何年もかかってようやく公開されたジェームズ・キャメロンの大作映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(Avatar: The Way of Water、WoW、2022年)ですが、日本での評価・評判はイマイチです。
『アバター2』の日本での評価と興行収入
以下、あくまで途中経過ではありますが・・・Yahoo!映画(ヤフー映画)の評価では、(当記事アップ時現在)5点満点中の3.6点。微妙な点数になっています。先日まで3.7だったので現在進行形で下がりつつあるようです。
そもそも点数どうこう以前に、「レビューの内容」もあまりよくありません(後述)。
Yahoo!映画(ヤフー映画)アバター:ウェイ・オブ・ウォーター AVATAR: THE WAY OF WATER
https://movies.yahoo.co.jp/movie/382617/
興行収入のほうでは、
『トップガン マーヴェリック』は米国市場で特に強い人気を博し、2022年公開作品としては国内1位記録となる7億1,832万ドルの興収を挙げた。『ウェイ・オブ・ウォーター』は4億4,694万ドルで劣るが、海外市場では好成績。上位国では、中国で1億6,200万ドル、フランスで9,372万ドル、韓国で7,608万ドル、インドで5,074万ドルの累計興収となっている。日本の記録は1,800万ドル。
https://theriver.jp/avatar-wow-bo-3rd/
と、日本は他国に比べて低くなっています。
日本での『アバター2:ウェイ・オブ・ウォーター』の評価・評判が低いのはなぜでしょうか。
ターミネーター・シリーズからの学びもふまえ、思い当たるフシを以下に述べていきます。
理由1.日本人にとって新鮮味がない(内容がない)
前述のように、日本でのYahoo!映画その他、『アバター2』のレビューを拝見するに、高評価者は「映像がすごい・きれい」というだけです。他に褒めるところがないのか、内容についての評価はあまり触れられていないものが多いです。あらすじ自体はありふれた内容なので、どうやらあまり心に残らなかったようです。日本はアニメ大国
なぜ日本人の心にあまり響かなかったか?というと、日本はアニメ大国でこの手のものには目が肥えている(食傷気味)、というのがあります。『アバター2』のどの場面を観ても、「何かどこかで見たことあるような・・・」絵が多いのです。
「何かどこかで見た」というのは、日本のアニメです。実際、『アバター2』のレビューでは、「ナウシカに似てる」など宮崎駿アニメの各タイトルを挙げている日本人のレビューがたくさんあります。
これが実写ならまだよかったのですが、『アバター2』はほぼフルCG(VFX)で、キャラクターも非人間でアニメ顔・・・と、アバター・シリーズはむしろアニメのカテゴリーに属する映画(実写みたいなアニメ映画)となっています。
これでは実写映画で日本より秀でているハリウッド映画の優位性がまるでありません。そうなるとアニメ大国であり、アニメが「ホーム」である日本では、あまり新鮮味がないのが正直なところです。アニメが「アウェイ」な海外ではアニメ的『アバター』シリーズは新鮮に映るかもしれませんが、海外と日本の評価の差の大きな原因の1つは、ここにあるように感じます。
内容もありきたりでワンパターン
映像だけでなく、内容もまた然り、です。日本のアニメでは、古くから環境問題や自然への寄り添い(自然とともに生きる神道思想)なども多く描かれており、内容的にも『アバター2』には新鮮さを感じない日本人は多かったようです。流行りのポリコレ詰め合わせ幕の内弁当
また、最近のハリウッド映画はポリコレのオンパレードでワンパターンです。ポリコレ自体は悪ではありませんが、ポリコレの度が過ぎると失敗に終わる・・・という『ターミネーター・ニューフェイト』の大失敗から、ジェームズ・キャメロンはあまり学べていなかったようです。→関連記事:老化ターミネーター(お爺ちゃん)は失敗-続編消滅(ジェームズ・キャメロン談)
中国の検閲(中国媚び)
また、中国(CHINA)公開を念頭に製作されたハリウッド映画は、かなりワンパターンになってしまいます。中国で公開してもらうためには、中国の検閲に則した内容に改変(媚び中)しなければならないからです。自由な表現の放棄、民主主義の放棄は必須です。具体的に言うと、例えば人民蜂起を彷彿・喚起させるシーンのカット・抑制、暴力(戦闘)シーンの軽減など。→詳細:ターミネーター映画大失敗の致命的な原因
そのため、「中国で公開されたという事実」イコール「あまりおもしろくない映画である可能性が高い」ことも示唆しており、中国での公開の有無が、事前に「おもしろい映画か否か」をはかる良い目安にもなっています。
『アバター2』は、『阿凡达:水之道』というタイトルで、中国でも公開され、中国での興行収入に大きく依存しています。中国では公開される外国映画が制限されているため、人々は釣り堀の中の飢えた魚状態で、珍しさから公開された数少ない外国映画に群がり(入れ食い状態)、内容が低品質でも、そこそこの興行収入を稼ぐことができます。そのような打算的な市場目的に作られた結果、ハリウッド映画の低品質化・他国での客離れを招きつつあります。
理由2.日本の少子高齢化
少子高齢化が進む日本では、『アバター2』はいろんな意味でしんどい映画です。時間(集中力とトイレ)
まず上映時間3時間超というのは、気軽に観れる映画ではありません。この『アバター2』の上映時間192分の間に、シュワちゃんの映画『コマンドー』92分と、スタローンの映画『コブラ』88分の映画2本分を完全鑑賞できる上に12分も余ってしまう長さです。
『アバター2』の評判・感想(レビュー)を観ても、「あっという間に時間が過ぎた」と言う人もいることはいますが、「さすがに長すぎた。」「途中で挫折した。」と上映時間に苦言苦言を呈する人もかなりの数、確認できます。
中高年の割合が観客層に多い日本では、トイレが近くなる冬の寒い時期に3時間、イスに拘束される、というのはなかなかしんどいものがあります。もちろん、3時間持つ人は多いですが、しかし尿がたまっていくと、無意識のうちに集中力は削がれていき、結果的に生理現象は、映画に対する潜在意識下の評価にも影響を与えます。
そして『アバター1』(2009年)から世の中、大きく変わってしまった点は、スマホの急速な普及です。今の世の中、3時間もスマホから隔離されると思考が乱れるスマホ依存者も多く、3時間も映画に集中力が続かない人が若者を中心に増加。
少しでも何かあったら「何でもかんでもすぐSNSで共有したい病」の人が多く、スマホ脳な人たちを3時間もスマホから隔離するのは至難の業というものです。
上映時間が長い場合、むしろ「上映中、スマホ使用OK!自由にスマホでスクリーンを撮影してSNSでシェアしてください!」という斬新な上映スタイルにでもしないと、今時の映画はヒットしないのかもしれません。
これだけ面白く刺激的なことにあふれ、趣味趣向が多様化している日本で、1日24時間のうち3時間以上も拘束する、となると、それなりの覚悟を持った人に限られ、上映時間の段階で、『アバター2』は観る人を選ぶ映画であり、スマホが逆風になった映画と言えます。
視力
これもスマホに関係しますが、高齢化に加え、若年層であってもスマホの影響もあり、現在は日本は視力が悪い人がかなり多く、3Dでの視聴は適さなくなってきています。『アバター2』のレビューを観ても、「乱視なのできつかった。」「老眼なのでぼやけてわけわからなかった。」と書かれているものが結構、ありました。短時間ならまだしも、3時間以上の凝視はかなりきついようです。
さらにはジェームズ・キャメロン映画といえば、キャメロン・ブルー。『ターミネーター2』や『タイタニック』などに象徴されるように、全体的に青が多用されていることで有名です(特に夜のシーンが分かりやすく、月明かりに照らされたような演出になっているのが特徴です)。
しかしこの『アバター』シリーズのように、これだけ青がしつこ過ぎると、ふだんスマホやPCなど液晶ディスプレイから発せられているブルーライトを大量に浴びせられているようで、目に害がある感じがして嫌悪感を抱かざるをえません。
『アバター2』は青色がしつこ過ぎたところにも難があります。キャメロンブルーは『T2』や『タイタニック』の頃のがちょうどよかったのではないでしょうか。
生理的に合わない
あと根本的なところですが、前述の「青」すぎる点だけでなく、『アバター』シリーズの、あの独特な目が離れたキャラクターの造形が「生理的に合わない。」というレビューも散見します。特に中高年にはあの顔形は合わない人が多いようで、これも少子高齢化が進んでいる日本には向いていないキャラクター造形だったといえるでしょう。
また、あのキャラクター造形が「ディズニーとの違いがわからない」「ミュージカル『キャッツ』などの既視感しかなく新鮮味がない」という意見もあるようです。
理由3.反日描写
これはもうかなり話題になっているので、あえてここで触れる必要もなく、ストーリー詳細のネタバレは避けますが、一応、まとめておきます。「日浦」日の丸とアジア人
劇中、捕鯨船に搭載されている銛発射機やそのロケット弾には「日浦」、そして機関銃には「鯨」とわざわざ漢字が印字されていました。また、その「日浦」には日の丸もあしらわれていました。
「浦」とは、湾、入江、英語でいうとcove(コーヴ)です。cove(コーヴ)と言えば、日本のイルカ漁を批判する2009年の映画『ザ・コーヴ』(The Cove)です。
そしてアジア人の描写。
これらの描写に関して、「それ以上にアメリカの捕鯨の歴史を痛烈批判していたことが印象的」と美談にすり替えようとしているサイトもありますが、日の丸に「日浦」なので、明らかに日本を名指しでの批判描写がなされていました。
ポリコレは突き詰める(度が過ぎる)と逆に差別になる、分断を生む、の典型例が『アバター2』だったと言えるでしょう。
興行収入の上位国にみられる共通点
そしておもしろいことに、前述もしましたが、『アバター2』の興行収入上位国は、反日思想が根付いている国ないし反捕鯨な国となっています。- 中国 1億6,200万ドル
- フランス 9,372万ドル
- 韓国 7,608万ドル
中国、韓国は周知なので説明は割愛しますが、フランスについては、
シー・シェパード創設者 今夏にフランスへ逃亡 ICPO手配 反捕鯨国、逮捕を拒否か
https://www.sankei.com/article/20141212-EIAASWWXGBJGTMCGCZ7IGRZCRM/
にもあるように、南極海の調査捕鯨妨害をめぐり、国際刑事警察機構(ICPO)が国際指名手配している反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の創設者は、捕鯨問題をめぐり日本と対立するフランスへ逃亡。フランスは事実上、身柄拘束を拒否・・・な国です。
『アバター2』は鯨で稼ぐ映画である、とも言えます。
まとめ
以上から、日本での評価・評判と興行収入がイマイチなのは当然の結果と言えます。日本では、この映画で比喩されている背景に鈍感な人、ただ美しければ感極まる人にしかウケなかった映画だったということです。ネット上では、「アバター2 いつまで」「アバター2 続編」「アバター 何作」などのキーワードで検索している人が多いようです。
「アバター2」がいつまで公開されているか?といえば、日本での評価・評判がイマイチなことと、上映時間が長いことで回転率も見込めないことから、ロングランにはならないでしょう。
また、アバターの続編が何作つくられるか?については、現在のところ、アバター・シリーズは、アバター3(2024年)、 アバター4(2026年)、 アバター5(2028年)・・・の計5作が予定されています。
しかし、ジェームズ・キャメロンは、『アバター4』以降は監督を譲る可能性もあるとのことで、実質、「キャメロンが力を入れた真正アバター」は1,2,3の計3作だけ、ということになりそうです。
監督を譲る、ということは、キャメロン自身、3作が限界、4作目以降は厳しい(ヒットしない)ということを薄々と勘づいているのかもしれません。すでにこの『アバター2』の段階で、陰りが見えつつあります。
ターミネーター・シリーズにおいても、『ターミネーター・ニューフェイト』については、監督することは避けています。『ニューフェイト』製作段階から、「コケたら続編は作らないよ。」と予め布石を打っており、コケる可能性を認識していたのでしょう。
→詳細:ターミネーター:ニュー・フェイト続編中止の理由
そんな日本の捕鯨批判の反日的『アバター2』ですが、キャスト来日時に、イルカショーで出迎えるという何とも皮肉の効いた「おもてなし」を提供したことが印象的です。日本側のスタッフは、意図していなかったと思われますが、海外では批判を浴びています。
次回『アバター3』キャスト&ジェームズ・キャメロンご来日時は、イルカショーに加え、「鯨料理」で手厚く「おもてなし」するのがよいかもしれません。