先日またアメリカで銃乱射事件が発生しました。
ロブ小学校銃乱射事件・・・2022年5月24日、アメリカ合衆国テキサス州ユバルデ市内のロブ小学校で発生した大量殺人事件。小学校へ侵入した男が小学生と教員に銃を乱射し、児童19人、教員2人が死亡した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ロブ小学校銃乱射事件
18歳誕生日にライフル購入 米小学校で銃乱射 21人死亡
(2022年5月26日)ANNnewsCH
アメリカ・テキサス州の小学校で起きた銃乱射事件についてです。「213件」。アメリカで今年、すでに起きた「4人以上が銃で撃たれた」事件の数です。これは今年に入ってからの数で、一日1件以上、銃の乱射が起きていることになります。
学校に限って見ても、今年に入って30件以上、銃撃事件が起きていて増加傾向にあります。実際に、10代以下の死因を見ると、交通事故を上回りおととしには銃撃が最多の死因となっています。
https://www.youtube.com/watch?v=BD1-_4ElkII
アメリカでの犯罪、特に銃犯罪についてはもう何十年も前からの社会問題で、例えば以下のような形で、映画の中でも揶揄され続けてきています。
「アメリカでの犯罪率」by コブラ(1986)
映画『コブラ』(Cobra、1986年)では、映画の冒頭、シルヴェスター・スタローンが演じる主人公Marion Cobretti (マリオン・コブレッティ刑事)の以下のようなナレーションと銃(Colt Gold Cup National Match 9㎜ Custom)の発砲で始まります。In America, there's a burglary every 11 seconds, an armed robbery every 65 seconds, a violent crime every 25 seconds, a murder every 24 minutes and 250 rapes a day.
アメリカでは押し込み強盗が11秒に1件、武装強盗が65秒に1件、暴力犯罪が25秒に1件、殺人事件が24分に1件、そして1日にレイプが250件発生している。
36年前(1986年)の当時からしてアメリカはこんな感じですが、学校での銃乱射事件については、むしろ近年、増加そして犯人の若年化傾向にあります。
これはインターネット及びスマホの普及によって、特にネットに影響を受けやすい若い世代が、昔起きた銃乱射事件の動画や記事等に感化されやすいためだと考えられます。
そこに「簡単に手に入る銃」がある限り、今後も米国での銃乱射事件は多発し続け、かつ犯人の若年化も進むことでしょう。
今回の犯行に使われたのも、買ったばかりのアサルト・ライフル(AR-15)2丁でした。
アメリカ社会から銃を完全に撤去するのは不可能なので、例えば、まずは銃初心者にはハンドガンの販売のみ。そして10年経過して銃に関して無事故・無犯罪である場合のみ、講習受講など一定条件を満たした上で、アサルトライフル等の購入を許可する、といった現実的な段階的銃規制が必要ではないでしょうか。
「学校とて安全ではない」by ジョン & サラ・コナー(2008)
現実世界の銃乱射事件を受けて、映画やTV作品の内容に変更を余儀なくされるケースもあります。TVシリーズ『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』(Terminator: The Sarah Connor Chronicles、TSCC、2008-2009年)は、2007年1月から撮影を開始し、学校での銃撃シーンで始まる第1話分をすでに撮り終わった段階の2007年4月に「バージニア工科大学銃乱射事件」が発生。
事件の社会的影響や被害者心理に配慮し、学校での銃乱射という設定はまずいのではないか?ということで、冒頭のサラ・コナーの夢の中のターミネーターの襲撃シーンは「高校の図書館」ではなく、「公立図書館」という設定に変えられ、高校の授業中のジョンをサラが呼びに行くシーンなども削除されました。
→詳細:ジョン・コナーが死亡し核で吹き飛んだ図書館(高校)
しかしその後の高校での授業中にターミネーター・クロマティがジョンコナーを襲うシーンは、「ジョン・コナーがどこにいても安全ではない。例え学校にいたとしても。」(No one is ever safe.)ということを表現するのにどうしても不可避だったため、そのまま高校での設定で公開されることになりました。
また、第1話の原題は"No one is ever safe."(安全な場所などない)で、実際、第1話の中で、サラ・コナーとジョン・コナーがこの"No one is ever safe."のセリフをそれぞれ言うシーンが残っていますが、第1話のタイトル自体は"Pilot"(序章)に改められました。
→関連記事:ジョン・コナーとキャメロンが出会った高校
「サラ・コナー・クロニクルズ」は、製作中に「バージニア工科大学銃乱射事件」や「全米脚本家組合ストライキ」が発生して製作中断(シーズン1を急きょ9話で打ち切り後、シーズン2まで暫くお休み)したり、と何かと不運に見舞われた作品でもありましたが、結果として「学校とて安全ではない」が揶揄となる現実世界が日常化してしまったことは忌々しきことです。
「ここはテキサスだ。」by ターミネーターT-800(2019)
今回の銃乱射事件はテキサス州で発生しましたが、そのテキサスの銃社会を皮肉るセリフが映画『ターミネーター: ニュー・フェイト』(Terminator: Dark Fate、2019年)にもありました。テキサス州の自宅の倉庫に、銃火器をたくさんストックしていることについて、カール(シュワちゃんT-800)が以下のようなセリフを言います。
Even without a rogue AI taking over, I calculate a 74 percent chance that human civilization will collapse into barbarism. And in that eventuality, these weapons will be vital to protect my family. Also, this is Texas.
AIが反乱しなくても、私の計算ではどのみち人間の文明は74%の確率で野蛮化して崩壊する。それゆえ、これらの武器は私の家族を守るために重要なものだ。それにここはテキサスだ。
「人間は74%の確率で野蛮化し崩壊する」とは、現在のロシアの状態を言い得て妙ですが(→関連記事:シュワちゃんとロシアと映画レッドブル)、さらに「ここはテキサスだ」と銃規制が緩いテキサス州(地盤は共和党)を皮肉ったセリフに続きます。
民主党支持のプロパガンダ映画
「ターミネーター・ニューフェイト」に関しては、度が過ぎたポリコレ臭を感じ取った人は多かったようですが、さらにこの映画の深層にあるものは単なるポリコレではなく、民主党支持のプロパガンダ(アンチ・トランプ)映画だった、ということです。「ターミネーター・ニューフェイト」が製作中だった2018~2019年頃は、大統領はトランプで、「アメリカの分断」が問題となっていた時期でした。そんな中、「ターミネーター・ニューフェイト」の製作陣や出演者にはアンチ・トランプ層(民主党支持者)が集結し、2020年の大統領選に向けて、「トランプ・アレルギー」を発症して作ってしまった映画・・・それが「ターミネーター・ニューフェイト」なのでした。そのためニューフェイトの中の場面やセリフの節々に共和党批判がふんだんに盛り込まれています。
ジェームズ・キャメロン監督、ドナルド・トランプを攻撃 地球温暖化を題材にした短編発表
https://eiga.com/news/20160802/7/
アーノルド・シュワルツェネッガー トランプ大統領の嫌味に応酬
https://news.livedoor.com/article/detail/12625130/
Arnold Schwarzenegger calls Trump 'worst president' ever, 'failed leader' after Capitol riot | ABC7
https://www.youtube.com/watch?v=vAWvl-g_6rg
米トランプ前大統領 銃規制強化に反対 全米ライフル協会会合で演説(2022年5月28日)
https://www.youtube.com/watch?v=jnojtd-OZzs
「ターミネーター・ニューフェイト」製作陣のアンチ・トランプぶりを列挙すると きりがありませんが、以上のような背景から、映画の内容的には、「ターミネーターの本筋」よりも民主党のプロパガンダ(アンチ・トランプ)の内容が優先され、正統な「ターミネーター映画」を期待したファンはそっちのけの内容に仕上がってしまい、それが大コケ爆死の原因の1つになったのでした。
さらにいうと、このターミネーター・ニューフェイトには、「中国市場第一優先だった」という問題点もあります。
→詳細:ターミネーター映画大失敗の致命的な原因
まとめ
同じ銃アクション映画でも根底が違う
銃が登場する、一見、同じようなアクション映画であっても、スタローンのような共和党支持者による「銃には銃を」という姿勢で作られたものや、シュワちゃんのような民主党支持者による「銃に対する皮肉」が込められているものなど、その根底にあるものが違う場合があります。この辺りは、映画の中での「メキシコの扱い」を見れば、さらに一目瞭然です。
例えば2019年に公開された2作品・・・スタローンの「ランボー5(ラスト・ブラッド)」ではメキシコ側を悪として描く一方で、シュワちゃんの「ターミネーター・ニューフェイト」ではメキシコからの移民万歳、国境警備隊こそ悪、という描き方がなされています。
まさにアメリカでの支持政党、民主党と共和党の違いが映画にそのまま表れている2019年公開の2作品でした。
皮肉
一番上の写真は、アメリカ・ニューヨークにあるUnited Nations Headquarters(国際連合本部ビル)の脇にある、『発射不能の銃』ことNon-Violence sculpture(非暴力のシンボルの像)です。この非暴力のシンボルである銃の像が、
- 今まさにNATOに加盟しようとしているスウェーデンの芸術家が作ったこと、
- 常任理事国の暴挙に対して機能不全に陥っている国連の敷地内にあること、
- そして銃乱射事件が続くアメリカ国内にあること