ターミネーターが泳げず沈んだ巨大プールはT1,T2特撮工房

サラコナークロニクルズ ターミネーター ロケ地

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海中に沈むターミネーターT-888

映画やドラマのロケ地を調べていると、公には発表されていない、各作品の隠れた「つながり」を発見することがあります。

今回は「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」と、T1(ターミネーター1)・T2(ターミネーター2)との「水面下」でのつながりです。

ターミネーターから逃げるジョン・コナー

逃げ場のない海辺までターミネーターT-888クロマティに追い詰められたジョン・コナーは、サンタモニカ・ピアから海に飛び込みます。クロマティが撃った弾が、ジョン・コナーのコートを貫通します。
→詳細:ジョン・コナーが海に飛び込んだサンタモニカ・ピア
(「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」シーズン2第3話「マウストラップ / The Mousetrap」)

そのシーンのメイキング映像を見ると、年季の入った業務用のような巨大プールで、ターミネーターT-888クロマティが重たすぎて泳げず、赤く目を光らせながら海底に沈んでいく水中シーンが撮影されていました。
桟橋から落ちていく遠景もこの巨大プールで撮影したものをサンタモニカ・ピアに合成したものです。
ターミネーター対ジョンコナー水中シーン

このシーン、(人間の体だと自然に浮いてしまうので)ターミネーター・クロマティを演じたギャレット・ディラハントの足首をヒモで結んで、他のダイバーが後ろへ引っ張ることで、重くて海底に沈んでいくT-888を演出し、赤く光るターミネーター・アイは、後付けの特殊効果(映像処理)とのこと。

その水中シーンの撮影場所は公表されておらず、海外含めネット上にも情報はありませんが、探したところ、ロケ地は以下の場所でした。

Fantasy II Film Effects(特殊効果スタジオ)

ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズの特殊効果ロケ地

なぜこのロケ地が分かったか

Fantasy II Film Effects(ファンタジー2・フィルム・エフェクツ)というスタジオは、日本では名前さえもあまり知られていません。

なぜここが分かったか?というと、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」の前述のメイキング映像で、プールのはるか後方(遠景)に、うっすら工場の煙突らしきものが映っていたからです。
ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズの特撮水中シーン

カリフォルニアには工場や発電所はたくさんあるので、似たような煙突は無数にあり、煙突だけを手掛かりに探し出すのは困難です。
しかし、映画やドラマの撮影というのは、けっこうロケ地がダブるか、近くで撮影する傾向があります。特に大がかりな撮影の場合、製作の本拠地であるワーナーブラザーズ・スタジオなどがあるバーバンクからそう遠くないところで、ロケ地を構えることが多いです。

そこでそれら条件を満たす、これと似たような「煙突」を、記憶の中から手繰り寄せると、この何が始まるんです?第三次大戦だ!の場所(コマンドー)のロケ地「Surplus City(銃器店)」の目の前にある、

  • The Los Angeles Department of Water and Power (LADWP)
    ・・・ロサンゼルス市水道電力局の発電所
  • 11759 Sheldon St, Sun Valley, CA 91352 U.S.A.

の煙突が思い浮かびました。

この発電所の煙突は、マイケル・ジャクソンの「Black or White」(1991年)のミュージック・ビデオにも登場した煙突です。

煙突などの形が合致したので、その見える角度・距離などから、プールの場所を「12318 Branford St, Sun Valleyあたりである」と特定したのですが、2022年現在、Google Map(衛星写真等)で見る限り、肝心のプールらしきものが見当たりません。

そこでその住所から「過去」を調べていくと、この場所に昔、「Fantasy II Film Effects」という映画の特殊効果を専門とする会社(スタジオ)があったことが分かりました。

肝心の巨大プールは、Google Earthの「過去のイメージ」で確認したところ、どうやら2014年4月から2015年3月の間に解体撤去、埋め立てられてしまったようです。

また、現在は「Fantasy II Film Effects」という会社はもう無くなってしまったようです。跡地は現在、植木屋さんがオフィスを構えています。

Fantasy II Film Effectsはミニチュア工房

Fantasy II Film Effects(ファンタジー2・フィルム・エフェクツ)という会社は、特にミニチュアを使った特殊効果を得意とするスタジオだったようで、例えば、「グレムリン」「エイリアン2」「ザ・コア」「バイオハザードII アポカリプス」「エクスペンダブルズ」「ラスト・アクション・ヒーロー」「スタートレック:エンタープライズ」「トゥルーライズ」・・・など、数々の著名作品での特殊効果に貢献していたようです。

あの巨大プールは、850000 gal (US gallon) 以上の貯水力があり、すり鉢状に中心部ほど深くなり、映画の中の水中や深海のシーンだけでなく、水面にミニチュアの戦艦や豪華客船を浮かべての海上シーンや、ミニチュアの橋を作って橋の崩落シーンを撮影するなどに使われていたようです。

ターミネーター1と2の特殊効果の立役者

実はこのFantasy II Film Effectsという会社、T1(ターミネーター1)・T2(ターミネーター2)の重要なシーンを作り出したスタジオで、このスタジオなくしてT1とT2は成立しなかった、と言っても過言ではありません。

「ターミネーター2」でアカデミー賞を獲得

このFantasy II Film Effectsは、T2では、例えば、

  • 映画冒頭の、ハンターキラーやT-800らがたくさん登場する未来の戦場シーンや、
  • 終盤の液体窒素を積んだタンクローリーが転倒した状態での工場へのスライディングシーンなど
    ターミネーター2ミニチュア特殊効果
をミニチュアで作りだしています。

  • Fantasy II Film Effects | Terminator 2 (Subtitulado)
    https://www.youtube.com/watch?v=V1nHN0CJ5cI
  • Terminator 2 Miniature Effects (Truck, Endoskeleton, Hunter Killer Tank)
    https://www.youtube.com/watch?v=rFn1JZvkM3Q

ターミネーターの特撮と言えば、Stan Winston(スタン・ウィンストン)が有名ですが、そのスタン・ウィンストンと一緒にアカデミー賞授与式の壇上に上がり、 Academy Award for visual effects(アカデミー視覚効果賞)を受賞していたのが、Fantasy II Film EffectsのオーナーであるGene Warren Jr.(ジーン・ウォーレン・ジュニア)です。

こちらのアカデミー賞授与式の動画の、
  • Terminator 2: Judgment Day Wins Visual Effects: 1992 Oscars
    https://www.youtube.com/watch?v=YSBl0iXcIqE
の、壇上一番左にいるのがGene Warren Jr.(ジーン・ウォーレン・ジュニア)で、その右隣りに立っているのがスタン・ウィンストンです。

ちなみにジーン・ウォーレン・ジュニアのお父さんである Gene Warren Sr.も映画の特殊効果の技術者で、同じくアカデミー賞を受賞しています。

「ターミネーター1」のタンクローリー爆破シーンもミニチュア

このジーン・ウォーレン・ジュニア率いるFantasy II Film Effectsは、「ターミネーター1」でも特殊効果を担当しています。
ターミネーターのタンクローリー炎上シーン

例えば終盤のタンクローリーが爆発・炎上するシーンもミニチュアで作られたものです。

ジェームズ・キャメロン監督とは長い付き合いのようで、ジェームズ・キャメロン映画のミニチュアを駆使した特撮シーンは、だいたいこのFantasy II Film Effectsが担当していたようです。

例えば「エイリアン2」での惑星LV-426への着陸シーンなども、このFantasy II Film Effectsが創り出したもので、知らないうちに多くの人が、このFantasy II Film Effectsの匠の技を目にしていたことになります。

尚、ターミネーター作品他、数々のハリウッド映画のミニチュア特撮に貢献したFantasy II Film Effectsのオーナー、ジーン・ウォーレン・ジュニアは、2019年11月28日に78歳で亡くなられています。
→関連記事:ターミネーター出演者の故人を悼む

以上、ターミネーター1と2とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズは、マニアックな水面下でもつながっていた、というお話でした。

この「サンタモニカ・ピア」での水中シーンのあと、びしょ濡れになったジョン・コナーはは、キャメロンとともに以下の場所へ向かいます。

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