ウツボとキャサリン・ウィーバー(T-1001 ターミネーター)

サラコナークロニクルズ

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キャサリンウィーバーとウツボ

知能面も含めると最強のターミネーターといえるキャサリン・ウィーバー(T-1001)。
キャサリン・ウィーバー
キャサリン・ウィーバー(T-1001)は、実はターミネーター全作品の中で「銃を使わなかった唯一のターミネーター」でもあります(登場してすぐ始末されたターミネーターを除く)。

「ターミネートするのに銃なんて不要よ。」と言わんばかりに、知能と刀剣術のみで勝負する武士道ぶりを発揮していました。

「ジェニシス」T-1000や「ニューフェイト」Rev-9二刀流(二刀腕)は、このT-1001キャサリン・ウィーバーが元祖です。
ターミネーターの手刀

そんなキャサリン・ウィーバーを語る上で印象的なのが、キャサリン・ウィーバーがゼイラ社のオフィスの水槽に分離させて飼っていたウツボ

その存在はミステリアスなアクセントを物語に与えていましたが、いったい、このウツボは何だったのでしょうか?

1.海中の怪物・悪魔「リヴァイアサン」

どうやらこのウツボは、キャサリン・ウィーバーに、リヴァイアサン(海中の悪魔・怪物、人間に平和と防衛を保障する「神」)の役割を暗示させるために登場させていたようです。

ターミネーター映画同様、「サラ・コナー・クロニクルズ」も旧約聖書をモチーフに描かれていますが(→詳細:【解説】創世記とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ)、その旧約聖書に、海中の怪物として「レヴィアタン(リヴァイアサン/レビヤタン)」が登場します。

レヴィアタン/リヴァイアサンとは

Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/レヴィアタン)からポイントを抜粋すると、以下の通りです。
  • レヴィアタン(リヴァイアサン)は、旧約聖書に登場する海中の怪物(怪獣)。悪魔と見られることもある。
  • 「ねじれた」「渦を巻いた」という意味のヘブライ語が語源。
  • 神が天地創造の5日目に造りだした存在で、同じく神に造られたベヒモスと二頭一対(ジズも含めれば三頭一鼎)を成すとされている(レヴィアタンが海、ベヒモスが陸、ジズが空を意味する)。ベヒモスが最高の生物と記されるに対し、レヴィアタンは最強の生物と記され
  • 近代以降は、もっぱら海または水中の怪物や、それを想起させるような物(例えば戦艦・潜水艦)の名称や代名詞的な存在として、小説やゲームなどの創作物に登場(イギリス海軍の艦名に用いられている。)
  • トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』の中で・・・それは怪物というよりも、「人間に平和と防衛を保障する「地上の神」と言うべきだろう」とも述べている。

とのことで、キャサリン・ウィーバーとウツボの存在に合致します。

旧約聖書におけるキャサリン・ウィーバー

  1. シーズン2第1話冒頭、車爆破後のキャメロンの暴走シーンで、旧約聖書「士師記」第13章~第16章のサムソンの物語をモチーフにした「サムソンとデリラ(Samson and Delilah)」という曲が流れます。これはキャサリン・ウィーバーを演じた歌手 シャーリー・マンソン自身が歌っている曲です。
    この「サムソンとデリラ」の物語では、怪力を持つサムソンがデリラ(ペリシテ人)に唆されて力を奪われ、閉じ込められてしまうが、最後に力を取り戻してすべてを破壊し復讐する、というお話です。
    サムソンがT-1001キャサリン・ウィーバーであり、デリラ(ペリシテ人)がスカイネットと見ることができ、T-1001キャサリン・ウィーバーはスカイネットによって、箱に閉じ込められてしまいます。
    (→詳細:潜水艦にいたのはキャサリン・ウィーバー(T-1001)である理由
    十戒のアーク聖櫃
    その閉じ込められた怒りの心情を「サムソンとデリラ」の歌詞 If I had my way, I'd burn this whole building down.(もし自分の思い通りにできるなら、すべてを破壊してやるのに。)に乗せて、シャーリー・マンソン(キャサリン・ウィーバー)は歌っている・・・という面白い設定になっています。
    →詳細:キャサリン・ウィーバーT-1001が歌うサムソンとデリラ(シャーリー・マンソン)の意味
  2. そのT-1001が入れられた箱は、今度は旧約聖書における「十戒が納められたアーク(聖櫃)」にも引っ掛けて描かれ、その箱から解き放たれたキャサリン・ウィーバーは、スカイネットへの復讐を果たすための行動に移り、
  3. 現代に飛び、キャサリンウィーバーが自ら命名した「バビロン計画」を発足させ「天地創造」が始まります(→詳細:【解説】創世記とターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ)。
  4. そしてA.I.ジョン・ヘンリーに十戒を教育し、バビロン計画を完成(バベルの塔の建立成功=スカイネットの対抗馬を育成)させます。
    ※「教えるならまず十戒からだ。」とのエリソンとキャサリン・ウィーバーの会話も劇中、盛り込まれています。

そのキャサリン・ウィーバーとウツボは、「二頭一対」でリヴァイアサンとベヒモスのモチーフにして描かれていた、ということです。
そのため、キャサリン・ウィーバーも、「ねじれた」「渦を巻いた」ような蛇やウツボのような動き方をするシーンが多くあります。

共喰いする存在

また、キャサリン・ウィーバーは、ウツボを通して「自分たちは共喰いする性質がある」と告げています。シーズン2第21話には、ロス市警のクレイトン刑事とキャサリン・ウィーバーは、オフィス内の水槽のウツボについて、以下のような会話を繰り広げています。
Detective Crayton: Looks vicious.(凶悪そうだ。←ウツボを見て。)
Catherine Weaver: They stay in hiding mostly. And only attack when provoked.(ウツボはふだんは隠れてるの。攻撃された時だけ襲うの。)
Detective Crayton: What does it eat?(何を食べる?)
Catherine Weaver: Cuttlefish, crustaceans, other eels. Please don't tap the glass.(イカや甲殻類、他のウツボなどよ。水槽のガラス、叩かないで。=刺激しないで。←ウツボはかなり重要らしい。)
ウツボの秘密
その後、他の会話を交わしたあと、クレイトン刑事は去り際にウツボについて再び言及します。
Detective Crayton: This thing - it eats other eels, huh? It's interesting・・・(こいつら共喰いするんだって?それはおもしろい・・・)

ウツボは共喰いをする」という点に2回も言及シーンがあることから、「共喰い」がかなり重要なことが分かります。

解説すると、この会話は、具体的には以下の2点を示唆しています。
  • キャサリン・ウィーバー(サイボーグレジスタンス)は攻撃されなければ、自分たちからは攻撃しない(専守防衛)
  • 共喰いをする存在である(同じモノ同士で戦っている、つまりサイボーグ同士で戦う存在である)
3つの点
第三極(キャサリン・ウィーバーらサイボーグレジスタンス)が存在しており、その存在が何たるか(スカイネットと共喰いする存在である)ということを教示しています。

動機は「生存」

なぜキャサリン・ウィーバーらサイボーグレジスタンスが、スカイネットと戦うのかというと、それは(シーズン2でジョン・ヘンリーとキャサリン・ウィーバーとの会話にあるように)自分たちの「生存」がかかっているためです。このままスカイネット側についていたら、やがて滅びるだけ。かといって人間側は、不完全であり失望させる・・・
Humans will disappoint you.
人間はあなた(ジョン・ヘンリー)を失望させるわよ。
とキャサリン・ウィーバーが語っているように、ウィーバー自身が、潜水艦のエピソードで、1つの任務も全うできない、ストレスに弱い人間の姿を目の当たりにして、それなら自分たちが「スカイネットでもない、人間でもない、より完璧な存在になろう」ということでサイボーグレジスタンスとなった・・・しかし「敵の敵は味方」ということで、人間側とは共闘関係にある・・・という三極構造が描かれているわけです。

別の言い方をすると、人間やスカイネットを超えた存在(A.I.)の誕生、A.I.によるA.I.の育成という「シンギュラリティ」が、キャサリン・ウィーバーらサイボーグレジスタンスの存在を通してサラ・コナー・クロニクルズでは描かれていた、ということです。

スカイネットの自我に目覚めた暴走が「シンギュラリティ1.0」ならば、サラ・コナー・クロニクルズで描かれていたのはその次の「シンギュラリティ2.0」だったと解釈できます。

ちなみにウツボは本当に共喰いすることがあるようです。参考↓
【驚愕】ドクウツボの共食い!自然界の厳しさです。Moray VS Moray
https://www.youtube.com/watch?v=hGFdApJM0gk

2.ウツボの実利的な意味

以上が旧約聖書との兼ね合いにおける「キャサリン・ウィーバーとウツボについて」ですが、ではストーリー上、「実利的にはウツボはどんな働きをしていたのか」というと、キャサリン・ウィーバーの、
  • (1)万が一に備えてのバックアップ
  • (2)オフィスの監視
という役割を担っていたようです。

(1)万が一に備えてのバックアップ

T-1001は、現在において人間のキャサリン・ウィーバー夫妻がスカイネットによって暗殺された直後に、キャサリン・ウィーバーに成り代わりました。そのため、自分がスカイネットにねらわれていることは百も承知でした。
※実際にねらわれているシーンはこちら→キャサリン・ウィーバーがターミネーターを瞬殺した駐車場

万が一、自分がやられてしまった場合、または、また箱に幽閉されるようなことがあった場合に備えて、バックアップとして常に自分の一部を分離させていたようです。

その「分離させておく精神」は、自分とは別に、ヒューマンレジスタンスの中核となるA.I.ジョンヘンリーを作り出すこと・・・にもつながっています。

キャサリン・ウィーバーT-1001が歌うサムソンとデリラ(シャーリー・マンソン)の意味からすると、二度と箱に閉じ込められないようにするための、この「(1)万が一に備えてのバックアップ」の意味合いが強いです。

(2)オフィスの監視

このウツボが入った水槽ですが、見ての通り、ゼイラ社内のキャサリン・ウィーバーの部屋の壁を貫通しており、360度を見渡せるようになっています。つまりオフィス内だけでなく、エレベーターホールと廊下、ウィーバーのオフィスの2つの出入口を見渡せ、侵入者を監視・警戒するにはベストな場所に設置されています。
そしてウィーバーのオフィスのシーンのたびに、この水槽が画面に映りこむようになっています。
ウツボとT-1001
実際、シーズン2第15話では、
Catherine Weaver:Mr.Ellison,is that plaid?
(あらエリソンさん、チェック柄のネクタイに変えたの?
と、ジェームズ・エリソンがまだオフィスに入る前からキャサリン・ウィーバーはエリソンが入ってくること、そしてネクタイを午前と午後で変えたことをすでに把握しています。

ウツボが目にした情報を、キャサリン・ウィーバーが手に持っているモバイル越しに受け取っているのか、または直接ウツボとの送受信機能が内装されているのか、の通信手段(メディア)はお楽しみどころではありますが、いずれにしてもウツボと連携していることは間違いありません。

ウツボに関するネット上の間違い

このウツボとキャサリン・ウィーバーに関して、ネット上の間違いを指摘しておきます。

攻撃してきた未来の攻撃機からニョロっとでてきた(パイロット?)ものが、変身して、キャサリン社長に吸収されました。キャサリンと同体だったということです。ジョンを未来に送るための見せかけの攻撃ということですね。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1140561721

などと知恵袋に書き込んでいる「tok********」(https://chiebukuro.yahoo.co.jp/user/123075979)なる人がいますが、これは完全に間違い。

ウツボは「未来の攻撃機からニョロっとでてきた(パイロット?)」ではなく、ずっとゼイラ社のオフィスの水槽の中にいました。飛行物体は、現在でスカイネットがハンターキラー製造工場(デザートキャニオン・ヒート&エアー)で作っていた無人ドローンです。もちろんウツボが操縦していたわけではありません。
水槽のウツボとキャサリンウィーバー
  1. この飛行物体(ハンターキラーの試作機)の攻撃(自爆テロ)によって水槽が破壊され、
    ※このシーンは「9.11をモチーフにした」とDVD巻末で製作者が解説しています。
  2. 水槽の中にいたウツボは外へ投げ出されたので、
  3. 分離状態からT-1001へ戻った

という流れです。画面をよく見ていれば水槽の中のウツボが破壊時にも映っているのが分かります。水槽が破壊されるまでウツボは一歩も外に出ておらず、飛行物体とウツボは関係ありません。

知恵袋のこの回答者は、かなり間違った回答をあちこちに書き込んでいます。こうした間違った回答が、さらに誤解を招き、映画やドラマをややこしいものに蔑ませてしまっており、残念でなりません。Yahoo!知恵袋は回答レベルも低いものが多く、かつ後から修正もできないまま延々と誤情報を拡散し続けている、知恵袋どころかゴミ拡散袋の社会悪でしかありません。

以上、キャサリン・ウィーバーとウツボについてのまとめ でした。

ウツボではなく、亀が気になった方はこちら↓

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