映画『ターミネーター3』(Terminator 3: Rise of the Machines、T3)の冒頭、腕時計が不自然に強調されるシーンがあります。
ターミネーター3の腕時計
問題のシーンは、レディース・ナイトのバー、Agua Dulce(アグア・ダルシー)のDesert Starにて。車に乗り込んだシュワちゃんT-850に、なぜか腕時計が落ちてきて、その腕時計でタイムトラベルの到着日時(現在時間)を確認します。その時、以下のように表示されています。ACCURATE
07.24.2004
正確
2004年7月24日
しかも腕時計の文字盤のAPというブランド・ロゴが一番目立つように撮影されています。
映画やTVでは、(昔はそれほどではありませんでしたが)近年・・・特に2000年代に入ってからは、こういった小道具のメーカー名は、大人の事情で極力、画面に映さないように撮影される傾向が強くなっています。
例えば、ターミネーターに関しては、
- 「ターミネーター4」ではジョン・コナーがサラ・コナーのテープの音声を聞いていたカセットプレーヤーのRadio Shackというロゴが消されていました。
- また、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」でもサラ・コナーが使っていたボイスレコーダーのSONYのロゴが消されていました。
→詳細:サラ・コナーのボイスレコーダー SONY ICD-UX80/UX70
なぜターミネーター3は腕時計を大きく映し出したのか
ではなぜT3では、これ見よがしに時計のブランド名もガッツリ見せつけているのでしょうか?そこにも「大人の事情」がありました。
T3の腕時計はAudemars Piguet(オーデマ ピゲ)
まずこのAPというのは、スイスの高級腕時計メーカー、Audemars Piguet(オーデマ ピゲ)のことです。そしてネット上には以下のような情報があります。
In 2003, Swiss watchmaker gaint Audemars Piguet created a watch for the release of Terminator 3: Rise of the Machines which was as big as the main man himself.
The watch firm had already designed a watch for the Governator for his role in the 2000 Sci-Fi thriller The 6th Day. In 2003, Arnie and Audemars Piguet were back・・・
2003年に スイスの高級腕時計メーカー、Audemars Piguet(オーデマ ピゲ)はターミネーター3の公開に合わせて腕時計を創り出した。この時計メーカーはすでに2000年のSFスリラー映画「シックス・デイ」にて、ガバネーター(州知事ガバナー+ターミネーター=アーノルド・シュワルツェネッガーの愛称)の役のために時計をデザインしていた。2003年に、再びアーニー(シュワルツェネッガー)とオーデマ ピゲのタッグが戻ってきた・・・
https://www.barnebys.com/blog/theyll-be-back-audemars-piguet-limited-edition-terminator-watch-hits-auction-block
とのことで、この腕時計は、
The Audemars Piguet Royal Oak Offshore T3 Chronograph(オーデマ ピゲ・ロイヤルオーク オフショア ターミネーター3モデル クロノグラフ チタン )
で、T3のために作られた特別仕様です。T3モデルは1000本限定で入手困難ですが、同社の類似モデルは通販で日本でも買うことができます。一例↓
時計メーカーとのタイアップ(宣伝)だった
つまり、映画「シックス・デイ」でこの時計メーカーとシュワちゃんがタイアップしたことをきっかけに、T3でもこのメーカーの時計をタイアップで宣伝するために挿入された大人の事情(企業案件)シーンだった、ということです。よって、この「ACCURATE(正確)」のシーンは、
- タイムトラベルで到着した日時が予定と合致している
- このメーカーの時計は正確な時を刻む(すばらしい、おススメ!)←宣伝
という2つの意味が含まれていたことになります。ある意味ステマ、あるいは深夜の通販番組的ギャグシーンだったとも言えます。
タイアップ商品で舞台の日時を示したターミネーター作品は、T3以外にはありません。
プロダクトプレイスメント
このようなタイアップ宣伝を、Product Placement(プロダクトプレイスメント)とも言います。プロダクトプレイスメント(プロダクト・プレイスメント)は、広告手法の一つで映画やテレビドラマの劇中において、役者の小道具として、または背景として実在する企業名・商品名(商標)を表示させる手法のことを指す。
この広告費で製作費・・・(の)かなりの部分のコストを補ったと分析されていて、映画スタジオにとってのもう一つのリスクヘッジとしても注目されている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/プロダクトプレイスメント
但し、度が過ぎたり、あまりにわざとらしいと観客は興ざめし、映画そのものの評価も下がる、というリスクも「プロダクトプレイスメント」にはあります。
サングラスもタイアップ
この腕時計のシーンに続いて、シュワちゃんT-850は車内にあったサングラスも掛けるのですが、そのサングラスもT3モデル(T3とのコラボ商品)としてレプリカが日本でも販売され、→詳細:ターミネーター3のコンビニampmってまだあるの?
T3は商品販売のタイアップ尽くしで、お金の臭いがプンプン漂っています。
ドドーンと画面に大きく映し出されていたam pm も「プロダクトプレイスメント」だったと考えらえます。
観客はT3にお金を払って各メーカーのコマーシャルを見せつけられていた、とも言えるでしょう。
「T3はお金以外に得るものはないよ」J.キャメロン
これだけお金の臭いが漂うと、かつてアーノルド・シュワルツェネッガーがT3に出演しようとした時に、アドバイスしたジェームズ・キャメロンの以下の言葉が思い出されます。Nothing less than $30 million.
T3は出演料(3000万ドル)以外に得るものは何もないよ。
→詳細:T2で完結,スープに小便【ジェームズ・キャメロン語録】
ということで、シュワちゃんはT3出演料以外にも、企業案件でかなり稼いだのではないでしょうか。
ターミネーター3の日米評価の比較
そんな商魂たくましい企業広告映画T3の評価はどうだったのか、今一度、ターミネーター3の日米の評価をふり返ってみます。ロッテントマトの評価
アメリカの映画評論サイト「ロッテントマト」における、ターミネーター全作品の評価を表にまとめると下図のようになります。 →この図表の詳細:ロッテントマト評価順【ターミネーター全作品】T3は、
- TOMATOMETER(批評家の評価)だと、あの大赤字で大コケ爆死したターミネーター・ニューフェイト(Dark Fate)とドングリの背比べ、
→詳細:ターミネーター3とニューフェイトの比較 - AUDIENCE(観客の評価)だと最低評価・・・T3、T4、ジェニシスが底辺で団子状態の三つ巴、
となっています。
Yahoo!映画
日本のYahoo!JAPANが運営する映画情報やレビューの総合サイト「Yahoo!映画」では、ターミネーター映画の評価ランキングは以下の通りです。- 4.5点:ターミネーター2
- 4.4点:ターミネーター1
- 3.6点:ターミネーター・ニューフェイト
- 3.4点:ターミネーター4
- 3.3点:ターミネーター・ジェニシス
- 2.8点:ターミネーター3
https://movies.yahoo.co.jp/find/?query=terminator
ターミネーター3は日本でも最下位、しかも驚安の2点台を唯一、たたき出しています。
日米で同じ順位
観客(AUDIENCE)の評価に関しては、日米どちらも評価順位は同じなのがおもしろい点です。日本ではアメリカよりもシュワちゃん盲信者が多いにもかかわらず、T3の評価がアメリカよりもぶっちぎりで低いのは、やはりT2からの(匿名人の)美的落差への失望・違和感と、T3の結末に対する反感・嫌悪感がアメリカよりも大きい・・・つまり核アレルギー・・・核爆弾の悲惨さを身をもって知っているから笑えない・・・という点も大きく影響しているように感じます。
アメリカで核爆弾といえば、「核を落とす側の論理や価値観」で描かれている映画が多かったり、冷蔵庫に入っていれば大丈夫レベルのイージーに考えられているフシがいろいろな映画の描写(インディ・ジョーンズなど)からも見受けられ、そのあたりに温度差を感じざるをえません。
何はともあれ、お気楽なエンタメ、コメディ・アクションムービーのT3であることは、腕時計の1シーンにも集約されていました。
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