猛暑イライラ狂気爆発の名作映画「フォーリング・ダウン」

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映画フォーリングダウン

世間では、事件を起こした逮捕者が、「イライラしてやった」「ムシャクシャしてやった」「ストレスが溜まってやった」と動機を語るケースが多々あります。

先日もアメリカではこんな事件が発生していました。

映画が現実化したようなイライラ事件

マックのポテト割引を断られ・・・従業員を暴行、銃撃

  • 日時:2022年1月19日(現地時間)
  • 場所:アメリカのミズーリ州のマクドナルドのドライブスルー
  • 概要:客の女(30歳)がフライドポテトの割引を求めてたが、従業員に断られたことを恨み、従業員が休憩時店舗から出たところを、女に突然、銃で頭を殴られた後、撃たれた。撃った女は警察に逮捕され、従業員は撃たれたが、かすり傷程度で済んだ事件。
  • Police: McDonald's Employee Shot in Argument Over Discount
    https://www.usnews.com/news/best-states/missouri/articles/2022-01-21/police-mcdonalds-employee-shot-in-argument-over-discount

「マヨネーズ多すぎ」客の男が店員に発砲2人死傷

  • 日時:2022年6月26日夜(現地時間)
  • 場所:アメリカ南部のジョージア州アトランタのサンドイッチ・チェーンSUBWAY(サブウェイ)
  • 概要:客の男(36歳)が「サンドイッチのマヨネーズが多すぎる」と怒りだし、店員に向けて銃を乱射。女性従業員2人が撃たれ、26歳の女性が死亡、24歳の女性は重体。客の男は逃走数時間後に逮捕。
  • Atlanta Man Kills Subway Worker for Putting Too Much Mayo On His Sandwich
    https://www.news18.com/news/buzz/atlanta-man-kills-subway-worker-for-putting-too-much-mayo-on-his-sandwich-5454907.html

マック・ポテト「冷めてる」母のクレームに加勢の息子発砲,店員死亡

  • 日時:2022年8月8日19:00頃(現地時間)
  • 場所:1531 Fulton St, Brooklyn, NY U.S.A.(NYブルックリンのマクドナルド)
  • 概要:女性客(40歳)が店員(23歳男性)に「フライドポテトが冷めている」とクレーム、口論に。女性客は息子(20歳)を呼び出し、息子は店員とケンカになり店外へ。息子はガールフレンド(18歳)から銃を受け取り発砲。店員は首を撃たれ、2日後に死亡。
    https://abc7ny.com/nyc-mcdonalds-shooting-worker-shot/12092742/

イライラ爆発の狂気を描いた名作映画

上記の現実世界で起きたものと似たような事件は、映画『フォーリング・ダウン』(Falling Down / 1993年)にて描かれていました。



このシーンでは、ファストフード店を訪れた、マイケルダグラス演じる主人公(D-Fens)が、11:30amまでオーダーできる朝食のセットメニューを頼もうとしたところ、11:30を2,3分過ぎていたために、朝食のセットメニューの提供を店側に頑なに断られてしまったことで、主人公の怒りが爆発します。
(この店に至るまでもイライラ爆発の伏線が多々描かれています。)

また、提供されたハンバーガーが、メニューの写真と違って、薄っペラでしなしなであることが、さらに火に油を注ぎます。現物がメニュー写真とだいぶ違うのは「ファストフードあるある」で、この辺りにも社会風刺が効いています。

Have you ever heard the expression "The customer is always right"?
「お客の言うことは常に正しい/お客様は神様だ。」という言葉を聞いたことないのか?

とのモンカス(モンスターカスタマー)ぶりを発揮したセリフが印象的です。

このファストフード店のロケ地


このファストフード店(Whammey Burger)のシーンは、現実世界ではAngelo's Burgersという1978年から営業しているハンバーガー屋の店舗が、ロケ地として使われていました。現在でもこのハンバーガー屋さんの店内には、

THE MOVIE "FALLING DOWN"
WITH MICHAEL DOUGLAS WAS
FILMED HERE ON MAY 12, 1992

マイケル・ダグラス主演の映画「フォーリングダウン」が1992年5月12日に、ここで撮影されました。

という説明文とともに、映画「フォーリングダウン」のポスターが掲示されています。
→その店内写真:https://goo.gl/maps/iShGNrKCfN891cZP9

「フォーリング・ダウン」その他の見所・解説


この映画「フォーリング・ダウン」では、アメリカでの様々な社会問題が風刺されていますが、その土台として"angry white male stereotype"(怒った白人男性の典型)を描いていると言われてます。

スーツ(白いYシャツとネクタイ)、四角いメガネ、角刈り風な髪型・・・という典型的なアメリカのサラリーマンが、終盤にかけてどんどん壊れていきます。

始まりは猛暑+渋滞

この映画のオープニングは、主人公の顔の「汗玉のドアップ」から始まります。オッサンの汗のドアップから始まる映画も珍しいですが、この汗玉がもうすべてを語っています。

車を運転する主人公D-FENS(マイケル・ダグラス)は、

  • 会社を解雇された(失職)
  • 家庭問題(離婚)

がすでにベースとしてあり、さらに、

  • 猛暑
  • 道路工事による渋滞
  • カーエアコンは不調
  • 窓を開ければハエに悩まされ
  • 周囲の車の騒音・喧噪
  • 前の車の後部座席から主人公を凝視する少女
  • 隣の車の窓に貼られた、人を馬鹿にしたような表情の人形

など諸々の要素が加わり、ついにプッツン。車をそのまま放り投げて、「家に帰る」と後続車に言い残して、ハイウェイを歩いて降りていくことでこの映画の幕が切って落とされます。
映画フォーリングダウンのロケ地

そのオープニングの道路のシーンのロケ地はこちら。


ドジャー・スタジアムの近くのインターチェンジが撮影に使われていました。

この映画冒頭の渋滞には刑事も巻き込まれており、この冒頭の渋滞シーンは、後半の犯人特定と、バズーカ砲発射シーンの伏線にもなっています。

韓国では上映キャンセル

上のインターチェンジで車を乗り捨てた後、主人公D-FENSは電話するための小銭への両替が必要なため、韓国系移民が経営する商店(コンビニ)に立ち寄ります。

この映画はロサンゼルスのLynwood(リンウッド)でロケを開始したのですが、撮影開始時(1992年4月末から5月初頭にかけて)、ちょうどその場所でロサンゼルス暴動(ロス暴動/Los Angeles Riots, LA Uprising)が発生し、撮影延期、変更等を余儀なくされました。

そのロサンゼルス暴動の影響もあってか、韓国系の移民が経営する商店での「ひと悶着」シーンも取り入れられています。

そのため、韓国ではこの映画の上映がキャンセルされました。

今時の映画では絶対にご法度な人種差別的なセリフも巷では話題になっており、この映画の見所の1つとなっています。

ちなみにその韓国系店主のお店のロケ地があった場所はこちら。


映画の中でもオンボロな外見でしたが、この建物はすでに取り壊され、現在はMadison West Park(マディソン・ウェスト・パーク)という公園として整備されてしまっています。この辺りは現実世界でもあまり治安はよくない地域なので、この「公園化」は、おそらくこの区画の治安改善目的の都市計画の一環なのではないかと見られます。

ギャングと出くわした荒地

韓国系移民の商店(コンビニ)で奪った棍棒が、ギャング相手に大活躍した空き地のロケ地はこちら。終始背後に映っているロサンゼルスの摩天楼が印象的な場所です。


映画の中では、「ギャング・テリトリー」の廃れた空き地でしたが、現在ではVista Hermosa Natural Park(ビスタ・ハーモーサ・ナチュラル・パーク)として綺麗に整備されています。

しかし、この公園の一角にある高台(上記座標の位置)からは、映画と同じロサンゼルスの摩天楼を現在でも臨むことができます。

このエピソードは、アメリカにおけるヒスパニック系・ラテン系の移民増加問題、治安悪化などがテーマになっているようです。

ミリタリーショップ

歩き回って靴に穴が開いたので、主人公D-FENSが靴を買うために立ち寄ったアーミーグッズを売っているお店のロケ地はこちら。


このアーミーグッズ店の店長が人種差別主義(白人至上主義)者で、アメリカが抱える人種差別や性的マイノリティへの差別問題が、この店の1件では描かれています。
フォーリングダウンとターミネーター共通点
ちなみにこのロケ地となったお店ですが、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」でも登場していました。
→詳細:壁画と坂が印象的なSurplus Value Center

バズーカ砲の道路工事現場

主人公D-FENSが、バズーカ砲(M72 LAW)をぶっ放した道路工事現場のロケ地はこちら。


ここは(今でこそ道路工事はしていませんが)30年が経つ今も、当時とあまり変わらない雰囲気を保っています。

何の特徴もないロケ地ではありますが、このフリーウェイ110号線と105号線が交差するインターチェンジ(ジャンクション)付近は、映画のロケ地としては頻出で、例えばキアヌ・リーヴス主演の映画『スピード』(Speed、1994年)や映画『ラ・ラ・ランド』(La La Land、2016年)などにも登場します。

最後の桟橋

エンディングの桟橋のシーンは、有名なベニス・ビーチにある、ベニス・フィッシング・ピアで撮影されていました。


尚、この桟橋の近くには、宿泊できるスタローン・コブラの部屋があります。

まとめ

この映画の各シーンをピックアップしていくと、

  • 猛暑(地球温暖化?)
  • 解雇・真面目に働くだけでは評価されないサラリーマンの悲哀
  • 人種差別・性的マイノリティへの差別
  • 移民増加による問題・治安悪化
  • 家族関係(離婚・夫婦問題)
  • 年度末の予算消化のための道路工事と渋滞
  • ファストフード店の杓子定規なサービス
  • 格差社会

などがテーマ別に、時に折り重なりながら描かれていることがわかります。

主人公D-FENSは決して「ヒーロー」ではありませんが、痛烈な社会風刺や、観客に変わって社会の不条理に鉄拳を下す(お仕置きする)的な要素もあり、観ていて共感したり、どこかスッキリするところもあります。

また、だらだらと犯罪が連なっていく風は、クエンティン・タランティーノ調(パルプフィクション調)でもあります。

人間の本質的なところを描いている映画なので、今後もこの映画と類似の事件は、現実世界でも起こり続けることでしょう。

猛暑が来るたびに、この映画のことを思い出してしまいます。

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