「ランボー2怒りの脱出」の一瞬の迷シーン

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ランボー2怒りの脱出の迷シーン

1985年に大ヒットした映画『ランボー2/怒りの脱出』(Rambo: First Blood Part II)

同じく1985年のこちらの映像使いまわしでコスパ最強映画「コマンドー」と同様、この「ランボー2」も、よく見ると とても不思議な「映像使いまわし」の迷シーンが存在しています。

1985年は映像使いまわしが流行った時代だったのでしょうか。

「ランボー2怒りの脱出」の迷シーン

一瞬のRPG-7乱入

問題のシーンは、ランボー2の後半、ランボー(シルベスター・スタローン)が、ヘリコプターの操縦席で死んだふり(気絶したふり)をして、油断させた敵ボスのヘリコプターをバズーカ砲で撃ち落とすシーン。

手にしたバズーカ砲はM72 LAWなのですが、撃つ瞬間、コンマ1秒(1コマ)、違うバズーカ砲(RPG-7)の映像が挿入されています。
ランボー2バズーカ砲
このRPG-7の1コマ(上の②のコマ映像)は、この映画中盤の船上シーンで、ランボーがバズーカ砲(RPG-7)を撃った際の使いまわし映像です。
なぜランボーのこのシーンで、こんな変な事が行われたのか考察してみるに、おそらく以下のいずれかの可能性が考えられます。

  • バズーカ(M72 LAW)を発射する際の手元のクローズアップを撮り忘れた、もしくはうまく撮影できなかったか、撮影はしたもののうまく撮れていなかった。
  • この場面でランボーが持っているバズーカ(M72 LAW)は発射がボタン(スイッチ)式なので、発射する瞬間が観客にわかりにくいので、かっこよく見せるためにトリガー式の別のバズーカ(RPG-7)を発射する時の映像を挿入した。

1コマを一瞬挿入するというのは、昔、炭酸飲料会社が、関係ないCMの1秒24コマ中の1コマに飲料の映像を入れて、視聴者に炭酸飲料を飲みたいと思わせたり、某宗教団体が教祖の映像を1コマ挿入して、教祖崇拝に導こうとしたりする際に使われて問題になった、視覚効果で潜在意識に訴えるサブリミナル効果という、洗脳技法の一種ではあります。

しかし、ランボーのこのシーンが何か洗脳させようというほどのものでもないので、おそらく上の2つの可能性のどちらか(おそらく後者の原因)によって、この別シーンの映像を挿入する、という迷シーンが生まれてしまったのかと思われます。

またもRPG-7乱入

こちらは映画本編ではありませんが、ランボー2のオリジナルサウンドトラック(CD)のジャケット。 よく見るとマシンガンM60の先端(銃口)に、RPG-7(ロケットランチャー)のロケット(砲弾)が差し込まれたメチャクチャ仕様になっています。またしてもRPG-7乱入です。
本来、このランボーが持っているM60はこんな感じ↓なのですが・・・ 銃口にロケットの砲弾が刺さっていたら、もしマシンガンの引き金を引いたら自爆してしまいます。CDジャケットのランボーが持っているM60には、弾も帯状マガジンでばっちり装填されているので、この状態で撃つ気満々のようです。作曲したJerry Goldsmith (ジェリー・ゴールドスミス)氏も、まさか自分の曲がこんなジャケットでラッピングされるとは思ってもみなかったはずです。
ランボー2のミス
「やってしまった感」満載のこのジャケット・デザインは、おそらく銃のことをよく知らないデザイナーが、絵に迫力を付けようと勢い余って「蛇足」してしまったのでしょう。

ちなみに、他の「普通の」ランボー2のオリジナルサウンドトラック(CD)のジャケットは、ランボーがRPG-7だけを持っています。
しかし、なぜか「ランボー/怒りの脱出 デジタル修復版(字幕版/吹替版)2020」では、またもやジャケットにM60+蛇足RPG-7が登場します。「修復版」なのに修復はされていません・・・。 以上、なぜかとことん「RPG-7押し」が強い「ランボー2/怒りの脱出」でした。

「エクスペンダブルズ」発祥の名シーン

これまで「迷シーン」と「迷ジャケット」について述べてきましたが、ランボー2には、後のスタローンの映画『エクスペンダブルズ』(The Expendables)の起源となった名シーンもあります。

「ランボー、あなたはエクスペンダブルじゃないわ。」

劇中、現地に向かう船の中で、Julia Nickson(ジュリア・ニクソン)が演じる現地の案内役の女性兵士コー・バオ(Co Bao)と、ランボーとの間で、以下のような会話が交わされます。

Co Bao: Why did they pick you? Because you like to fight?
「なぜあなたが選ばれたの?戦うのが好きだから?」

Rambo: I'm expendable.
「俺はエクスペンダブルだからさ。」

Co Bao: What mean expendable?
「エクスペンダブルってどういう意味?」

Rambo: It's like someone invites you to a party and you don't show up. It doesn't really matter.
「呼ばれたパーティーを欠席しても誰も気にしない、いてもいなくても同じような存在のヤツ(=使い捨て品/消耗品/捨て駒)のことさ。」

その後、ジャングルの中でランボーとコー・バオと別れるシーンでも、上の会話の続きとなる以下のようなセリフをコー・バオはランボーに投げかけます。

Rambo, you are not expendable.
「ランボー、あなたはエクスペンダブルじゃないわ。(=とても価値がある/素敵な人よ。)」

そう投げかけられたランボーは、うなずいて、一旦、背を向けた後、再度 振り返って、コー・バオの後ろ姿をしばらく眺める情緒的なシーンが挿入されています。

脚本はジェームズ・キャメロン

この女性兵士コー・バオとの絶妙な空気感は、おそらくランボー2の脚本を担当したジェームズ・キャメロンならではの要素(「ターミネーター」や「エイリアン2」のように強い女性をうまく昇華させる)が反映されている部分なのではないかと感じられます。この女性との絶妙な空気感は、ランボー・シリーズの他の作品では、うまく表現できているものがないからです。

ランボー2でジェームズ・キャメロンぽさを感じさせる点

  • 強い女性をうまく描く
    単に強いだけでなく母性をうまく取り入れ、フェミニズムの嫌味を感じさせない。本来、現地案内役は男性が多いはずだが、それを女性に変えたのがランボー2の味噌。
  • 前作をさらにスケールアップさせつつ反戦映画
    ターミネーター1が2へ、エイリアン1が2へさらにスケールアップしたように、ランボーも1から2へさらに派手さが増加。しかしその根底にあるのは戦争に対する強烈な皮肉・反戦魂。
  • 癖のある銃火器を登場させる
    Hoyt Archery(Torque Bow)・・・弾薬付きの弓矢などを登場させ、有効活用する。ターミネーターにおけるレーザーサイト付ハードボーラーやコルトニクス、ウィンチェスターM1887や、エイリアン2におけるM41パルスライフルなど「この映画の武器ならこれ!」と誰もがすぐ思い浮かべるようなマニアックな重火器を登場させ、効果的に使用するのが特徴(小道具へのこだわり)。

特に上の3点あたりに、ランボー2におけるジェームズ・キャメロン臭が漂っています。

ジェームズ・キャメロン「ベトナム戦争三部作」

  • 1984年「ターミネーター1」(監督・脚本)
  • 1985年「ランボー2」(脚本)
  • 1986年「エイリアン2」(監督・脚本)
この時代のジェームズ・キャメロンが関わったこれら3作品に、ベトナム戦争が色濃く反映されています。
→詳細:接近戦にはこれが一番だ【エイリアン2】の意味

「エクスペンダブルズ」はここから始まった

いずれにしても、「ランボー2」の中では、この「エクスペンダブル」という単語が3回も登場し、重要なキーワードとなっていました。

シルベスター・スタローンの中には、この「エクスペンダブル(使い捨て品/消耗品/捨て駒)」という言葉がずっと心の中に残っていて、そこからアイデアを温め膨らませて派生させて作ったのが、2010年の映画『エクスペンダブルズ』(The Expendables)と2012年の続編『エクスペンダブルズ2』だということがうかがえます。

ある意味、映画『エクスペンダブルズ』の生みの親はジェームズ・キャメロンと言えるのかもしれません。

ちなみに「ランボーの聖地」はこちら↓

スタローンは派生させるのが得意

以上、「ランボー2」のセリフから派生したのが「エクスペンダブルズ」というお話でしたが、スタローンは派生させて映画を作るのが得意なようで、スタローンが派生させて作ったのは「エクスペンダブルズ」だけではありません。

映画「コブラ」の元ネタは「ビバリーヒルズ・コップ」

スタローンの1986年の刑事アクション映画「コブラ(COBRA)」も、実は元ネタはエディー・マーフィー主演の刑事アクション映画「ビバリーヒルズ・コップ(Beverley Hills Cop)」で、そこから派生したものでした。
「ビバリーヒルズ・コップ」は当初、シルベスター・スタローン主演で行く予定でしたが、スタローンが「ダーティハリー」シリーズのような、シリアス路線で行きたかったところ、映画配給会社が反対したことで、スタローンは降板。エディー・マーフィーが軽妙なコメディ調で主演したことで、「ビバリーヒルズコップ」は大ヒットしました。

ただ、スタローンはスタローンで、「ビバリーヒルズ・コップ」のアイデアで主演したいという願望を捨てきれず、自分で脚本を書いてシリアス系刑事アクション映画「コブラ」を作ってしまいました。映画「コブラ」は「ビバリーヒルズ・コップ」から派生した作品だったわけです。

そのため、「コブラ」も「ビバリーヒルズ・コップ」も、雰囲気は違えど、基本構造はまったく同じです。

そのことを茶化すように、映画「ビバリーヒルズ・コップ2」では、劇中、映画「コブラ」や「ランボー2」など、スタローンの映画のポスターがそのまま登場します(ビリー・ローズウッド刑事の自宅のシーン)。

また、「コブラ」でヒロインを演じたBrigitte Nielsen(ブリジット・ニールセン/スタローンの元妻)が、「ビバリーヒルズ・コップ2」では悪役を演じるという意味深な配役がなされています。

以上、1つの映画の中での映像使いまわしだけでなく、映画のアイデアそのものも、違う作品で使いまわされている、というお話でした。

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