ランボー2弓矢の滝と橋のベトナム風メキシコ

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ランボー2怒りの脱出の滝のロケ地

「ランボー2」こと映画『ランボー/怒りの脱出』(Rambo: First Blood Part II、1985年)は、物語上の舞台はベトナムですが、そのほとんどのシーンはメキシコで撮影されています。

IMDb(Internet Movie Database)
https://www.imdb.com/title/tt0089880/locations

などでもメキシコのロケ地の大雑把な地域・都市名は記載されていますが、かなりアバウトというか、具体的な場所の情報はなかったので、「ランボー2」の印象的なシーンのロケ地をまとめました。

【目次】

1.ランボーが弓矢を放った滝

榴弾矢じり付きの弓矢で、日本人を演じたこともある、ハリウッドの「何でもアジア人」担当の名脇役ジョージ・チェン(George Cheung)演じるタイ軍曹(Lieutenant Tay)を「爆破」したシーン。その時ランボーの背後にそびえ立っていた美しい滝の場所はこちら。
ランボー2滝のロケ地

Cascadaは「滝」、El Saltoは「ジャンプ/跳躍,宙返り(ムーン・サルトの「サルト」)」などの意味で、Cascada El Saltoは「跳躍の滝」「飛び跳ねる滝」といった和訳になるのでしょうか。

まさにジャングルの中なので、上記の住所はアバウト(正式な住所はない)で、座標のほうが正確です。

英語の情報もあまりない場所

「ランボー」シリーズほどメジャーな映画だと、例えロケ地が海外でも、英語で書かれたネット情報がたくさんあるはずです。事実、「ランボー1」のほうはかなりあります。

しかし、「ランボー2」のこの滝の英語の情報はほとんどありません。

また、「この場所を訪れた」という英語話者の動画やサイト、SNSもほぼありません。情報があったとしても、どれもスペイン語(メキシコ語)で、その数も少ないです。

つまり、それほど現地の人(メキシコに住む人)以外は、行きにくい場所であるということです。

通常は海側からアプローチ

場所が場所だけに、ジモピー以外はあまりこの滝には行くことはないようですが、それでもこの滝に行くとなると、海側(南西側)からのアプローチが良いらしいです。

  1. まずはColonia Luces en el Mar(コロニア・ルセス・エン・エル・マール)などのLaguna de Coyuca(コユカ湖)周辺の町を起点とします。
  2. このCascada El Saltoの滝がある川は、このコユカ湖まで流れ出ているので、
  3. 後は起点となるコユカ湖周辺の町でガイドを雇って、川沿いを登っていくだけ。

という形になるようです。滝の北側になるほど山が険しくなっていくので、北側からのアプローチは難しいでしょう。河口になるほどなだらかになるので、河口から川沿いに上がっていくほうがアクセスはしやすく、正攻法のはずです。

実際、この滝を訪れたメキシコ人の動画などを見ると、ガイドを雇って、コユカ湖近くの町から車で出発し、途中からは徒歩で川沿いにジャングルの中をアプローチしていました。

しかし、そのガイドは、しっかり猟銃を背負っていたので、そういう場所なのでしょう。その銃の用途も必ずしも野生動物のためだけとは限らないようです。観光がてら、日本人がヒョイと訪れるようなロケ地ではなさそうです。

「ランボー2」の撮影中の現地でのインタビューを見ていると、

  • ジョン・ランボーを演じたシルヴェスター・スタローンが「蛇やサソリがたくさんいる。」
  • コー・バオを演じたジュリア・ニクソンは「蚊がすごい。」「スタッフが下痢など体調不良に苦しんでいた。」

と語っていました。

コー・バオの最期もこの近く

そのコー・バオが最期を迎えるシーンのロケ地も、この滝のすぐ近く(少し下流)と見られます。

水量よりも岩肌が目立つ特徴が、この滝がある川と一致しているので、この現場でまとめ撮りしたはずです。

2.ランボーが弓矢を放った橋

ランボーが少し高台から榴弾矢じり付きの弓矢を放ち、軍用車両などを「爆発」させた橋がこちら。前述のエルサルト滝からはかなり離れた場所にあります。
ランボー2の弓矢の橋

洪水で大破

オミトラン川にかかるこのオミトラン橋は、1960年代初めに建設され、全長は約150m。Mexican Federal Highway(メキシコ連邦ハイウェイ)95号線が通っている橋です。

実はこの橋、2013年の大雨による氾濫で、橋の半分ほどが崩落して流され、大きく破損したそうです。
Cae el puente de 'Rambo II' y deja incomunicados a habitantes
https://www.youtube.com/watch?v=OaL7SRYQcuU

映画の中で車両2台を爆発させた2ヵ所とちょうど同じ場所が洪水で崩落してしまっています。当時の爆発はCG(VFX)ではなかったので、この撮影時の爆発が橋にダメージを与え、洪水で崩壊しやすい状態を招いたのではないか?とちょっと頭によぎりました。

その後、この橋は復旧し、当時はすべてコンクリートの見た目だったのが、今は橋の半分ほどの下部(主桁)が、コンクリートではなく、鉄が露出するような形で支えられている見た目で復旧しています。

橋の北西の斜面に作ったベトナム風の村

この橋の北西の斜面(上の写真の橋の左側の部分)は、本来何もありませんが、そこに茅葺き屋根の掘っ立て小屋をたくさん作って、(メキシコだけど)ベトナム風を演出。鶏の血を使ってランボーが兵士を誘導するシーンなどが撮影されました。

スタローンは映画『ロッキー』シリーズでも鶏を追い掛け回し、鶏卵を生で飲みまくり、スタローン映画では鶏は無くてはならないアイテムとなっています。

この川は水量の増減が激しいらしく、映画の撮影時は水量が少なく、橋桁の根元まで見えており、兵士が露出している砂地を走り回っていました。

3.砲艦と激突し飛び込んだ川

ランボーとコー・バオらが川を船で移動するシーンが何度かありますが、その川のシーンは前述の滝や橋とはまったく違う、海の近くで撮影されていました。
ランボー2の船と川
  • La laguna de Coyuca en El Carrizal, Guerrero, Mexico
    (Coyuca Lagoon near Acapulco, Mexico)
  • メキシコのコユカ湖と、そこからエル・カリサルにかけて広がるラグーン(潟)
  • およその座標:16.949617276572294, -100.08807615111608

砂浜で隔てられた潟なので波がほとんどない

「ランボー2」のロケ地を近くの主要都市であるAcapulco(アカプルコ)と大雑把に表示してあるサイトが多いですが、厳密にいうと、アカプルコではなく、少し離れた Laguna de Coyuca(コユカ湖)とその西にあるEl Carrizal(エル・カリサル)の町の間にあるラグーン(潟)のあちこちで、船のシーンが撮影されています。

川(潟)で川岸などは水量や水草、マングローブの茂り具合などで見た目の地形が変形してしまい、ピンポイントの場所の特定は難しいですが、映画の遠方に映っている山の形が一致します(上の写真)。

劇中、水面にほとんど波がないのは、そこが海から砂浜で隔てられた河口(潟)であるためです。

撮影隊のメキシコでの本拠地もここ

撮影隊も、Laguna de Coyuca(コユカ湖)の近くのビーチに「メキシコでの本拠地」を構えており、劇中に(アジア感を演出するために)登場した巨大な仏像も、そのビーチに置かれていました。

メイキングのスタローンらの撮影中のインタビューも、この浜辺で撮影されており、打ち寄せる波がスタローンの背後に映っています。

ちなみに、アカプルコから海沿いを、このロケ地を介して北上していくと、砂浜が断続的に続いた先には、映画『ショーシャンクの空に』のエンディングで登場したZihuatanejo(シワタネホ/ジワタネホ)があります。
『ショーシャンクの空に』で映っていた「シワタネホ」の実際のロケ地は、英国領バージン諸島のセント・クロイ島(127A Smithfield Road, Frederiksted, Virgin Islands)ですが、『ショーシャンクの空に』の製作陣や作者が本来イメージしていた海は、この『ランボー2』の撮影隊が本拠地を構えたメキシコのこの辺りの海浜だった、ということになります。

意外とコミカルなコー・バオの仏陀の御守

この川の船上で、コー・バオとランボーが「御守」について会話するシーンがあります。

Rambo: What is this?
(これは何?←コー・バオのネックレスを指さして)

Co-Bao: It bring me good luck. What bring you luck?
(幸運をもたらしてくれるものよ。あなたの御守は?)

Rambo: I guess this.
(これかな。←ナイフを見せて。)

ランボーにとってナイフが「御守」ということで、ランボー・シリーズはナイフで始まり、ナイフで終わるような作りになっています。
→詳細:カナダが舞台の映画「ランボー」(スタローン/ホープ/ナイフ)

この時、コー・バオが見せたネックレスをよく見ると、仏陀(ブッダ)が満面な笑みを浮かべていて、意外とコミカルでひょうきんな翡翠(ヒスイ)の像だったことがわかります。
ランボー2女兵士コーバオのネックレス

翡翠(ヒスイ)なので、光の加減によって、すべて緑に見える時もあれば、白くみえる時もあるようで、劇中でもシーンによって見え方が異なっています。

ちなみにアマゾンでレプリカが売られています。結構、劇中のものに似せて精巧に作られているようですが、色味は個体差があるようです。

上のロケ地(滝の近く)でのコー・バオの最期のあと、ランボーは形見としてのネックレスを首に着け、コーバオが身にまとっていた赤い服の切れ端をハチマキとして頭に巻いて、『怒りの脱出』の「怒り」の戦いに臨みます。

映画『ランボー3/怒りのアフガン』(Rambo III、1988年)でもこのネックレスは登場しますが、なぜかランボーは現地の少年にあっさりとネックレスをあげてしまいます。

もしランボーがこのネックレスを持ち続け、「ランボー4」こと『ランボー/最後の戦場』(Rambo、2008年)のエンディングにて、このネックレスを大切に身に着けて、アメリカの実家への帰路を歩くシーンとなっていたなら、もっと感動的なものになっていたことでしょう。

なぜなら、コー・バオは「アメリカに行きたい。そして平穏な生活を送りたい。」と語っていて、シリーズを通して、ランボーがキスを交わした唯一の女性だったからです。

もし「ランボー2」の脚本を担当したジェームズ・キャメロンが、「ランボー3」と「4」の脚本も担当していたなら、この辺り(女性のキャラクターの扱いやバランス、ヒューマニズム)を、もっとうまく創作していたことでしょう。
→関連記事:ターミネーターがT2で完結した理由

まとめ:「撮影も戦場」だったはず

ランボー2のロケ地マップ地図

以上のロケ地3点を地図にまとめると上図のような位置関係になります。

広範囲に及んでいます。

「ランボー2」はベトナムが舞台、ロケ地はメキシコ。しかし、両国とも緯度がだいたい同じ・・・北緯17度線 (1954年のジュネーヴ協定によって設定された北ベトナムと南ベトナムの暫定的な軍事境界線)はベトナムとメキシコも通るので、気候的には近いものがあり、雰囲気は遠からず近からず、といったところです。

おそらくベトナムの人から言わせると、厳密には「ベトナムと全然ちゃうで。なんちゃってベトナムやん。」という感じなのかもしれませんが、当時のハリウッド映画のロケ地の選定としては、現実的だったといえるでしょう。

この熱帯ジャングルの中で、ボディビルの厳しい食事制限とトレーニングで肉体を維持しながらの撮影は、過酷だったに違いありません。飲料水などちょっとした食あたりで体調を崩して体重減になろうものなら、ランボー(スタローン)はずっと上半身裸なので、ごまかしが効きません。

「ランボー2」のロケ地を振り返って思うことは、この映画は、撮影自体が一種の「戦争」(戦場みたいな撮影)だったんだろうな、ということです。改めて「ランボー2」のすごさをロケ地から感じました。

ランボーは劇中、ソ連兵らから様々な拷問を受けますが、最近のロシアの蛮行を見る限り、「ランボー2」の内容は決して絵空事ではないことが分かります。

「ランボー2」は1985年製作ということで、もうすぐ40年が経とうとしていますが、当時はマンガ的にとらえられていたこの映画も、40年経った今、むしろ現実的なものとして見応えがさらに増してきているのではないでしょうか。

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