クロマティは未来から武器を持ち込んだのか

サラコナークロニクルズ

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グロック17第二世代

ターミネーターに関して、ネット上に不思議な記述を見かけました。

テレビシリーズのターミネーターは武器を持ち込むために、体の中に埋め込んでタイムトラベルしていました。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1424993464

とあるのですが、「テレビシリーズのターミネーター」こと「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」には、それに該当するシーンはありません。

強いて言うなら、もしかしたらシーズン1第1話にて、このジョン・コナーとキャメロンが出会った高校にて、ターミネーターT-888・クロマティが自分の太腿から銃を取り出してジョン・コナーを撃ったシーンのことを言及しているのかな?と推察しました。

しかし、もしこのシーンのことを言及しているのなら、ターミネーター・クロマティが、未来から銃を体内に隠して持ち込んだ可能性は限りなく低いと言えます。

クロマティが未来から武器を持ち込んではいない理由

その理由は以下の通りです。

  1. クロマティが持っていた銃のタイプ
  2. サラ・コナー・クロニクルズに出てきた他のターミネーターも武器を持ち込んでいない

理由1.クロマティが持っていた銃のタイプ

クロマティが体内(太腿)から取り出して使った銃は「Glock17 Gen2(Generation 2)/グロック17第二世代」でした。
グロック17の各バージョンのおおよその発売年は以下の通りです。

  • 第一世代:1984年~
  • 第二世代:1988年~
  • 第三世代:1998年~
     ※第一話の舞台は1999年
  • 第四世代:2010年~
     ※「審判の日」は2011年4月21日
  • 第五世代:2017年~

問題のシーンの舞台は1999年なので、第三世代はまだ普及し始めた段階であり、それまでに広く普及していた第二世代のグロック17をクロマティが使ったことは一般的であり、疑問はありません。

では、2027年以降の未来からやってきたクロマティが、わざわざ30年近く前の古い銃を未来で選んで体内に忍ばせてタイムトラベルするか?というと、可能性はまったくゼロではないものの、現実的にはなかなか考えづらい可能性です。

未来である2027年には第四世代以降のグロック17が広く普及しているはずですし、仮にサラ・コナー・クロニクルズにおける「審判の日」(2011年)により世界が破壊され、グロックの更新が停止したと仮定しても、やはりグロック17を選択するのなら、第三か第四世代になるのが自然と言えます。

さらに言えば、未来にはもっと良い銃なりプラズマ砲などの武器が存在するはずです。

そもそも1999年当時に巷にあふれており、ターミネーターなら簡単に手に入れられる(奪い取れる)銃を、わざわざ未来から仕込んで持ってくる必要もありません。

グロックのポリマー樹脂は耐久性はありますが、30年を経過したものの中には、やはり寿命を迎え、破損や劣化が見られるものも実銃にはあります。未来からわざわざ暗殺達成率を低下させる「骨董品」を忍ばせて持ち込むことはナンセンスです。

よって、その銃のタイプから、クロマティが使った銃は、未来から体内に忍ばせて持ち込んだものではなく、現代(1999年)にやって来てから手に入れて体内(太腿)に仕込んだ可能性が非常に高いと言えます。

実際その後、クロマティが自分で銀色のビニールテープで、銃を取り出した太腿のその箇所を縛るセルフメンテナンス・シーンもあり、その逆の行程・・・つまり皮膚下に簡単に銃を仕込むことができること(銃の出し入れを自己管理できること)がうかがえる描写もあります。

理由2.サラ・コナー・クロニクルズに出てきた他のターミネーターも武器を持ち込んでいない

2番目の理由としては、サラ・コナー・クロニクルズに出てきた他のターミネーターも、体内に銃を隠して持ち込んでいない(そのような描写もない)という点が挙げられます。

例えば、1920年に間違って到着してしまったターミネーター「マイロン・スターク」は特に体内には銃を隠し持っておらず、ご当時モノのトンプソンのドラムマガジンのサブマシンガンを使っていました。暗殺用に壁の中でずっと持ち続けていた武器もトンプソン・サブマシンガンでした。
→関連記事:ターミネーターがトンプソンで強盗したラ・ブレア銀行

また、マーティン・ベデル暗殺にやってきたターミネーターが持っていた銃も、AMTハードボーラーでした。
→関連記事:T1・AMTハードボーラーへのオマージュの家
これはターミネーター1へのオマージュとしての武器選択なのですが、わざわざレーザーサイト付きのAMTハードボーラーを未来から体内に忍ばせて持ち込むのは考えづらいです。

それ以外のターミネーターについても同じことが言えます。そして未来から持ち込んだ描写もありません。

キャメロンも未来から持ち込みしておらず、1963年当時に入手できるパーツで作られ1963年に銀行に仕込まれたアイソトープ銃を使っています。
→関連記事:サラ・コナーの癌(ガン)克服物語(Hope of Isotope)

以上から、クロマティは、未来から武器を持ち込んだのではなく、現代(1999年)にその当時に流通していたグロック17第二世代を仕入れ、体内に忍ばせた可能性が高いです。

なぜクロマティは体内に銃を隠し持っていたのか

撮影中に事件発生

ではなぜクロマティは体内に銃を隠し持っていたのか?というと、それはDVDの巻末の製作者の解説にもありますが、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」の、特に第一話は、撮影中に起きた「バージニア工科大学銃乱射事件(2007年)」に大打撃を受けてしまったためです。

この事件発生により、社会的影響をふまえ、学校内での銃乱射のシーンを大幅に変更(軽減)せざるをえなくなり、また学校を取り巻くセキュリティ環境も変わってしまい、第一話の多くを撮り直す形となりました。

学校に出入りする者が簡単に銃を持ち歩いている、という設定は社会的にも悪影響であり、特に教師が授業中に普通に銃を携行しているのも問題がある、という状況になったので、あのシーンを実現させるには、特殊な形で銃を所持していなければならなくなったのです。

学校のシーンを減らす

例えば、第1話冒頭のこのジョン・コナーが死亡し核で吹き飛んだ図書館(高校)のシーンは、本来は「学校内」で起きる、という設定で、高校の教室で授業中のジョンをサラが呼びに行き無理やり連れ出す・・・というシーンが撮影されたのですが、「バージニア工科大学銃乱射事件」が起きてしまったため撮影やり直しを余儀なくされ、場所は「公立図書館」に変更となりました。そのため、

Highland High School・・・パイロット版(未放送の第1話)

R. Hadley Public Library・・・本編(TV公開版)

と画面に映っている建物名も後から「高校→公立図書館」へ変更されています。

学校環境も変化

この「バージニア工科大学銃乱射事件」発生により、アメリカでは校舎に出入りする際に、金属探知機によるセキュリティ・チェックなどを導入する学校が出てきました。

そのことは、のちにジョン・コナーが通ったカンポ・デ・カフエンガ高校にて、キャメロンが学校ゲートの金属探知機に引っかかるシーンにも反映されています。

そのため、学校の教師として潜伏しつつ、いつでも武器を取り出せるように、かつ金属探知機等を理由をつけてクリアするために、クロマティは「現代で仕入れた」武器(グロック17第2世代)を太腿に忍ばせ、常に携行していたのでした。

第1話の原題とテーマは"No one's ever safe."

これもDVD巻末の製作者の談にありますが、「バージニア工科大学銃乱射事件」を受け、このクロマティの教室内での銃乱射シーン自体もカット(変更)されることが検討されたのですが、「No one's ever safe.(誰も安全ではない。=ジョン・コナーはいつどこでも危険にさらされている。」という危機的状況を表現するために、このクロマティの問題のシーンは断行されたとのことです。

実はこの第一話の本来のタイトルは、この"No one's ever safe."だったのですが、これも「バージニア工科大学銃乱射事件」の影響で、あたかも「学校内は危険であること」「社会不安」を煽るようなタイトルは良くないとのことで、"Pilot"(序章)というタイトルに変更されたようです。

この第一話のエンディングのほうの、このT名物タイムトラベル到着地点が道路の元祖にて、キャメロンが「この時代は安全よ。」と発したことに対して、サラとジョンがオウム返しに口をそろえて"No one's ever safe."と答えるセリフがあります。

このセリフが、この第一話の重要なテーマであり(元々のタイトルでもあり)、クロマティが体内に銃を隠し持っていた描写にもそんな意味が託されていたのでした。

2つの社会的事件に翻弄されたサラ・コナー・クロニクルズ

「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」は、

  • 「バージニア工科大学銃乱射事件」(2007年)
  • 「全米脚本家組合ストライキ」(2007–2008年)

の2つの事件にタイミング悪く翻弄され、本来はもう少し学園モノ風になるはずだったのですが、上述のように学校内のシーンはカットされることが多くなり、特にシーズン1はストライキで中断=途中で切り上げ(打ち切り)のような形で急きょ、9話のみで終了し、シーズン2は未定・・・という状態が続いた背景があります。(その辺り、例えばシェリーという女子生徒が中途半端に登場したまま消えたところにもよく表れています。)

サラ・コナー・クロニクルズが途中で「打ち切り」になったのは、シーズン1の方だったのです。シーズン2は元々22話と決まっており、完遂しました。
→詳細:シーズン3(続編)の内容【ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ】

2つの不運な出来事に翻弄された「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」でした。



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