映画「E.T.」の月はなぜ大きいのか

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映画E.T.の月が大きい理由

「中秋の名月」など、月を見るたびに、映画『E.T.』を思い出します。

1982年公開の映画『E.T.』(イーティー/原題:The Extra-Terrestrial)は、2022年で40周年を迎えました。

その『E.T.』を初めて観た時、「アメリカの月は大きいんだなぁ。」と感じさせられたものです。

しかし、その後アメリカに住んでみると、月の大きさは特に大きいというわけではなく、日本と同じ、「普通」でした。強いて違いをあげるならば、夜10時くらいまで明るい(日が落ちない)シーズンがある点ぐらいです。

ではなぜ、映画E.T.の中の月は大きかったのでしょうか。

映画「E.T.」の月が大きい理由

まず映画『E.T.』を象徴する、このOver The Moon(オーバー・ザ・ムーン)のシーンは、特撮(模型や合成)なので、実写ではありません。もちろん、このように空飛ぶ自転車は存在しません。

しかし、特撮ではない現実世界でも、この『E.T.』のシーンに似たような映像を見かけることはあります。

例えば下のような、月とジャンボジェット機やヘリコプターの写真です。
月の大きさの錯覚

映画「E.T.」のような大きな月の作り方

ちなみに月が大きく見えることは Moon Illusion(ムーン・イリュージョン/月の錯視)とも言われています。

映画「E.T.」のような大きな月を「作る」ポイントは以下の通りです。「遠近法」を利用した方法です。

ポイント

  1. 月を大きく見せるには、相対的に人を小さくすればよい。
  2. 人を小さくするには、人を遠くに置けばよい。
  3. 遠くに置いて小さくなった人の背後に、月をかぶせて切り取れば、大きな月の図が完成する。

月を大きく見せるのに必要な物

  • 月(満月が理想)
  • 人および距離(遠くにいる人または物)
  • 望遠レンズ付き撮影機材

映画ETの月の撮影方法

レシピ

  1. 月の手前に
  2. 遠くの高台(ビル屋上や土手など)にいる、(小さく見える)人をかぶせて
  3. それらを遠くから望遠レンズで撮影する

という遠近法でE.T.のような「絵」が完成します。

手前の「木」の効果

E.T.の場合、さらに「手前にある木」が、月の巨大感(遠近法)に拍車をかけています。

あの木は街路樹のような普通サイズの木に見えますが、実際は、北米の山々の森林特有の、大きくて高い木です。そのため、遠くに存在しているにもかかわらず、すぐ手前(近く)に木があるような錯覚を起こし、つまり大きな月もすぐ近くにあるように見えてしまうのです。

その他『E.T.』の見所・解説

映画『E.T.』は、ストーリー以外にも面白い点がたくさんあります。

アメリカの新興住宅地の変遷が学べるエリオットの家

映画の中で登場したエリオットの家は、今も現存しています。

E.T. エリオットの家のロケ地


映画の中では、通り(Lonzo St)から、家屋全体が見渡せるほど見通しはよかったですが、40年経過した現在では、家の周囲に木々が生い茂り、家屋はほとんど見えなくなってきています。

おニューの新興住宅地が、どのように変遷していくのか?その移り変わり具合を映画『E.T.』からは学ぶことができます。

また、映画『E.T.』では、宅地開発中の新興住宅地の空き地や、開拓中の丘陵部の段差をうまく利用して、アクションを繰り広げています。新興住宅地の空き地や宅地開発中の丘陵部を、これだけうまく活用した映画は他にはないのではないでしょうか。

40周年記念で「E.T.公園」誕生か

E.T.が生き返り、エリオットの家からバン(車)で逃亡。その後、E.T.がバン(車)から自転車に乗り換えた公園は、現在も存在しています。

E.T.公園


映画の中にも映っていた、ムカデみたいな遊具が印象的です。映画当時は見通しのよい360度開けた印象の公園でしたが、40年経過した今は木々が成長し、少し鬱蒼としているように感じられます。

この公園は、エリオットの家から直線距離でも22kmはあり、映画の中では それなりの距離を移動していたことになります。

エリオットとマイケルの自転車を、仲間がここまで持ってくるのは大変だったのではないでしょうか。

尚、映画「E.T.」40周年を記念して、この公園の名称を、"E.T. Park"(E.T.公園)に正式に名称変更しよう、という動きがあるようです。

'E.T. Park' may soon be a reality after Porter Ranch endorses a move to rename one of their parks(2022年1月29日)
https://abc7.com/porter-ranch-et-park-rename-steven-spielberg-movie/11518643/

日本でのハロウィンの認知度を上げた映画

映画『E.T.』では、北米の風物詩であるハロウィンのイベントを利用して、E.T.が外に繰り出すシーンがあり、映画『E.T.』の産物(功績)の1つに、ハロウィンの日本での認知度を上げたことが挙げられます。

『E.T.』のせいで、日本でハロウィンが爆発的に広がった・・・というわけではありませんが、日本において、1970年代→1980年代→1990年代→2000年代・・・と徐々にハロウィンが広まっていった過程における、ハロウィン広報「1980年代」担当が、映画『E.T.』だったと言えます。

「地球」と「スターウォーズの世界」を初リンクした映画

そんなE.T.でのハロウィンのシーンですが、映画『スター・ウォーズ』のヨーダの格好した仮装に、E.T.が反応するシーンがあります。

また、エリオットの家には、『スター・ウォーズ』のフィギュアがたくさん置いてありました。

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』では、E.T.(の種族)が登場します。つまり、E.T.は『スター・ウォーズ』の世界の生物です。

そしてE.T.が披露した不思議なパワーは、『スター・ウォーズ』のフォースそのものです。

映画『E.T.』と映画『スター・ウォーズ』シリーズは、切っても切れない関係にあるようです。

両映画を見比べてみると、E.T.は、「スターウォーズの世界」と「地球」をつなげた唯一の存在であり、かつ「初めて地球でフォースを使った生物」と言えるのです。
→詳細:E.T.はフォースの使い手でヨーダと同世界の生物

E.T.から派生?「BMXアドベンチャー」

ハロウィンよりも映画『E.T.』で人気が爆発したのが、BMX(自転車)でした。

E.T.の影響で、BMXが世界的ブームになり、翌年1983年には『BMXアドベンチャー』(原題:BMX BANDITS)というオーストラリア映画もできて、日本でも公開されました。若き日のニコール・キッドマンがBMXを乗り回すという(ただそれだけの)青春アクション映画で、映画『ネバーエンディング・ストーリー』と同時上映でした。
→関連記事:カナダ・バンクーバー上空を竜が飛ぶ映画「ネバーエンディング・ストーリー」

同時上映というシステムでなければ、『BMXアドベンチャー』という映画は、おそらく一生、観ることはなかった可能性があり、知らない間にニコール・キッドマンを目にすることができていたのは幸運でした。
同じく、何かのメジャー映画の同時上映で、たまたまリバー・フェニックスイーサン・ホークの子供時代をリアルタイムで映画『エクスプロラーズ』(Explorers)で目にすることができており、同時上映というシステムは偉大だったと感じます。

E.T.は「日の丸飛行隊」だった

そんな大ブームとなったBMXですが、映画『E.T.』で少年たちが乗っていたBMXは日本のメーカー製
KUWAHARA-bike E.T.自転車
https://www.kuwahara-bike.com/

日本のメーカー「KUWAHARA」が作ったもので、車体にはKUWAHARAのロゴと、「日の丸」があしらわれており、劇中のエリオットの自転車の映像を拡大してみると、「日の丸」が確認できます。

つまり、E.T.において、エリオットほか自転車で空飛ぶ少年たちは「日の丸飛行隊」だった、ということになります。

そんなKUWAHARAのBMXですが、公式復刻モデル「Kuwahara・E.T.40」が発売されるそうです。

E.T.40周年記念、あのクワハラからBMX「E.T.40」がこの秋に発売|Kuwahara
2022年04月22日
https://funq.jp/bicycle-club/article/795285/

「E.T.」の名シーンに「日本製の自転車」が使われた理由って?
https://tabi-labo.com/291199/amekaji-et-madeinjapan

「アタリ」だけどハズレた迷作E.T.ゲーム

E.T.関連のものが、すべて「当たり」だったわけではありません。

アメリカのアタリ社(Atari)が作ったE.T.のTVゲームソフトは「ハズレ」に終わりました。

あまりに大量に売れ残ってしまったこのアタリ2600-2800用のE.T.のTVゲームソフト(カセット)は、製造工場の敷地に埋められてしまいました。

歴代クソゲー1位に選出されたE.T.!アタリは倒産!都市伝説が生まれた!
https://middle-edge.jp/articles/stiQC

しかし、あまりに「クソゲー」過ぎたため、評価は1周まわって、2周まわって、3周まわって・・・ジワジワと都市伝説化していき・・・30周した頃(E.T.30周年頃)の2013年に、この幻のクソゲーを求めて、ついに工場跡地を掘り起こすプロジェクトが発足。地中から大量のE.T.のTVゲームソフトが掘り起こされたのでした。

そのドキュメンタリー映画も存在します。

Atari 2600版“E.T.”の伝説を追ったドキュメンタリー映画「Atari: Game Over」 https://www.youtube.com/watch?v=08p2gdXoIxQ

詳細&関連記事

E.T.の月が大きかった理由

以前、「いやぁ、映画って本当にいいもんですね。」で有名な映画評論家(映画解説者)の水野晴郎氏が、

飛行物体をポスターなどの宣伝商材の中で飛ばせば、その映画はヒットする、というジンクスがある(できれば右肩上がりに飛んでいる風がよい)。だから映画のポスターでは、とにかく飛行機やヘリコプターを紙面のどこかに登場させるようになっている。

という主旨の内容で、映画のポスターのデザイン(仕組み)の裏話をされていました。

この映画『E.T.』のポスターでも、しっかりと飛行物体(自転車)が右肩上がりで飛んでおり、縁起を担いでいます。

しかも、この当時、ふつうは宇宙人モノなら、宇宙船をポスターに持ってくるところ、E.T.のポスターや宣伝商材では宇宙船をあえて封印し、大きな月で宇宙を感じさせつつ、少年と自転車で「心の交流・絆・ぬくもり」に重点を置く表現・・・という秀逸なデザインとなっています。

映画『E.T.』と言えば、
  • 月と自転車
  • 光る指タッチ
・・・と「ETといえばこれ」というインパクト作りにも大成功し、大ヒットしたのは、技術的にも心象的にも、「E.T.の月が大きいから」でした。

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