T3のケイトとT4のケイトが同一人物 というのは錯覚。T3とT4は続編・・・というのも錯覚です。
ちなみに「T4はT3の続編である」とは公式には発表されたこともありません。
ターミネーターの2人の「ケイト」
ターミネーターの以下の2作品・・・- 『ターミネーター3』(Terminator 3: Rise of the Machines、T3)2003年
- 『ターミネーター4』(Terminator Salvation、T4 )2009年
に「ケイト」という女性キャラクターが登場します。正式なキャラクター名は、
- T3・・・Katherine"Kate" Brewster(キャサリン/ケイト・ブリュースター)・・・獣医
- T4・・・Kate Connor(ケイト・コナー)・・・医師(?)
です。演じるのは、
- T3・・・Kate Brewster(ケイト・ブリュースター)役・・・Claire Danes(クレア・デインズ)
- T4・・・Kate Connor(ケイト・コナー)役・・・Bryce Dallas Howard(ブライス・ダラス・ハワード)
です。
T4のケイトはコナーであり、ブリュースターではない
まず、T4の「ケイト」の正式なキャラクター名は Kate Connor(ケイト・コナー)です。実は T3の Kate Brewster(ケイト・ブリュースター)またはKatherine Brewster(キャサリン・ブリュースター)という名称ではありません。T4のエンド・クレジット(エンドロール)もKate Connorとなっています。↓ もちろん、ケイト・ブリュースターがジョン・コナーと結婚したから、ケイト・コナーになった・・・との解釈(錯覚/思い込み)はできなくもありません。
しかし、「ケイト」という名前は一致はしているものの、T3の「ケイト・ブリュースター」とこの「ケイト・コナー」が同一人物なのかどうか?は厳密にはわからない仕様になっています。
T3でも「ケイト・コナー」と言っていない
ちなみに、T3でもT-850を送ったのは、キャサリン(ケイト)・ブリュースターであり、ケイト・コナーとは言っていません。T-850: It was Katherine Brewster who reprogrammed me and sent me back through the time displacement field.
T-850: 「私を再プログラムし、タイムマシーンで私を送ったのは、キャサリン・ブリュースターだ。」
T4にはT3固有のキャラクターは1つも出ていない
実は、T4には「T3固有のキャラクター」は1つも(一人も)出てきません。T3固有のキャラクター→T4に登場するか【確認】
- T3のT-850→T4には出てきません。
- T3のT-X→T4には出てきません。
- T3のケイト・ブリュースター→T4には出てきません。「ケイト・コナー」というキャラクターは登場します。
- T3のT-1(タンク型ターミネーター)→T4には登場しません。異なるT-100はT4には出てきますが、T-1と違います。しかもT-100のシーンはT4本編ではカットされました。
→詳細:T-1とT-100の違い【ターミネーター展】
以上のように、T3固有のキャラクターは、T4には1つも登場しません。
ちなみにT3に出てきたその他のキャラクター・・・例えばジョン・コナーやサラ・コナー、シルバーマン博士、ハンターキラー(飛行体)などはT3固有ではなく、T1,T2デフォルトのキャラクターです。
T4がT3の続編ではない理由
なぜこうなっているのか?というと、大人の事情(法的・権利関係)と監督の意向によるためです。権利者が変わりT3続編は消滅
T3(2003年)の後、一度2005年にT3と同じキャスト(ニック・スタール)とケイト(クレア・デインズ)でT3の続編の企画が持ち上がりました。しかし、2007年5月にターミネーター権利がハルシオン社に移り、T3の続編企画は消滅。ハルシオン社はT4(サルベーション)発の"new trilogy"(新三部作)の構想を立てました。あくまで最初のオリジナル2作(T1とT2)をベースにした新三部作です。そのT4の当初のタイトルはTerminator Salvation: The Future Begins(「ターミネーター・サルベーション:新しい未来が始まる」)でした。
(→参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Terminator_Salvation#Production)
T4は「T3の権利」を買っていない
以上のように、権利者が変わってしまい、Tターミネーターの権利(オリジナルのT1とT2の権利)から、T3の権利だけが切り離されてしまいました。結果、T4は「T3の権利」を買っていない(持っていない)ということになりました。「T3の権利」とは、T3の設定を引き継いだり、T3に出てきたT3オリジナルのキャラクターを使用する権利のことです。
ターミネーターの権利はその作品ごとに、「作品全体(タイトル)」およびそれぞれの作品に出てきたキャラクター毎に、細々と定められています。
ターミネーターの権利は細分化され複雑
以前もアーノルド・シュワルツェネッガーが、ターミネーター権利の複雑性をうかがわせる、以下のような発言をしていました。Q1. 12年振りに復活した訳だが、なぜ12年もかかったの?
【アーノルド・シュワルツェネッガー】A. 権利問題がすごく複雑だったんだ。『ターミネーター』の権利は、50%はAさんが持ち、50%はBさんが持ってる、さらに『ターミネーター1』の権利はこの人が持ってて、『ターミネーター2』の権利はこの人が持ってるといったぐあいにとっても複雑だったんだ。それをスッキリさせてやっと出来たんだよ。
https://www.unitedcinemas.jp/catchup/t3/usj.html
T1、T2だけでも上記のように細分化されており、同じようにT3もT3でさらに権利は細分化されています。そのため、「T3の権利」を持っていなければ、T4でT3の設定やキャラクターを使用することはできないので、T4にT3の設定やキャラクターは登場しません。よって、正式には「ケイト・コナー」は「ケイト・ブリュースター」ではない、ということになります。
T4が「T3の権利」を買わなかった理由
なぜ「T3の権利」をT4は買わなかったか、というと、前述の通り、- その必要がなかった(監督の意向。オリジナルT1,T2の権利だけで十分だった。)
- 権利料が高いのでコスト削減
などの理由によります。
T4はあくまでT1とT2がベース
McG監督いわく、Hats off to the third movie, but we paid attention to the first two picturesと明言しており、「T4はあくまでT1とT2を原作とした作品である」というスタンスなので、T3の権利を買う必要がなかったのです。よって、T3の続編という観点からはT4は作られていません。
「T3には敬意を表するが、あくまで我々はT1とT2に注意を払っている。」 https://www.imdb.com/title/tt0438488/faq
そのため、原題も「Terminator Salvation」であり、3の次の4というナンバリングはしてありません。「ターミネーター4」というのは、日本の会社が日本公開用に勝手に付けたナンバリングであり、製作者(マックG監督)の意図に反しています。
T3は無視してコスト削減
映画製作者にとって、製作費削減は喫緊の課題です。「T3の権利」を取得し、T3に出てきたT3固有のキャラクターを使用するには、T1とT2とは別に高額な使用料を払わなければなりません。T3を無視すること(T3の権利は買わないこと)は大幅なコストカットにつながります。
T3とT4の矛盾や違い
以上から、例えば、T4では、- 「ケイト・ブリュースター」というT3固有のキャラクターは登場しません(使うことができません)
- T-1(タンク型ターミネーター)も登場しません(T-100は登場したが本編ではカット)
- 「審判の日」も曖昧にしてごまかしています
→詳細:ターミネーター4の審判の日は2011年(T3と矛盾)
また、T3とT4では、
- 上述「審判の日」の矛盾
- サラ・コナーのカセットテープの矛盾・・・T3ではジョン・コナーはカセットテープを持っていないのにT4では登場する。
- サラ・コナーの写真の矛盾・・・T3ではサラ・コナーの写真が登場しないが、T4のエンディング(未公開シーン)ではサラ・コナーの写真が登場する。
→関連記事:ターミネーター4どのエンディングが好き?
Wikipediaの間違い
尚、Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/ターミネーター4#T3との関連性)には、とありますが、間違いです。
- このWikipediaの記述ですと、「ケイト」がT3とT4の続編性の唯一のよりどころになっていますが、「ケイト」の違いは前述の通りです。厳密には同一キャラクターとは言えません。そのため、
本作は事実上『T3』の続編といえる。
は間違いであり、むしろ「事実上」は『T3』の続編とは言えません。 - 次に、
前作に登場したT-1の登場
についても完全な間違いです。T4に登場したのはT-100です。
→詳細:T-1とT-100の違い【ターミネーター展】 - また、
更に"Skynetは14年前に自我に目覚めた"との明示的な記載もあることから
との記載は、その公式サイト(米国)にはありません。もし仮にそうした記述が過去にあり、今は削除されている、ということなら、それは昔の記述が「間違っており、訂正が入った」ということです。
そしてマックG監督は、T4における「審判の日」は2011年以降と発言しており、T3の審判の日と違います。
→詳細:ターミネーター4の審判の日は2011年(T3と矛盾)
T3固有種(T-850,T-X,ケイト・ブリュースター)は二度と出ることはない
以上の諸事情から、T4に限らず、他のターミネーター作品には、T3固有のキャラクター・・・T-850やT-X、ケイト・ブリュースターという名称ないしキャラクターは、一切、登場しません。また、今後もターミネーター作品において、T3固有のキャラクターは二度と登場することはありません。そのため、ネット上でよくある質問・・・例えば、
- T-XとT-3000が戦ったらどっちが勝ちますか?
- T-3000とRev-9が戦ったらどっちが勝ちますか?
といった、(アベンジャーズのように)オリジナル(T1,T2)以外の作品(のキャラクター)とのクロスが実現することもありません。
なぜなら、高額な権利に見合うリターンがまったく見込めないからです。
以上のような知識があると、例えば、「ターミネーター・ジェニシス」において、「T-800おじさん」を誰が送ったのか?問題で、「T3のケイトが送った確率は0%である」という答えをすぐに導き出すことができます。
→詳細:【解説】ターミネーター・ジェニシスの時間軸と疑問解決
以上、(T3もT4も、もう黒歴史化してしまったので、どうでもいい話ではありますが)T3とT4は、実は事実上・法律上(権利上)・公式には続編ではなかった、というお話でした。