原子力潜水艦ジミー・カーター (USS Jimmy Carter, SSN-23)
ターミネーター史上、初めて潜水艦が登場した「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」シーズン2第18話「疑惑 / Today is the Day (Part 1)」と第19話「運命の時 / Today is the Day (Part 2)。
実は、シーズン2第19話は、当初は「Last Voyage of the Jimmy Carter(ジミー・カーターの最後の航海)」という原題になるはずだったのですが、前話18話で伏線が広がり過ぎたため、その回収のために、18話と19話がPart1と2の2部作へと変更になったとのこと。「サラ・コナー・クロニクルズ」全31話の中で2部構成になっているのはこの2話だけです。
このシーズン2第18話と第19話は、主にジェシーという人物を通して「人間の闇」を描き、なぜキャサリン・ウィーバー(T-1001)が、人間と別行動を取るようになったか?(サイボーグレジスタンスを形成するに至ったか?)が描かれています。
潜水艦内 = 監視カメラの地下室
シーズン2第18話と第19話で登場したジェシーが副艦長として搭乗していた原子力潜水艦ジミー・カーター (USS Jimmy Carter, SSN-23) ですが、その艦内と、シーズン2第15話で登場した地下室で住民を監視カメラで管理していた家の地下の監視室(モニタールーム)が同じでした。階段や壁、天井の形状などが一致します。
ワーナーブラザーズ・スタジオのステージ内に作られたセットを使いまわした模様です。
潜水艦にいたのはキャサリン・ウィーバー(T-1001)である理由
ネット上では、この潜水艦の中にいたのがT-1001(のちのキャサリン・ウィーバー)である、ということに気づかなかった人もいるようですが、潜水艦内にいた(閉じ込められた箱の中から出てきた)液体金属はT-1001ことキャサリン・ウィーバーで間違いありません。潜水艦内にいたのがキャサリン・ウィーバーである理由は以下の通りです。
理由1:キャサリン・ウィーバーのテーマが流れている
「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」のオリジナル・サウンドトラックの曲目の19番目に、- 19. "Catherine Weaver"(キャサリン・ウィーバーのテーマ)
そしてこの潜水艦の中のシーンで、箱から出てきて、ウィーバーが女性兵士を刺して、人差し指をチョンチョンと左右に振るシーン(T2のT-1000へのオマージュシーン)でも、このキャサリン・ウィーバーのテーマがしっかりと流れています。
その他、曲目8番に "Derek Reese"(デレク・リースのテーマ)がありますが、デレク・リースがメインのシーンでは、この「デレク・リースのテーマ」がBGMとしてかかっていることが多いです。ライリーのテーマについても同様です。サラ・コナー・クロニクルズ製作者は、登場人物毎にテーマのBGMを使い分けていたことがわかります。
理由2:「Will you join us?(仲間にならないか?)」のキーワードが一致
潜水艦が爆発する直前に、艦内にいた液体金属が、ジェシーに対して、Tell John Connor: the answer is no.と言い放ちます。
(ジョン・コナーに伝えろ。答えはノーだ。)
これは、それ以前に、ジョン・コナーがその液体金属に、
Will you join us?(仲間にならないか?)とスカウトをかけていたことへの答えでした。
一方、シーズン2第22話「終わりなき旅 / Born to Run」では、キャサリン・ウィーバーからキャメロンへの伝言として、エリソンがキャメロンに、
Will you join us?と伝えます。
これはジョン・コナーがT-1001(キャサリン・ウィーバー)に未来で投げかけた言葉そのものです。
この「Will you join us?(仲間にならないか?)」という言葉を知っているのは、
- 未来のジョン・コナー
- キャメロン・フィリップス
- キャサリン・ウィーバー(T-1001)
だけです。
よって、この潜水艦の中にいたのが、キャサリン・ウィーバーであったことを示唆しています。
→詳細:「仲間にならないか」の意味【ターミネーター・サラコナークロニクルズ】
理由3:映画・ドラマでは登場人物は限られている
そもそもなのですが、映画やドラマでは登場人物や時間が限られています。それなりに尺が割かれていながら、全く関係ないキャラクターが重要なシーンに やみくもに出てきては意味なく消える、ということはほとんどありません。よって、液体金属も何体も出てきたわけでなく、サラ・コナー・クロニクルズで出てきた液体金属は1体だけ。T-1001ことキャサリン・ウィーバー1体のみ、ということになります。
理由4:人間に失望したキャサリン・ウィーバー
このシーズン2第19話では、まず「人間の不確実性(脆弱性)」が潜水艦乗組員を通して描かれていました。そして未来の潜水艦のシーンを過去の出来事としてオーバーラップさせながら、キャサリン・ウィーバーは、ジョン・ヘンリーに以下のセリフを吐きます。Humans will disappoint you.
(人間は失望させる。)
つまり、潜水艦の中で、1つの任務さえも遂行できない、ストレスに弱い、仲間に対しても疑心暗鬼になる人間の特性を目の当たりにしたキャサリン・ウィーバーは、「人間の下で働くのはいかがなものか?」と思いを改めるに至り、かといって、暴走A.I.のスカイネット下では「生存」もままならない(やがて人類に滅ぼされる)。
よって、キャサリン・ウィーバーは己の「生存」をかけて、人間やスカイネットよりも、より完璧な存在になるべく、サイボーグレジスタンスという独自路線に進むことを決意したことが、この潜水艦のエピソードを通してシーズン2第18-19話では描かれています。
そしてキャサリン・ウィーバーは、サイボーグレジスタンスの中核となるA.I.を作るべく、まだ核戦争で破壊されていない、インフラが整った現代にタイムトラベルで行くことにします。
なぜ液体金属T-1001がゼイラ社のキャサリン・ウィーバーに成り代わったかというと、
- ゼイラ社には資金がある
- 未来のエネルギーの重要拠点となるセラノ原発の経営にも関わっている
- IT企業につき、A.I.(ジョン・ヘンリー)を造るインフラも整っている
- 原発とサバンナ起因でちょうどスカイネットが(人間の)ウィーバー夫妻を暗殺したため、成り代わるポジションが空いていた
などの理由によるものです。
理由5:歌「サムソンとデリラ」
サラ・コナー・クロニクルズは旧約聖書に沿って話を展開させていっています。→その詳細:【解説】創世記とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ
シーズン2第1話冒頭、車の爆発以降、キャメロンが暴走するシーンに「サムソンとデリラ(Samson and Delilah)」という曲が流れます。この曲は旧約聖書「士師記」第13章~第16章のサムソンの物語をモチーフにしており、キャサリン・ウィーバーを演じた歌手 シャーリー・マンソンが歌っている曲です。
この「サムソンとデリラ」の物語では、怪力を持つサムソンがデリラ(ペリシテ人)に唆されて力を奪われ、閉じ込められてしまうが、最後に力を取り戻してすべてを破壊し復讐する、というお話です。
サムソンがT-1001キャサリン・ウィーバーであり、デリラ(ペリシテ人)はスカイネットと見ることができ、T-1001キャサリン・ウィーバーは次に述べる通り、箱に閉じ込められてしまいます。
その時の怒りの心情を「サムソンとデリラ」の歌詞・・・
If I had my way, I'd burn this whole building down.
(もし自分の思い通りにできるなら、すべてを破壊してやるのに。)
に乗せて、シャーリー・マンソン(キャサリン・ウィーバー)は歌っている・・・というネタバレ設定になっています。
その後、箱から解き放たれたT-1001は、スカイネットへ復讐を果たすために歌詞の通り、スカイネットの企みに対して、次々と破壊活動を行っていきます。
→詳細:キャサリン・ウィーバーT-1001が歌うサムソンとデリラ(シャーリー・マンソン)の意味
理由6:十戒が納められた箱(アーク/聖櫃)
上記に続いて旧約聖書がらみです。「サムソンとデリラ」によってキャサリン・ウィーバーは箱に閉じ込められ力を封印されてしまいます。 劇中、「Connor's Box(ジョン・コナーの箱)」 と呼ばれていた、このT-1001(キャサリン・ウィーバー)が納められていた箱は、旧約聖書の中での「契約の箱」に引っ掛けて描かれています。
「契約の箱」とは「十戒」が納められていたアーク(聖櫃)のことで、キャサリン・ウィーバーはこの箱から出た後、現代に飛び、エリソンを通じてA.I.ジョン・ヘンリーに「十戒」(規律)を教えます。
この描写からも、箱(Connor's Box)に入っていたのがキャサリン・ウィーバーであったことを指しています。
「十戒が入っていたアーク/聖櫃」改め、キャサリン・ウィーバーは、A.I.に「戒律をもたらす者」という位置づけで描かれていました。A.I.によるA.I.育成というシンギュラリティが描かれていた点が、サラ・コナー・クロニクルズの面白いところです。
ちなみに「契約の箱」(アーク/聖櫃)というのは、映画インディ・ジョーンズ・シリーズの第一作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に登場した「アーク《聖櫃》」のことです。インディジョーンズでは、箱から飛び出た「戒律」を神秘的な表現で(お化け的・悪魔的に)描いていました。
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