ターミネーター4(ターミネーター・サルベーション/TERMINATOR SALVATION・・・T4)の「審判の日」は、「ターミネーター3(T3)」の2004年ではなく、実は2011年以降だった、というお話です。
マックG監督「2011年は審判の日の前」
T4のマックG監督によると、T4の「審判の日」は2011年以降、とのことです。元記事は、
Salvation by cyborg: McG helms next chapter in 'Terminator' saga
April 27, 2009
http://www.filmjournal.com/filmjournal/content_display/news-and-features/features/movies/e3ida99bf36787f149a761c5190f90c8c7a
に掲載されたMcG監督とのインタビューですが、(filmjournal.comのサイトは消滅したので、)それを転載した
https://www.syfy.com/syfywire/mcg_looks_past_terminator
などでも同じインタビュー記事を確認できます。
"I strongly suspect the next movie is going to take place in a [pre-Judgment Day] 2011," McG said. "John Connor is going to travel back in time, and he's going to have to galvanize the militaries of the world for an impending Skynet invasion. They've figured out time travel to the degree where they can send more than one naked entity.
So you're going to have hunter-killers and transports and harvesters and everything arriving in our time and Connor fighting back with conventional military warfare, which I think is going to be f--king awesome. I also think he's going to meet a scientist that's going to look a lot like present-day Robert Patrick [who played the T-1000 in Terminator 2], talking about stem-cell research and how we can all live as idealized, younger versions of ourselves.
T4の続編は審判の日が起きる前の現代-2011年が舞台
上記の通り、T4の次作の構想として、マックG監督は「次作(T4の続編としてのT5)は、(審判の日が起きる前の)2011年が舞台だ。」として、「ジョン・コナーが2011年の現代にタイムトラベルしてきて、世界中の軍に、スカイネットがやってくるぞ!と警告するんだ。」と明言しています。そして現代にタイムトラベルしてきたハンターキラーやハーベスターなどターミネーターに対して、現代の人類の軍とジョン・コナーが一緒に戦う。T2で液体金属T-1000を演じたロバート・パトリックが、科学者役として登場し、なぜT-1000がT2で、ロバートパトリックの顔がデフォルトになっていたか?の秘密も明かされることが予定されていたようです。
さらにT4の宣伝で来日した際は、マックG監督は、そのジョン・コナーの到着地点を「2011年の渋谷の交差点の真ん中」と(リップサービスも含めて)発言しています。
ちなみに、その来日時、マックG監督はお台場でのターミネーター展も訪問し、展示物にサインを残していっていました。
つまりT4の「審判の日」は2011年以降
「審判の日が起きる前の2011年の現代」にジョン・コナーがタイムトラベルをしてくる、ということは、つまりT4の審判の日は、2011年以降ということになります。よって、2004年が審判の日だったT3とは矛盾することになり、T4はT3の「単純な続編」として作られたわけではないことがわかります。
2011年の妥当性
「T4の続編としてのT5」が(映画公開予定時の現代である)2011年を舞台にすることには妥当な理由があります。現代を舞台にする理由1:臨場感
ターミネーター作品の、どれもが「公開された年」またはその「公開年に近い年」を舞台にして、リアルタイムな臨場感を持たせるのが特色となっているからです。例えば、
- 1984年に公開されたT1は1984年が舞台
- 1991年に公開されたT2は1994年が舞台
- 2003年に公開されたT3は2004年が舞台
- 2008年に放映された「サラコナークロニクルズ」は2008-2009年がメイン舞台
- 2015年に公開された「ジェニシス」は2017年がメイン舞台
- 2019年に公開された「ニューフェイト」は2020年が舞台
となっています。
映画の舞台が現代から離れた年代になった場合、観客にとってどこか遠い世界の出来事に感じられ、臨場感(現実感)が失われてしまいます。
例えば、1984年のT1は、今でも十分におもしろいですが、1984年のリアルタイム時に観た時のほうがやはり衝撃度は大きいです。
また、T4がコケてしまったのは、2009年公開なのに、2018年を舞台にしてしまい、観客がいる現代と感覚にズレが生じてしまったのも敗因の理由として挙げられます。
また、T4にはターミネーター名物のタイムトラベル・シーンが無く、時間の縦軸(未来-現代-過去)の因果関係を感じさせるターミネーター作品の売りが脆弱だった点も失敗の理由と考えられます。
T4は、本来T5でやるべきこと(2011年を舞台にし科学者ロバート・パトリックを登場させる)を前倒ししてT4で先にやるべきでした。そうすれば興行収入はもっと良かったことでしょう。
現代を舞台にする理由2:撮影が簡単
観客の臨場感の他にも、現代を舞台にすることのメリットとして、「撮影が楽だから」という大きな理由があります。現代の街並みをそのままロケして使うことができるからです。これが舞台の時代が大きく変わってしまうと、違う時代の街並みなどを、大規模なセットないしCGでいちいち作り直さなければならず、撮影が大変かつ多額な製作費が発生します。
例えば、ターミネーター・ジェニシスは、舞台を少し前(1984年)に変えただけで、小道具に複数の矛盾が生じてしまっています。→詳細:ターミネーター・ジェニシスの矛盾と疑問点
そのため、現代または現代と誤差が少ない時代設定にすることは、撮影上、とても理にかなっています。
そのため、マックG監督が手掛けるT4-T5-T6の三部作の「審判の日」の設定は、2011年だった、というのは至極、納得のいくことと言えるでしょう。
T3とT4の続編性は曖昧模糊
以上から、「審判の日」はT4は2011年以降、T3は2004年 と矛盾が生じており、「T3の続編としてのT4」という続編性は薄い(曖昧である)ことがわかります。サラコナーのカセットテープの矛盾
上述「審判の日」の矛盾以外にも、「サラコナーのテープ」の矛盾がT3とT4の間には存在します。T3ではジョン・コナーはどこにも「サラコナーが録音したテープ」を持っていませんでした。身一つで命からがら逃げまわっていました。サラコナーの墓地にあったのは、銃火器のみでした。
T4がT3の続編なら、T4でジョンコナーが聞いてたサラ・コナーのカセットテープは、いったい、どこから飛んできたのでしょうか。
→関連記事:サラ・コナーのボイスレコーダー SONY ICD-UX80/UX70
ケイト?
T4には「ケイト」というキャラクターが登場しますが、正式なキャラクター名は Kate Connor(ケイト・コナー)です。実は T3の Kate Brewster(ケイト・ブリュースター)ではありません。T4のエンド・クレジット(エンドロール)もKate Connorとなっています。↓ そのため、「ケイト」という名前は一致はしているものの、T3の「ケイト・ブリュースター」とこの「ケイト・コナー」が同一人物なのかどうか?は厳密にはわからない仕様(同一人物とも違う人物とも取れなくもない仕様)となっています。他のキャラクターもチェックすればわかりますが、実はT4には「T3固有のキャラクター」は1つも(1人も)出ていません。
→詳細:ケイト・ブリュースターではないT4はT3の続編でもない事実
Wikipedia?
ちなみに、誰でも編集できるWikipediaには、「本作は事実上『T3』の続編といえる。」との「1執筆者の意見」が記載されていますが、結局のところ、その強い根拠となっているのは、「ケイト」という登場人物の一致しかありません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ターミネーター4#T3との関連性
しかし、実際のところは、T4はT3の続きとして見ようと思えば見えなくもないけれど、続編ではないという見方もできるようなボカした作りになっています。
また、同じく日本版のWikipediaには、
公式サイト(米国)においては10年後という記述は無く、更に"Skynetは14年前に自我に目覚めた"との明示的な記載もあることからという記述がありますが、その公式サイト(米国)https://www.warnerbros.com/movies/terminator-salvation なるものには、"Skynetは14年前に自我に目覚めた"との記載は見当たりませんでした。
ウィキペディアについては、
のように、「間違いだらけ」「間違い 報告」「間違い 指摘」「信用できない」「修正方法」「嘘記事」といった関連キーワードがたくさん出てくる次第なので、wikipediaの信憑性について、いちいち突っ込んだところでしかたがないことですが、一応、メモがてら残しておきます。
T3とT4の続編性は薄い
McG監督いわく、Hats off to the third movie, but we paid attention to the first two pictures
「T3には敬意を表するが、我々はT1とT2に注意を払っている。」
https://www.imdb.com/title/tt0438488/faq
McG has said that "[w]e do honor Judgment Day as articulated in T3."というスタンスとのこと。
「T3の中で審判の日が起きたという事実は尊重する。」
つまり、T4については、あくまでT1とT2ベースであることが一番重要であり、T3の審判の日が起きたというネタは尊重するけれど、その年月日についてはボカしている(必ずしも正確には継承しない)というスタンスが、T4のマックG監督。
他のインタビューなどからもうかがえますが、McG監督は、T3と比べられたり、T3の続編的な見方でT4を見られるのがあまり好きではなかったようで、T3とT4の続編性に関しては、結構ボカシて作っています。
T4続編が製作されたらT3との矛盾が露呈するところだった
何はともあれ、ターミネーター4のMcG監督の中では、審判の日は2011年より後であり、「審判の日」の発生年について、T4とT3とで矛盾しているのは明らかです。当初の予定通り、マックG監督のよる2009年からのT4-T5-T6の三部作が作られていたら、「T3の続編では無かった」ということが露呈し、観客はT3とT4の続編性は限りなく薄いことに気付くことになっていたことでしょう。
また、ネットを俯瞰するに、
- なぜT-1000がロバート・パトリック顔がデフォルトになったのか?
- イ・ビョンホンではなくロバート・パトリックのT-1000
- 汚泥のようなRev-9より、美しいT-1000
を観たかった・・・という人も多く、T4がT3の足カセにとらわれることなく(T3を完全に無視して)、T5の構想を前倒ししてT4をスタートさせていたら、大ヒットしていたかもしれません。
以上、マックG監督の当初の構想と、T3とT4の続編性と矛盾について、でした。