸金庫内に立て籠った際、キャメロンが貸金庫から仕込んでいたいろいろな機材を取り出します。その際、ジョン・コナーとキャメロンの間で以下のような会話が交わされます。
JOHN: What is it? (それは何?)
CAMERON:Hope. (希望よ。)

ジョンの質問にキャメロンは isotope(アイソトープ:同位体)の部品を眺めながら、なにやらまるでロウソクに灯された炎に「奇跡」を願うがごとく、「HOPE(希望)」という抽象的概念で答えているのです。

ふつう、「何これ?」と聞かれればそのままアイソトープと答えればよい(サイボーグならなおさらそう答える)はずですが、なぜわざわざここで「希望」と抽象的・観念的に返答しているでしょうか。

実は放射線治療も兼ねていた?

未来を切り開くためのタイムマシーンを「希望」というのならまだわかりますが、この時キャメロンは確実にアイソトープ銃の、しかもアイソトープの部分のみを指して「希望」と表現しています。

そしてこの時、場面に流れている微妙な空気、間合い、わざわざサラコナーにアイソトープ銃を持たせている、そしてサラのイマイチ納得いかなさそうな神妙な顔・・・
CAMERON:When the isotope solution turns red, you fire.
(アイソトープが融合して赤になったら撃って。)
SARAH: Isotope? What,is this nuclear?
(アイソトープって・・・核か何か?)
CAMERON:No, not really. 
(そんなんじゃないわ。)

キャメロンはサラ・コナーを心配させないような言い回しをしています。

アイソトープ→ホウ素中性子捕捉療

実はこれ、ターミネーター・クロマティを吹っ飛ばす用だけでなく、一石二鳥でサラ・コナーに宿ろうとしていた初期ガン細胞も吹っ飛ばすべく、高度かつ荒療治な、Boron Neutron Capture Therapy(BNCT)/ホウ素中性子捕捉療法 がこの時、試みられたのではないか、という話です。Sci-Fi映画/ドラマの真骨頂とも言えるシーンです。

同位体には放射能を持つ放射性同位体がありますが、その中のホウ素10Bと熱中性子との融合核反応によって生じるアルファ粒子と7Li反跳核を中性子照射すれば、ガン細胞を破壊することができる治療法(BNCT)であり、日本国内でも少数の研究所でこの治療法を提供しています。

また、原子炉を使わなくても中性子線を放射できる小型加速器も国際学会で発表されています。

尚、この照射は極短飛程であるため、部位に極めて近づけて行う必要があります。

ただ吹っ飛ばすだけならM79

ただ単にターミネーター・T-888(クロマティ)を吹っ飛ばすだけなら、わざわざアイソトープ・ガンにしなくても、M79 グレネードランチャー(Grenade Launcher)やその他の爆薬類でもよいはずです。
M79 グレネードランチャー(Grenade Launcher)は、ターミネーター2やサラ・コナー・クロニクルズでも頻繁に登場しています。このM79ランチャーは、1953年頃から作られ始め、1961年以降はアメリカ陸軍でも採用され、ベトナム戦争でも使われています。

つまり、この貸金庫の銀行が建設された1963年にはM79は実用・入手可能であり、わざわざ「8ヶ月かけて」アイソトープ銃を作るよりも、M79ランチャーやらダイナマイトやら手榴弾などを入手して、金庫に仕込んでおくほうが容易だったはずです。

それにもかかわらず、わざわざアイソトープが使われているのです。

なぜ再起動中のクロマティからチップを引き抜かなかったのか

この銀行の貸金庫のシーンに至る前に、キャメロンはクロマティが感電したサラ・コナーの家にて、クロマティを感電させ、120秒の一時停止(再起動)状態にすることに成功しています。

ではなぜその時に、キャメロンはクロマティからチップを引き抜いて、完全にクロマティを倒さなかったのでしょうか?

おそらくこれはこの銀行にて、アイソトープをサラコナーの体に照射することが、かねてから予定として組まれていたように見受けられます。

理由としては以下の通りです。

  1. クロマティが攻めてこないとサラコナーはアイソトープ銃も使わないし、タイムトラベルにもYesと言わないだろう。
  2. そのため、あえてその前の家のバトルではクロマティを完全に倒さず、銀行まで追ってこさせるようにした。
  3. 銀行ではわざと派手に動き、防犯カメラのネットワークに自分たちの居場所が流れるようにして、クロマティに居場所を知らせた。
  4. 銀行でクロマティを倒すことを想定していたからこそ、貸金庫内にアイソトープ銃を事前に仕込んでいた。
  5. そしてクロマティを倒すことと、サラコナーの体にアイソトープを照射することの一石二鳥をねらった。

以上のことが、すでに未来で計画されており、そのミッションを担って未来からタイムトラベルしてきたキャメロンが、予定通りプランを実行した・・・という見立てができます。

「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」の製作総指揮兼脚本のジョシュ・フリードマン(Josh Friedman)は、
Another character who might be revisited at some point: the engineer who built the time machine in the bank vault in 1963.
「いつか機会があればスポットを当てなおしてみたいキャラクターは、1963年の銀行にタイムマシーンを作り、貸金庫に組み込んだエンジニアだ。」
と言っており、この銀行のタイムマシンやアイソトープガンを設置した背景には、どうやらまだ伝えられていない意味深な物語があるようです。

貸金庫のタイムマシーンのセキュリティ認証は、キャメロンの網膜が使われていました。

タイムトラベルできるのは有機体のみなので、網膜情報だけをタイムトラベルで持ち運ぶことはできません。つまり、キャメロン自身が一度、1963年にタイムマシーン設置時にそこにいた可能性があります。
1963年と言えば、サラ・コナーが産まれる直前です。キャメロンはサラ・コナーの出生から最期まで、ずっと見守り続けているのかもしれません。

キャメロンの秘密任務「サラ・コナーの癌の克服」

すべてのミッションを明かさず、最後まで謎に包まれていたキャメロン・フィリップスですが、その任務の1つに、未来のジョン・コナーから「サラ・コナーの癌のケア」をミッションの1つとして言付かっていたとみられます。

その証拠に、シーズン1の最初からシーズン2最終話まで、キャメロンはサラ・コナーの癌や体調について、執拗に言及しています。(シーズン1第2話↓)
SARAH: Why not stay in the past? I'd have seven years more years to get ready. To get him ready.
(なぜ過去に留まらなかったの!?あのまま過去にいれば7年かそれ以上、ジョンを戦士に育て上げる時間があったのに。)
CAMERON: No, you wouldn't have. (いいえ、あなたはできないわ。)
SARAH: Why not? (なぜ?)
CAMERON: Because you died. Two years ago. December 4th, 2005. You died.
(あなたは2年前の2005年12月4日に死んだから。)
SARAH: So if I'm such a great fighter, how was I killed?
(じゃ、そんな偉大な兵士な私がどうやって殺されるの?)
CAMERON:Cancer. (癌ガンよ。)

キャメロンの言葉を受け、サラコナーは、癌の早期発見に努めるようになります。
2007年の未来に到着しIDを取得後、真っ先に病院に検査を受けに行っています。その前にジョンを無理やり学校に行かせたのは、病院に行くことを知られたくなかったからかもしれません。

シーズン1第2話~第3話:
Pacific Medical West Center, Oncology Outpatient/ガン(腫瘍)科:
サラコナーの癌健診
DR.:You're healthy as a horse. A healthy horse.
(君は競争馬のように健康そのものだ。心配ない。)
SARAH:I wanted to talk to you about prevention. (癌の予防法を聞きたくて・・・)
DR.:For cancer? What you're doing seems to be working.I don't mean to make light, but you've got no risk factors.No genetic disposition.
(君が今すでにやってることで十分なようだよ。君に危険因子は見当たらないよ。)
検査結果では、癌の気配はまるで無し、とのことで、やはり銀行でのアイソトープ銃のホウ素中性子捕捉「荒療治」法がガン細胞を吹き飛ばしてしまったのかもしれません。

また、キャメロンが2007年をタイムトラベル先に選んだのは、サラコナーに(1999年のではなく)2007年の医療技術で検査を受けさせたかった・・・ということもあるのかもしれません。「2005年に死んだ」とされるサラコナーは、もしかしたら2007年以降の医療技術であれば助かっていた癌だったのかもしれないことがうかがえます。

キャメロン「時空を越えた時、死も超えた」

実際、キャメロンのアイソトープ銃によるサラの癌治療説を裏付けるようなセリフもあります。シーズン2第20話でのサラコナーとチャーリーとの会話↓
SARAH:Cameron said when we jumped eight years through time, we jumped over my death. (時空を越えた時、死も超えたとキャメロンに言われた。)
Charlie:From cancer? (癌の死のこと?)

「時空を越えた時、死も超えた」というのは、やはり
  • アイソトープ銃のホウ素中性子捕捉法でガン細胞を吹き飛ばした
  • 2007年の医療技術に接すれば癌の早期発見・予防ができるから事実上「死を越えた」
という2つの意味が掛けられているように感じられます。

また、サラコナーが癌に敏感になることで、思わぬ副産物が生まれます。
自分の胸のシコリに気付いたサラコナーは、またもやすぐに病院で検査を受けます(シーズン2第20話)。そしてこの時、腫瘍と思っていたものは発信機(transmitter)だった・・・この「早期発見」でサラ・コナーは別の意味で「九死に一生を得る」ことになります。

癌ではなく発信機(transmitter)だった・・・とホッとしたのも束の間、それでもキャメロンはさらにたたみかけるようにサラコナーの体調について言及し、ジョン・コナーに母親の健康に気遣うよう、促します。
She's lost weight.(サラの体重が減っている)シーズン2第21話

キャメロン・フィリップスはシーズン1からシーズン2最後まで延々とサラの癌について言及し続けているという事実が存在します。

そしてこのキャメロンのメッセージ(=「未来のジョン」のメッセージ)は、「現代のジョン」を通じて、サラに改めてしっかりと届けられることになります。
JOHN:Mom, are you sick? Cameron thinks you're sick.
(母さん、病気なの?キャメロンは母さんが病気だと思ってる。)
SARAH: She does? (そうなの?)
JOHN: You've lost weight.(母さん最近やせたって。))

そしてその後、ジョンはサラに向かって、
I love you.
と言い残します。実は、映画も含めターミネーター全作品を通して、ジョンとサラ・コナー親子が "I love you."と言ったのは、このシーン以外にはありません

そして、このジョンのI love you. に対する返事が、サラ・コナー・クロニクルズの一番最後のシーンのサラコナーの声 "I love you, too. "につながります。
未来へ到着したジョン・コナーのエネルギーバブルの跡を追いかけるように時間差で届いたサラ・コナーの声、“ I Love You, too. ”(私も愛してる。)・・・は、そんなジョンからの“ I Love You. ”のメッセージをしっかりとサラが受け止めたこと、そして「未来のジョン(Future John)」と「現代のサラ・コナー」が時空を越えて深い愛という絆でループするように強固につながっていることを意味しているような描写となっています。

T1で未来のジョン・コナーのメッセージをカイル・リースがサラ・コナーに伝えたように、「サラ・コナー・クロニクルズ」では、キャメロン・フィリップスを媒介として、未来のジョン・コナーと、現代のサラ・コナーは「愛」でつながっています。これは後続のターミネーター作品では消失してしまった重要なテーマでもあります。
それをふまえて見ると、それまでのキャメロンの表情やセリフも意味深であることがわかります。
CAMERON:We can go kill it before it's born. You can stop running. Fight !
(それが誕生する前に殺すことができる。逃げずに戦いなさい!)

kill it の it には「スカイネット」と「癌」が掛けられていたのではないでしょうか。そしてサラ・コナーが戦う覚悟を決めたときのキャメロンのうれしそうな顔が印象的です。

まとめ

まとめると、

  1. 「未来の記録」によると、サラのガン細胞は1999年頃に出現したと思われ(また、時を同じくしてクロマティというT-888がジョン抹殺に向かったらしい)という情報をつかんだ「未来のジョン・コナー」は、キャメロン・フィリップスを使者として現代に送った。
  2. キャメロンは、まずT-888クロマティからジョンを守るとともに、アイソトープの照射を試みサラの体をクリアにした。
  3. そして2007年へ「1999年のサラの身体」をタイムトラベルで持ってこさせた(2007年以降の医学技術を持って早期発見・早期治療に努めれば、サラはもっと長生きするため)。
  4. 目的を最低限達成したので、キャメロンは未来へもどった(ジョンも未来へ飛び、人類の救世主となった)

というサラ・コナーのガンに基づいた時代設定によるクロニクルズ(年代記・記録)なので「サラ・コナー・クロニクルズ」というタイトルになっているとも言えます。

「未来のジョン」
↓↑
キャメロン
↓↑
(現代のジョン)
↓↑
サラ・コナー


全体を俯瞰すると「ジョンをターミネーターから守るお話」と同時に、「未来のジョン」が、母親サラ・コナーを守ろうとしたお話・・・母親サラ・コナーは息子ジョンを必死に現代で守っていたが、実はそのサラが「未来の息子」によって守られていた・・・そんな時空を超えての親子の愛というバックストーリーが「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」では描かれていたようです。
ちなみに「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」の第1話と最終話は、サラコナーのまったく同じセリフ
I'll stop it. (「私が阻止する。」=「未来を変えてみせる。」=No Fate.)
でくくられています。つまり、 I'll stop it. ”で物語が始まり、 I'll stop it. ”で綺麗に韻を踏んで物語が終わっていることから、サラ・コナー・クロニクルズはそれなりに完結していることがわかります。

その後、サラ・コナーはどうなったか?

未来へ飛んだジョン・コナーと分かれ、"I'll stop it."と「スカイネット狩り」を改めて決意し、現在に残ったサラコナーはその後、どんな生活を送ったか?というと、以下のような見方で楽しむこともできます。

1.最終話からループしてみる編↓
2.現在に残ったサラコナーが「スカイネット狩り」に奔走する編↓

# Terminator Sarah Connor Chronicles back story

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