T2サラも愛用のカイル・リースのコートの怪

ターミネーター

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ターミネーター・カイルリースのコート

前回のサラ・コナーの銃が偲ぶカイル・リースにて言及した、サラ・コナーが所持していた銃がカイル・リースの銃と同型の銃だった件。

同じ銃だったのは単なる偶然か?それともカイル・リースを偲んでのものか?の答えがわかるような描写が、実は「ターミネーター2」(T2)にあります。

それがT2でサラ・コナーが着ていたコート(上下図)です。T2でサイバーダイン社に乗り込む際に着ていました。

このコートは映画『ターミネーター』(The Terminator、T1、1984年)でカイル・リースが着ていたコートと同じものです。

Vietnam era US Army Trench Coat(ベトナム戦争時代の米軍のトレンチコート)

このコートはベトナム戦争時代の米軍のトレンチコート(Vietnam era US Army Trench Coat)です。

映画「ランボー1」でおなじみ

そのため、ベトナム戦争がテーマの映画『ランボー1』でも、トラウトマン大佐が同コートを着て登場します。
そしてエンディングでは、説得に応じ降伏するランボー(スタローン)に、トラウトマン大佐が 投降兵の尊厳を守るような形で着せてあげていたものです。

特長

ふつう衣服のタグは、首の後ろ中央に付けられていることが多いですが、このコートは、向かって中央よりやや左側に縫い付けられているという特徴があります。

また、このコートの襟は右前、左前、どちらでも閉じられるようになっています。

特にベトナム戦争後期~ベトナム戦争後に流通したもので、T1でカイル・リースが着ていたのは、おそらく1972年製のものと見られます。ご当時モノは数は少ないですが、古着屋さんやeBayなどで売られています。「CENTRE MFG.CO,INC.」のブランド名などで検索すれば出てきます。
また、ご当時モノではありませんが、レプリカや類似品ならあちこちで今でもたくさん出回っています。

T1でカイル・リースがこのコートを着ていた理由

T1の映画の中では、タイムトラベル到着直後に警察に追われて逃げ込んだデバートの中で、偶然そこにあった、このコートとナイキのシューズ(Nike Vandal High Supreme Black)をピックアップした、という形になっています。

カイル・リース=ベトナム帰還兵

しかし、製作上はなぜカイル・リースはこうした衣装になったか?というと、それはカイル・リースのキャラクターは、ベトナム戦争の帰還兵がベースに造形されたからです。

カイル・リースが警察署で話す戦争ネタや切迫感、このターミネーター2発祥の地T1【フォールズ・カフェ】のシーンでの、
I don't belong here.(ここは別世界だ/自分はこの世界に属していない/居場所がない。)
といった「平和な世界とのギャップ(違和感)」などのセリフの数々には、ベトナム戦争の米軍の構成や帰還兵のPTSDなどが色濃く反映されています。カイルリースが使うイサカ37ショットガンも、ベトナム戦争ではトレンチガンと呼ばれ前線で活躍した銃です。

ジェームズ・キャメロン「ベトナム戦争三部作」

  • 1984年「ターミネーター1」(監督・脚本)
    ベトナム戦争時代の米軍トレンチコート、イサカ37ショットガンなどが登場。ベトナム帰還兵のPTSDを反映したセリフなど。
  • 1985年「ランボー2」(脚本)
    1984年の「ターミネーター1」のすぐ後に、ジェームズ・キャメロンは「ランボー2」の脚本を書きます。
  • 1986年「エイリアン2」(監督・脚本)
    「ランボー2」の脚本執筆後、ジェームズ・キャメロンはエイリアン2を監督します。主人公リプリーにもベトナム帰還兵のトラウマが反映されています。エイリアン2は、ジェームズ・キャメロンのベトナム戦争映画の集大成となります。
    →詳細:接近戦にはこれが一番だ【エイリアン2】の意味

ジェームズ・キャメロンのベトナム戦争に関するリサーチが反映されたT1は、ジェームズ・キャメロン「ベトナム戦争三部作」の第一作目となりました。

T2でサラ・コナーがこのコートを着ていた理由

はじまりはT1のケンカ

T2のメイン・イベントは「サイバーダイン社爆破」です。実はこの「サイバーダイン社爆破」をサラ・コナーが思いついたのが、T1のターミネーター2発祥の地T1【フォールズ・カフェ】のシーンでのカイル・リースとのやりとり(ケンカ)です。サラはカイルを殴り、カイルはサラに銃を向けます。

2人の本音のぶつかり合いの結果、カイル・リースはサラの希望に応じてサイバーダイン社爆破のためにお手製のダイナマイトを作ります。しかし、爆破計画を実行に移す前にTIKIモーテルが襲撃され、爆破計画は頓挫してしまいました。

カイル・リースと供に・・・

つまり、T2における「サイバーダイン社爆破」は、カイル・リースとの想いがつまったリベンジであり、その意気込みが、T2でサイバーダイン社に乗り込むサラ・コナーの衣装として表されていた、ということだったのです。

このことは、T1のエンディングでのカイルリースの銃との一致におけるサラ・コナーが同じ銃で偲ぶカイル・リースも裏付けています。

T2でのサラコナーのコートの着こなしを見ると、かなりダボダボでサイズが合っておらず、TPOにも合っていません。つまり、このコートを「意図的に無理に着ていた」ということが分かります。

このサイズのズレは、同じくT2のぺスカデロ警察病院でのサラ・コナーの夢のシーン(非公開シーン)にて、カイル・リース(マイケル・ビーン)が着用していたコートそのものを、そのまま転用したから生じたのではないでしょうか。

カイル・リースのコートの怪

そんなカイル・リースのトレンチコートですが、なぜかT1の終盤、コートの色と丈が変わってしまっている、という怪奇現象が発生しています。
カイルリースのコートの色の変化
T1の序盤のコートは、濃グリーン色で、丈は膝下まであるロングでしたが、警察署からの脱出以降、なぜか色は黒(または濃紺)で丈は膝上までのハーフコート調に変わってしまっています。

警察署から脱出する際、署内にあった別の人のコートを失敬してきた・・・という解釈もできなくもありません。しかし、TIKIモーテルにチェックインする際、カイル・リースはこのコートのポケットからグシャグシャの札束の塊を出します。このお金はカイル・リースが未来から到着早々、どこかからくすねて活動資金にしていたお金のはずです。

つまり、このコートは前半から着ていたものと同じ物という設定で撮られていることになり、にもかかわらず、色と長さが変わってしまっているという、「カイル・リースのコートの怪」がT1では発生していたのでした。

このあたり、同じく1980年代の映画「ダイ・ハード1」での、タンクトップの色が途中で変わってしまっている件を彷彿させます。

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