映画を観ていると、やたら「ジョン」という名前の主人公が多いことに気づきます。
ジョンという名前の映画の主人公たち
例えばメジャーなハリウッドのアクション系の映画からピックアップしただけでも以下のようにジョンだらけです。むしろジョンという名前の役柄を避けるのは難しいのかもしれません。- ジョン・マクレーン(ダイ・ハード・シリーズ/ブルース・ウィリス)
- ジョン・ランボー(ランボー・シリーズ/シルベスター・スタローン)
- ジョン・メイトリックス(コマンドー/アーノルド・シュワルツェネッガー)
- ジョン・クルーガー(イレイザー/アーノルド・シュワルツェネッガー)
- ジョン・コナー(ターミネーター・シリーズ/エドワード・ファーロング他)
- ジョン・ウィック(ジョン・ウィック/キアヌ・リーブス)
- ジョン・ブック(刑事ジョン・ブック目撃者/ハリソン・フォード)
- ジョン・アンダートン(トム・クルーズ/マイノリティ・リポート)
- ジョン・クロフォード(ローグ アサシン/ジェイソン・ステイサム)
だいたい著名なアクション俳優は一通り、ジョンという役柄を演じたことがあるようです。
ジョンという名前の主人公が多い理由
ジョンという名前の映画の主人公が多い理由を推測するのは簡単です。それはまず、単に一般人にジョンという名前の人が多いから、と言えます。
アメリカ人男性に多い名前ランキング
- 1位 ジェームズ JAMES
- 2位 ジョン JOHN
- 3位 ロバート ROBERT
- 4位 マイケル MICHAEL
- 5位 ウィリアム WILLIAM
ジョンがありふれた名前であることは
- ジョン・ドー(ジョン・ドウ/John Doe)
からもわかります。これは「名無しの権兵衛」を意味する名前で、身元不明の遺体などにとりあえず付される名前です。ブラッド・ピットの映画『セブン』(Seven"SE7EN")でも、本名不明な犯人役を「ジョン・ドー」と呼称していました。女性の場合はジェーン・ドー(ドウ/Jane Doe)となります。
ジョンという名前の効果
よって、- 世間に多い名前を用いることで、映画の主人公に親近感をもたせ、大衆を味方につけることができる
- 短い名前のほうが(特にアクション映画では)リズムがよい
- 「J」や「D」などの濁音で始まる音は発音が強く聞こえる、聞きやすい、インパクトが強い
・・・という効果を製作者や原作者は期待しているのかもしれません。
これが例えば「H」(ハ行)で始まると、最初の言葉が聞きとれなかったり、イメージとして弱く聞こえます。これは映画音楽にも言えることで、ジャジャジャジャーン!とか、デデンデンデデン!などJやDで表現できる擬音は、強く人間に刷り込まれます。音が人間心理に与える影響は万国共通なので、世界的にヒットした映画の主人公の名前には、何かしらの法則性が見いだせるかもしれません。
ただ、「ジョン」が映画の主人公で一番多いのか?というと、実はそうでもないようです。
上の「アメリカ人男性に多い名前ランキング」の第一位が「ジェームズ」なので、ジェームズという主人公名が一番多いか?というとそうではありませんでした。どうやらジェームズという名前は、映画においては、007/ジェームズ・ボンドの印象が強すぎて避ける傾向があるようです。
「ジョン」より多い?「ジャック」
ジョンやジェームズよりも多そうな映画の主人公の名前は「ジャック」でした。例えば以下の通りです。- ジャック・スレイター(ラスト・アクション・ヒーロー/アーノルド・シュワルツェネッガー)
- ジャック・カーター(追撃者/シルヴェスター・スタローン)
- ジャック・リーチャー(アウトロー/トム・クルーズ)
- ジャック・スパロウ(パイレーツ・オブ・カリビアン/ジョニー・デップ)
- ジャック・バウアー(ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」/キーファー・サザーランド)
- ジャック・ドーソン(タイタニック/レオナルド・ディカプリオ)
- ジャック・ライアン(パトリオット・ゲーム/ハリソン・フォード)
- ジャック・モーズリー(16ブロック/ブルース・ウィリス )
- ジャック・グラム(88ミニッツ/アル・パチーノ)
- ジャック・バーンズ(ミート・ザ・ペアレンツ/ロバート・デ・ニーロ)
- ジャック(ジャック/ロビン・ウィリアムズ)
- ジャック・シェパード(ドラマ「LOST」/マシュー・フォック)
- ジャック・スケリントン(ナイトメアー・ビフォア・クリスマス)
- ジャック・マクレーン(ダイハード5・・・ジョン・マクレーンの息子/ジェイ・コートニー)
- ジャック・ジャック(Mr.インクレディブル)
- ジャック・トランス(シャイニング/ジャック・ニコルソン)
- ジャック・オー・ランタン(ハロウィンのかぼちゃ)
ちょっと調べただけでもこれだけジャックというキャラクターが挙がってきます。特徴としては、ジャックという名前は、ジョンよりもアニメ(非現実)なキャラクターや悪役(だが憎めないイメージのキャラクター)にも適用の範囲が広がっているようです。
「ジャック」は実は「ジョン」
そんなジョンとジャックという名前ですが、- ジョン(John/Jon)は、聖書の人名ヨハネ(Johannes)に由来。ジョナサンの愛称であることもある。
- ジャック(Jack)は、聖書の人命ヤコブ(Jacob)に由来
とのことで、聖書ではヨハネとヤコブは兄弟です。
また、ジョンの愛称がジャック、ジョニー、ジェイなどになることもあり、つまりジョン=ジャックでもあり、となると、映画の主人公の名前は、ほとんどがジョン(=ジャック)で占められている、ということになります。
Jの法則?
以上のように、映画の主人公にはやたらジョンやジャックという名前が多いということは、そうした名前を使えば映画が当たる(ヒットする)可能性が高い、ということでもあります。Jで始まる濁音で短い単語(名前)は、観客の耳障りも良く、リズムも良い、ということもあるのでしょう。
ではそうした名前をたくさん使えば使うほどよいのか?というと、必ずしもそうではなく、例えばジョンとジャックが共演したダイハード5(父ジョン・マクレーンと息子ジャック・マクレーン)はコケました。ジョンとジャックというキャラクター名の競合は、しつこ過ぎたのかもしれません。
やはり映画は名前よりもストーリーなどのほうが重要なようです。
映画を名前から詮索してみると・・・
ちなみにターミネーターに登場するジョン・コナーの母親はサラ・コナーです。サラ(Sarah)という名前は、ヘブライ語で「王女」「女神」「高い神聖なもの」(上位の女性)を示し、だからこそターミネーターの主人公はずっとサラ・コナーだったのでしょう。
また、ターミネーター・ニューフェイトで登場したダニー(ダニエラ/Daniella)の名前の意味は「神はわが裁き/神は裁いた/神は我が審判なり」なので、「神によって選ばれた」という意味で命名されたキャラクターだったのかもしれません。
映画の主人公の名前から紐解いていくと、映画の裏筋や違った側面が見えるようで面白いものがあります。