仮想ターミネーター・ニューフェイト(孫娘と宝塚)

ターミネーター

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ターミネーター・ニューフェイト成功編

ターミネーター作品としてのアイデンティティをも失ってしまうという、大失敗に終わった『ターミネーター: ニュー・フェイト』(Terminator: Dark Fate、2019年)。

この映画は、『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』(Terminator Genisys、2015年)とターミネーター商標権利が同じオーナー(アンナプルナ/スカイダンス社)である姉妹作品であり、姉妹ともども失敗してしまった、ということになります。

2作とも製作段階から失敗が見えていましたが、「(ストーリーを)こうすればもう少しマシな結果になっていたのでは」という私的仮想を、当時を振り返って下記していきます。

ジェニシスやニューフェイトの「失敗」を確信した瞬間

ジェニシス失敗を確信した瞬間

筆者は、ターミネーター・ジェニシスに関しては、キャストの発表を聞いた瞬間、コケることを確信しました。

シュワちゃんがまたターミネーター役をやるという点、そして特にジョン・コナーとカイル・リースの配役を聞いて、100%コケるだろうと確信しました。

結果として、ターミネーター・ジェニシスは不評&コケて続編三部作は頓挫しました。
→関連記事:ターミネーター・ジェニシスの続編は絶対ない理由

ニューフェイト失敗を確信した瞬間

『ターミネーター: ニュー・フェイト』に関しては、当初、ジェームズ・キャメロンが関わるらしいと聞いたので、かすかに期待はしたのですが、

  • 初期のスチール写真」が上がってきた
  • ジェームズ・キャメロンが監督も脚本も担当しない、と伝わってきた
  • 「シュワちゃんがターミネーター役をやる」と伝わってきた

段階で、コケることを90%確信しました。
→結果:高品質なCG(VFX)で大失敗した映画2例 初期のスチール写真」とは、サラ・コナーとグレースとダニーの3人が並んで歩いている写真(上図)です。

この写真はツッコミどころ満載ですが、特にコケると確信した部分の1つに、サラ・コナーが持っている銃「Serbu Super Shorty」(サーブ スーパーショーティ)があります。ターミネーター戦で、3発しか入らないショットガンを持ち歩くのはありえないことです。

これは明らかに「かっこつけ」優先のチャラく薄っぺらい映画であることを示唆しています。ジェームズ・キャメロンが監督(演出)していたら、絶対にここでこの銃のチョイスはしないので、この映画にクオリティーが望めないことを、この1点だけでも露呈しています。

また、その他の理由としては、この写真には「花(華)」がない、という点も挙げられます。花が3つ(3人)並んでいるわりには、何か訴求するものがありません。ジェームズ・キャメロンらしい「細やかな何か」も感じることがありません。ただのイメージ優先、前のめりの「カッコつけ」感だけが漂っています。何か「違う方向に行ってしまっている感」が半端ないのです。

このスチール写真1枚が上がってきただけで、ニューフェイトがコケることを90%確信しました。

また、ジェニシスにしても、ニューフェイトにしても、「シュワちゃんがターミネーター役をやる」と聞いて、コケることをダメ押しで確信しました。

シュワちゃんは、もう自分が良く見える良い役しかやりたがらず、それが出演契約にもなっているので、「シュワちゃんがターミネーター役をやる」時点で、ストーリーの大筋はこれまでのターミネーター作品と同じになります。最後にシュワちゃんがおいしいとこ持って行って終わり、になることが確定するからです。新しい革新的なターミネーター作品は期待できません。

ジェニシスにしてもニューフェイトにしても、「焼き直し」というキーワードを使うレビューが多いのは、この点に理由があります。

ニューフェイトはこうすべきだった(こうしたら少しはマシだった)

では、「ターミネーター・ニューフェイト」はどうすればよかったのか?というと、正直、上の配役、監督等の条件で、ヒットに持っていくのはかなり厳しいです。この具材だけで極上の料理を作れ、と言われても無理があります。

しかし、もしこの材料という限定条件の下で、もう少しマシな「ニューフェイト」を作るとしたら・・・もう少し「こうしていたら」ニューフェイトはマシだった・・・という、自分が当初、残り10%の期待として予想(空想)していた内容2点を下記します。

なぜ以下のほうがまだマシな結果になるか、というと、それはターミネーター作品のアイデンティティ(基軸)が失われていないからです。「ニューフェイト」の大失敗の要因の1つに、「ターミネーターとしてのアイデンティティが失われてしまった」というのがあります。

基軸が失われ、「次はこの人でーす!」「スカイネットじゃなくてナンチャラでーす!」と言われてら、もう誰でも何でもOKであり、それなら別に「ターミネーター」という名前が付いた作品でなくてもいいし、「もはやターミネーターではない(ターミネーターのアイデンティティが失われた)」、というのが「ニューフェイト」大失敗の一因だからです。

例1.「宝塚」式・・・マッケンジー・デイヴィスが実はジョン・コナー

ターミネーターニューフェイトが宝塚だったら

90%以上の大コケ確信の中で、残り10%程度の期待の中にあったのは、「もしかしたら真ん中に写っている人物は、ジョン・コナーなのではないか?」というものでした。

つまり、マッケンジー・デイヴィスが実はジョン・コナー・・・女性が男性を演じる「宝塚歌劇団」のような奇策にジェームズ・キャメロンは打って出たのではないか?というものでした。

未少年と美少女、美人と美男は互換性があるので、「宝塚」式に、マッケンジー・デイヴィスがジョン・コナーを演じるのも有りでは?との想像が働きました。確かにマッケンジー・デイヴィスは、身長も180cm近くあり、身体的特徴が男性的で美男を演じられなくもありません。この写真のショートヘヤも、T2のエドワード・ファーロングの髪型に少し通じるものがあります。

一方でエドワード・ファーロング自身も出演するらしい?とも(当時)漏れ聞いていたので、
  • おそらくエドワード・ファーロングをCG(VFX)加工させた青年期のジョン・コナーを、数秒程度出演させて、
  • 大人になって以降は、マッケンジー・デイヴィスがジョン・コナー役を引き継ぎ、
  • そして大人になったジョン・コナーとサラ・コナー親子が、未来からやってきた左の女性(ダニー)とともに、スカイネットに立ち向かって共闘する・・・
  • その過程でまた新たなシュワちゃんT-800が未来から送られてきていて、戦いに加わるか、敵方として若いシュワちゃん顔T-800をVFXで再現して、人間の老人シュワちゃんが助っ人として戦いに加わり、なぜT-800がシュワちゃん顔になったのか?の秘密が明かされていく
・・・というストーリーが頭によぎりました。

しかしフタを開けてみれば、捻りもなければ、ジェームズ・キャメロン色もいっさい無い、「デッドプール」みたいな、ただのティム・ミラー監督作品でした。

例2.「T2 オリジナル版」エンディングの「正統な続編」

10%のかすかな期待の中で、もう1つ、私の頭によぎっていたのは、ターミネーター2の「もう1つのエンディング」(T2オリジナル版のエンディング)の延長線上にある世界観です。

上の3人の写真の真ん中の女性(マッケンジー・デイヴィス)は、実はこの「ターミネーター2オリジナル版最後の公園(劇場版との違い)」のシーンに登場した女の子が成長した姿・・・つまり、グレースはジョン・コナーの娘で、サラ・コナーの孫・・・というものです。
ターミネーター2オリジナル版エンディング・グレース
「T2オリジナル版のエンディング」の後、

  • 何らかの事情でジョン・コナーが死亡または拉致等で行方不明状態になり、世界に核戦争の危機が迫っていた。(そのシーンを描く過程で、エドワード・ファーロング自身またはCG/VFXでジョン・コナーが少し登場する。)
  • 左の女性(ダニー)は未来からやって来た使者で、ジョン・コナーの娘(グレース)とサラ・コナーに、未来で起きたことの原因を伝える。
  • その原因となる要素を消すために、ジョン・コナーの娘(グレース/マッケンジー・デイビス)がサラ・コナーと一緒にスカイネットと戦う・・・というもの。
  • そしてシュワちゃんは退役した元軍人で、ターミネーターの試作品のモデルとなった人物でT-800エンドスケルトンの弱点を知っている。現在は森の中で隠居生活中だが、ダニーからの情報による引き合わせで、助っ人としてスカイネットとの戦いに参加することになる。その過程でなぜT-800がシュワちゃん顔になったのか?の秘密が明かされていく・・・

という仮想ストーリーです。

T2は本来はオリジナル版のエンディングの世界観(方向性)で描かれているため、この仮想ストーリーのほうが、T2の世界観に沿った「正統な続編」に近く、「ターミネーターのアイデンティティ(基軸)」や「既存登場人物の存在価値やヒューマニズムのつながり」も大切にされているので、もう少しマシな結果をもたらすことができたと考えています。

上記2パターンが、私が「ターミネーター・ニューフェイト」公開前にかすかに抱いていた10%の期待だったのですが、しかし残念ながら、フタを開けてみると、実際の「ターミネーター・ニューフェイト」は、私の想像を超えるようなストーリーは存在せず、大コケ・大失敗も納得の状態で、世に送り出されてしまったのでした。
→関連記事:ターミネーター:ニュー・フェイト続編中止の理由

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