すべての映画のポスターに共通する、というわけではありませんが、多くの映画のポスターには、ある共通する「ヒット祈願の法則」が込められたデザインになっているそうです。
水野晴郎さん いわく
以前、映画「E.T.」の月はなぜ大きいのかにも書きましたが、以前、「いやぁ、映画って本当にいいもんですね。」で有名な映画評論家(映画解説者)の水野晴郎氏が、飛行物体をポスターなどの宣伝商材の中で飛ばせば、その映画はヒットする、というジンクスがある(できれば右肩上がりに飛んでいる風がよい)。だから映画のポスターでは、とにかく飛行機やヘリコプターを紙面のどこかに登場させるようになっている。
という主旨の内容で、映画のポスターのデザイン(仕組み)の裏話をされていました。
確か30年以上前、水野晴郎さんと山田邦子さんが2人でやりとりしながら、たくさんの映画(主に洋画)の見所を紹介していく2時間もののスペシャル番組(民放)の中での発言だったと記憶しています。
上昇・右肩上がりのイメージ
映画のポスターの中で、飛行物体などをグイーンと勢いよく飛ばす、右肩上がりの角度にしたデザインをポスターに取り入れれば、その映画はヒットする、というジンクスがあり、ヒット祈願も込めて、そのようなデザインになっている映画のポスターが多い、とのことです。確かに昔(特に2000年以前)の映画のポスターには、そうした特徴が確認できるものが多いように感じます。
スターウォーズ
例えば、昔からある映画で、一番わかりやすい例として、スターウォーズ・シリーズがあります。スターウォーズは、1作品につき、様々なデザインのポスターが存在しているので、100%すべてのポスターがそう、というわけではありませんが、ほぼすべてのスターウォーズ作品のポスターで、飛行物体が勢いよく飛んでいます。そしてライトセーバーの角度(斜め上)も重要な要素になっているように感じます。『帝国の逆襲』もよく見ると、なぜかタイトル・ロゴも右斜め上角度になっています。
比較的最近のスターウォーズのシリーズ(エピソード7~9)のポスターも、旧作とジンクスを踏襲したデザインになっています。
但し、もし水野晴郎さんがこのポスターデザインを監修していたら、フィン(ジョン・ボイエガ)のライトセーバーの「角度がよくない」として修正していたかもしれません。
E.T.
長らく興行収入1位の座に君臨してた映画『E.T.』のポスターやビデオパッケージなども、宇宙人を前面に出すことななく、その代わりにしっかり飛行物体(自転車)が右肩上がりで飛んでいくようなデザインになっており、縁起を担いでいます。ダイ・ハード
1980年代から長らく続いていた、ブルース・ウィリスのダイ・ハード・シリーズのポスターも、以下の通りです。- ダイ・ハード1・・・ビルの上にヘリコプター
- ダイ・ハード2・・・飛行機(飛行場が舞台なので当たり前といえば当たり前)
- ダイ・ハード3・・・BD版などでは背後にヘリコプターあり
- ダイ・ハード4・・・背後にヘリコプター
- ダイ・ハード5・・・なし。だからコケた?
インディ・ジョーンズ
ハリソン・フォード主演のインディ・ジョーンズ・シリーズも作品にもよりますが、「最後の聖戦」などにインディの背後に飛行機が豪快に飛んでいます。総まとめ的な意味合いがある、「インディ・ジョーンズ 4ムービーコレクション 40th アニバーサリー・エディション」のBlu-rayパッケージでも、インディの背後に、しっかり飛行機が登場しています。
ムチも跳ね上がってますし、そもそも「インディ・ジョーンズ」というタイトルのロゴ自体が右肩上がり仕様になっています。
この辺りは「バックトゥザフューチャー」のロゴも同じで、右肩上がりで奥行きと勢いを感じさせます。
スポーツブランドのNIKE(ナイキ)やミズノ、通販のAmazon(アマゾン)など、企業やブランドのロゴも右肩上がりになっているものが多いのは偶然ではなく、一定の意図があるのでしょう。
007の手
冒頭の水野晴郎さんは、「トリビアの泉」でも同じようなことを言っています。「007」のポスターの手は水野晴郎のだった
https://www.youtube.com/watch?v=9RdRyGj_heM
『007/危機一発』(From Russia with Love/再上映時の邦題は『ロシアより愛をこめて』、1963年)のポスターの銃を持った手は、ショーン・コネリーの手ではなく水野晴郎さんの手に差し替えられていることは有名ですが、その時の銃の角度も「ヒット祈願」で右肩上がりを意識しているそうです。
ちなみに、この時差し替えられたのは「手」だけでなく、同映画の初期の宣伝商材でジェームズ・ボンドが持っていた銃は本編では登場しないWalther LP53(ワルサー LP53)だったのですが、再上映時のポスターでは、サプレッサー(サイレンサー)付きのWalther PPK(ワルサーPPK)に差し替えられています。
現在では、アート的な、デザイン重視の映画のポスターが多くなってきていますが、昔の映画には、ゲン担ぎ(ジンクス・ヒット祈願)が優先されたデザインになっているところがおもしろいところです。
最近の映画の宣伝商材でも、いまだに昔のジンクスが踏襲されているものを見かけるので、映画のポスターやチラシ、DVD/BDのパッケージなどの片隅に、飛行物体や例の角度を探してみるのも映画の楽しみの1つです。