ターミネーターでT2限定のヒット要素とは

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ターミネーター2がヒットした要因

ターミネーター・シリーズは全7作品ありますが、その中で興行収入が一番で、かつ世間的な評価も一番高いのが『ターミネーター2』(Terminator 2: Judgment Day、T2、1991年)です。
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ターミネーター・シリーズの中には、T2よりも映像技術が上だったり、T2よりもお金をかけて作った作品もあります。しかしなぜこのT2が他のターミネーター作品よりも大ヒットし、評判がよいのか?というと、それは他のターミネーター作品にはない、T2だけにあるヒット要素を持っていたからです。

「T2だけにあるヒット要素」とは何か(T2はなぜ大ヒットしたのか?)、一言でいうとT2は『E.T.』だったから、です。

T2以外に、この「E.T.要素」を持つターミネーター作品はありません。

T2とE.T.は同じ

『E.T.』とは原題も E.T.(The Extra-Terrestrial)のスティーヴン・スピルバーグ監督映画です。『E.T.』は1982年に世界的に大ヒットして、世界歴代興行収入1位の記録を更新。『ジュラシック・パーク』(1993年)に抜かれるまで長きにわたって映画興行収入1位の座に君臨していました。

T2が作られた1991年でも、まだ映画『E.T.』の王者感は続いていました。

その『E.T.』要素をターミネーター作品に取り入れて成功したのがT2でした。

以下のように、T2と『E.T.』は基本構造は一致しています。

 基本構造(ヒットの法則) 

  1. 父親不在の不安定な家庭環境にある子ども(少年)と母親
  2. 超人的な力を持つ非人間(異星人やサイボーグ)との交流と相互成長
    • 2-(1)二輪車アクションと二人乗りでの交流
    • 2-(2)異文化交流と相互成長
  3. 一度死ぬが生き返るハラハラドキドキ設定
  4. 最後は涙のお別れで感動

1.父親不在の不安定な家庭環境にある子ども(少年)と母親

映画『E.T.』では、主人公エリオットは、シングルマザーの家庭環境にある少年。父親はサリーという女性とメキシコに行ってしまったらしく、そのことで母親が涙するシーンが冒頭にあります。母親はイライラ気味、エリオットも反抗期気味です。エリオットは未知なる生物を信じている夢見心地な描写がありますが、それがE.T.への順応の前フリとなっています。

一方、映画T2も、主人公ジョン・コナーはシングルマザーで、母親サラ・コナーはぺスカデロ警察病院に収監中で、養父母に育てられている反抗期な少年。母親サラ・コナーは終始、イラだっています。ジョン・コナーは数々のヤンチャなことをしでかしてますが、そのスキルがその後の展開の前フリとなっています。
→詳細:ジョン・コナーの犯罪履歴とパトカー端末

2.超人的な力を持つ非人間(異星人やサイボーグ)との交流と相互成長

映画『E.T.』では、「はるか300万光年の彼方から」E.T.がやってきて、超人的な能力を発揮してエリオットの傷を治したり危機一髪を救いながら、エリオットら子どもたちと交流し、相互に成長していきます。

一方、映画T2も、「2029年の未来から」ターミネーターT-800がやってきて、超人的な能力を発揮してジョン・コナーの危機一髪を救いながら、交流し相互に成長していきます。

2-(1)二輪車アクションと二人乗りでの交流

映画『E.T.』では自転車BMXで二人乗りで月を背景に空を飛び、追っ手から逃走する二輪車アクションを繰り広げます。

映画T2でもバイクで宙を飛び、二人乗りして追っ手から逃走する二輪車アクションを繰り広げます。

どちらの映画も、二人乗り(タンデム)の図が親睦を深める象徴のような描写となっています。

2-(2)異文化交流と相互成長

映画『E.T.』では、E.T.が地球の言語を学んでいき、お互いに交流を深めながら相互成長していきます。

映画T2でも、ターミネーターT-800が、人間の「今時の言語」や笑顔などの風習を学んでいき、お互いに交流を深めながら相互成長していきます。

コミュニケーションにおける言語の重要性が認識できます。

3.一度死ぬが生き返るハラハラドキドキ設定

映画『E.T.』では、一度、E.T.が死にます(心停止?)。しかし、その後復活します。なぜE.T.が復活できたのか?というと、それは映画『E.T.』の冒頭に答えがあります。宇宙船からの信号(テレパシー)でE.T.たちの心臓が赤く光るシーンです。どうやらE.T.という生物は「共鳴力」が非常に強く、エリオットや鉢植えの花とも連鎖(共鳴)するほどで、逆に外部(宇宙船の仲間)からの共鳴力でも蘇生できるようです。物を浮かせたりもできるので、『スターウォーズ』でいう「フォース」に通じる力なのかもしれません。
→関連記事:E.T.はフォースの使い手でヨーダと同世界の生物

一方、映画T2でも、ターミネーターT-800が、一度、敵方T-1000に突き刺されて「死に」ます。しかし、その後、「補助電源」起動で復活します。

4.最後は涙のお別れで感動

映画『E.T.』では、最後は"Stay."(ここにいて。)と言うエリオット少年に対して、E.T.は"I'll Be Right Here."(ここにずっといる。)と額を指して別れていきます。

映画T2でも、最後は"Stay with us!"(ここにいて。)と言うジョン・コナー少年に対して、ターミネーターT-800は、"I know now why you cry, but it's something I can never do. Goodbye."(人間がなぜ泣くか分かった。しかしそれは私にはできないことだ。さようなら。)と少年の涙を指でぬぐって別れていきます。

ともに簡単な英語と、指での分かりやすいボディーランゲージという万国共通のピクトグラム的コミュニケーションが展開しています。それはあたかも海外留学や異文化交流で得られる感動とそっくりです。

ジェームズ・キャメロンがターミネーターをE.T.に寄せていった痕跡

ちなみにターミネーターが「E.T.化」していった痕跡が残っているシーンや映画があります。

「ターミネーター」の「E.T.化」1

夜景

映画『E.T.』(1982年)では、冒頭の宇宙船到着時、山の上からE.T.が夜景を眺めて、人間が生活している異質な世界に到着していることを強調する演出があります。

一方、映画『ターミネーター』(1984年)では、冒頭のタイムトラベル到着時、山の上からターミネーターT-800が夜景を眺めて、現代という異質な世界に到着したことを強調する演出があります。
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犬が吠える

また、映画『E.T.』では最初、エリオットの飼い犬HarveyにE.T.が吠えられます。

一方、映画『ターミネーター』シリーズでは、ターミネーターが犬に吠えられるのはお馴染みのシーンとなっています。

ともに「犬が吠える」=「人間とは違う異質なものが存在している」という表現技法の1つに犬が使われています。

「ターミネーター」の「E.T.化」2

そしてジェームズ・キャメロンが、まさに「E.T.」みたいな映画を作ろうしたのが、T2直前に監督した映画『アビス』(The Abyss、1989年)です。
この『アビス』は、巷では「未知との遭遇 海底版」と揶揄されているように、唐突に深海から未知の生命体が登場し、手と手をつないだり、後半からはまるでスピルバーグ映画のようなメルヘン仕様になっていきます。

最終的には人間と相互理解する非人間ネタとそれを描く映像技術(CG/VFX)は、次作である「ターミネーター2」へ転用されることになります。

『アビス』はその辺りがあまりに唐突過ぎてまとまりもなく、テンポも悪くてコケてしまいましたが、ジェームズ・キャメロンがターミネーターを、当時映画の王座に君臨していた「E.T.」に寄せていった痕跡が『アビス』にて確認することができます。

E.T.でハズレたT2のアタリ

その他にも映画『E.T.』と『ターミネーター2』はちょっとした共通点があります。

伝説の迷作『E.T.』

映画『E.T.』から公式に版権を取って、アメリカのビデオゲーム会社Atari(アタリ)が、『E.T. ジ・エクストラ・テレストリアル』(E.T. The Extra-Terrestrial)というゲームを発売したものの大失敗。
あまりに大量に売れ残ったソフト(カセット)は工場の敷地に埋められました。

しかし、今では伝説のクソゲー『ET』として逆に有名になり、数十年前に廃棄された(地中に埋められた)『E.T.』のゲームソフトを「発掘」するプロジェクトまで実施され、工場跡地を掘り起こして大量のE.T.ソフトが回収されました。

Atari 2600版“E.T.”の伝説を追ったドキュメンタリー映画「Atari: Game Over」

歴代クソゲー1位に選出されたE.T.!アタリは倒産!都市伝説が生まれた!
伝説のクソゲーE.T. ジ・エクストラ・テレストリアル。80年代にアタリ(ATARI)社から発売。このゲームの大コケが駄目押しとなり、アタリ・ショックが引き起こされたとも。埋立地に大量に廃棄処分されたという都市伝説「ビデオゲームの墓場」も追う!
https://middle-edge.jp/articles/stiQC
ゲーム市場の創造と破壊者【しくじり企業】~旧アタリ~
https://www.youtube.com/watch?v=8PuuN-G1UQ4

T2のジョン・コナーが愛したアタリ

そんなアタリですが、T2では、ジョン・コナーがAtari(アタリ)社のモバイル・コンピューター(ATARI Portfolio)を愛用しており、銀行のATMをハッキングして現金をチョロまかしたり、サイバーダイン社のセキュリティ・ロックを解除する際に大活躍します。
Easy money!「イージーマネー!・・・チョロイね。」

というジョン・コナーの名言は、このAtari(アタリ)のコンピューターなくしては存在しません。
→詳細:ターミネーター名言集一覧表(頻出ランキング)

以上、『E.T.』と『T2』は「アタリつながり」もあり、『E.T.』で大コケしたアタリが、『T2』で少し名誉挽回した格好となっています。

まとめ:ヒットの鉄板

以上の通り、T2とE.T.は基本構造が同じで、数々の共通点があります。子どもと非人間(宇宙人や動物、ロボットなど)との交流と成長、そして旅立ち物語はヒットの法則として鉄板なのかもしれません。

  1. 不遇な環境に置かれた子どもが(できれば美少年がベスト
  2. 苦難を乗り越え、
  3. 成長していくサクセス・ストーリー

に、最後は「泣けるお別れ」というスパイスを振りかければ、「大ヒット映画完成」という秘伝のレシピになっているということなのでしょう。

日本でいえば、T2は「ドラえもんと同じ」とも言えますが、「家庭環境に問題のある子ども」が「最後は悲しいお別れ」する点で、E.T.のほうが よりT2に近いと言えるでしょう。

ターミネーター・シリーズでは、T2以外には、この子どもとの交流・相互成長の要素を持った作品はありません。唯一、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」がそれに近い要素を持っていますが、すでにジョン・コナーが高校生に成長してしまっていたので、「子供」という要素は薄くなっています。

『ターミネーター・ニューフェイト』が大コケした原因の1つに、「E.T.がエリオットを殺すような」内容を作ってしまったことが挙げられます。

T2が他のターミネーター作品より抜きん出て大ヒットし、評価が高いのは、この鉄板の基本構造を持っていたから、と言えるでしょう。

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