ターミネーター映画の宣伝ミス集

サラコナークロニクルズ ターミネーター

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ターミネーター映画宣伝ミス集

映画ターミネーター・シリーズといえば、『ターミネーター2』(T2)より後の作品は、どれも大なり小なり失敗続きではありますが、そもそもそれら後続作品は、公開前の宣伝段階からミスの連続でした。

今回は、ターミネーター作品における宣伝文句のミスをまとめました。

T3「恐れるな。未来は変えられる。」

ターミネーター3のポスター
『ターミネーター3』(Terminator 3: Rise of the Machines、T3、2003年)のキャッチコピーは、「恐れるな。未来は変えられる。」でした。ポスターやチラシでも確認できます。

このキャッチコピーは、ターミネーター1と2のテーマ「No Fate.(運命は定まっていない、自ら切り開くものだ。)」を踏襲したものと思われます。

しかし、T3の劇中では、

It is your destiny. Judgment Day is inevitable.
これは君の運命だ。審判の日は避けられない。
(T-850のセリフ)

というセリフまで登場し、ストーリーも審判の日が起きてしまう「未来は変えられない」結末(運命不可避論、運命決定説)でした。

但し、運命が決まっている(変えられない)のなら、そもそもT-850もT-Xも過去に飛んでくる必要はまったく無いので、T3の存在理由を根本からくつがえす大いなる矛盾も生じることになります。

この「恐れるな。未来は変えられる。」という宣伝文句とは正反対の内容に観客は「???」とキツネにつままれたようなモヤモヤした感情を抱いて、映画館を後にしたのでした。

T2直後の「3」と正式にナンバリングされた3作品目ということで期待値も高く、「T2の後光効果」でお客はそこそこ集めたものの、宣伝文句と内容の乖離による観客のターミネーター作品への猜疑心と失望は、T3から始まったのでした。

そして『ターミネーター・ニューフェイト』もT3と同じような内容で学習性がなく、同じような失敗に終わったのは、なんとも皮肉でした。
→詳細:ターミネーター3とニューフェイトの比較

TSCC「ターミネーター4へ繋がる物語。」

ターミネーターのTVシリーズ『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』(Terminator: The Sarah Connor Chronicles、TSCC、2008-2009年)は当初、

「ターミネーター2」から「ターミネーター4」へ繋がる物語。

という謳い文句にて宣伝されました。製作者側はこのようなアナウンスはしていないので、これは日本サイドが勝手にこのように勘違いして宣伝したものと思われます。

  • こちらのアマゾン(https://amzn.to/3XsAk0B)のサラ・コナー・クロニクルズの説明でも、
  • また、こちらKBS京都 TV のサラ・コナー・クロニクルズのページ(http://www.kbs-kyoto.co.jp/tv/kaigai/archives/terminator/)でも、
  • さらに、"「ターミネーター2」から「ターミネーター4」へ繋がる物語。" で完全一致検索をかければ、同じ文言をコピペしたサイトがたくさん登場することからも、

当初、この宣伝文句が大体的に使われ流布されたことがうかがえます。

「ターミネーター2」からTSCCは続くのですが、しかし、TSCCとターミネーター4(T4)はまったくつながっていません

確かに「TSCCの最後で未来に飛んだジョン・コナーのその後の姿が、T4のジョン・コナーである」という無理やりな解釈はできなくもありません。

しかし、TSCCの製作陣とT4の製作陣は完全に別であり、まったく連動しておらず、TSCCの製作陣はT4の内容を知らず、またT4の製作陣はTSCCの内容を知らずにそれぞれ製作していたので、TSCCが"「ターミネーター4」へ繋がる物語。"にはなりえないのです。

TSCCとT4の唯一の共通点を強いて挙げるとするならば、この鉄道車両工場跡地のロケ地がT4とTSCCでかぶっていた点ぐらいです。

このあたり、サラ・コナー・クロニクルズのDVDの解説者のコメンタリー(副音声)にて、「ターミネーターの映画(T4)の製作者らが、うちら(TSCC)の後にニューメキシコ州に撮影入りしたらしいよ。」と発言しており、両作品の製作者らがまったく意思疎通がなされていないことがうかがえます。

このTSCCが「ターミネーター4」へ繋がる物語との案内を見て、両作品の内容理解に支障をきたした人が当時たくさんいたことは、当時の質問サイトに同様の質問がたくさん残っていることからもうかがえます。

T4「4」&「どこで誰が、未来を変えたのか?」

ターミネーター4映画ポスター
『ターミネーター4』(Terminator Salvation、2009年)は、そもそも原題には「4」という数字は付いておらず、「4」とタイトルに付けて公開したのは、日本と一部の国のみです。

この「4」と付けたことが、「T3からの続き」感を強め、T3からの悪い流れを引き継いでしまったと言えます。

T4のマックG監督は、「3」の続きというよりも、「あくまでオリジナルのT1とT2をベースにした、サルベーションを1とする新しい三部作の始まり」という意図でサルベーションを作っていました。
→関連記事1:ターミネーター4の審判の日は2011年(T3と矛盾)
→関連記事2:ケイト・ブリュースターではないT4はT3の続編でもない事実

当初、

  1. ターミネーター・サルベーション 2009年
  2. ターミネーター・(タイトル未定)2011年
  3. ターミネーター・(タイトル未定)2013年

という三部作が予定されていましたが、結局、T4が公開された前後のタイミングで、当時のターミネーター権利を持っていた会社(ハルシオン)が破産し権利が手放されてしまい、サルベーションの続編は事実上、作れなくなり消滅しました。

また、T4のキャッチコピーは、「どこで誰が、未来を変えたのか?」でした。

しかし、T4はターミネーター作品で唯一、ターミネーター名物のタイムトラベルが登場せず、過去-現在-未来の時間軸の縦のつながりを感じさせる描写も薄く、この「どこで、誰が未来を変えたのか?」というお題については、結局、映画の中では追及されておらず、テーマとなっていませんでした。

映画のタイトルや宣伝文句のミスリードが、どの程度、映画の失敗(コケ)につながったかについては計測は難しいですが、シリーズものを「安易なナンバリング付けはしないほうがよい」という学びは、このT4あたりから指摘され始めたようにうかがえます。

そのため、その後のターミネーター作品では、「ジェニシス」をT5とは呼称せず、また「ニューフェイト」もT6やT3ともナンバリングで呼称しなくなりました。

ジェニシス「これこそ3作目だ!」「大どんでん返し!」

ターミネーター・ジェニシス映画のポスター
『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』(Terminator Genisys、2015年)は、ターミネーター史上、最悪レベルな宣伝を展開してしまいました。

製作にまったく関わっていないにもかかわらず、とにかく「ジェームズ・キャメロン前面オシ」の酷いものでした。

ジェームズ・キャメロンが「とにかくジェニシスをベタ褒めする動画」を展開。チラシやポスター、CMにもその要約文言を印刷。実際の監督や出演者よりも、ジェームズ・キャメロンの言葉のほうが目立つような仕上がりになっていました。

期待を遥かに超える大どんでん返し。必見の作品だ!!シリーズの「ルネッサンス」だ。本作は私にとって「ターミネーター」の3作目だ。
-ジェームズ・キャメロン(インタビュー動画↓)
https://www.youtube.com/watch?v=WH3tPSNX6OY

→詳細:「ジェニシスこそターミネーター3だ」ジェームズ・キャメロン語録

結局、ジェニシスの中のどこに「期待を遥かに超える大どんでん返し」があったのか?そして「ルネッサンス」と言えるほどのものだったか?まったくわからずじまい。それどころか、時間軸の迷子になり、「誰がシュワちゃんターミネーターを送ったのか?」などまったく基本的な内容を理解できていない観客を多数輩出してしまいました。
→詳細:【解説】ターミネーター・ジェニシスの時間軸と疑問解決

結果、ジェニシスは公開されて早々、ジェニシス発の三部作消滅(続編製作中止)。主演も早々に降板宣言するなど散々な結果に終わりました。
→詳細:ターミネーター・ジェニシスの続編は絶対ない理由

このジェニシスでの大見得切り(おおみえきり)は、のちの「ターミネーター・ニューフェイト」の謳い文句「正統な続編」とも完全矛盾し、また、「ジェームズ・キャメロンが〇〇した!」という「ジェームズキャメロン商法」のうさん臭さを観客に定着させ、ニューフェイトの評価にも禍根を残すことになりました。

ニューフェイト「キャメロン完全復活!」

ターミネーター・ニューフェイト映画のポスター
『ターミネーター: ニュー・フェイト』(Terminator: Dark Fate、2019年)は、原題 Dark Fate(ダーク・ファイト) を、邦題は「ニュー・フェイト」に変更した時点で安っぽくなり、かなり微妙になってしまいましたが、この作品も、ジェニシスに続いて「ジェームズ・キャメロン前面出し商法」でした。

「ジェニシスこそターミネーターの3作目だ!」に続いて、ニューフェイトも「正統な続編」と、T2の正統な遺産相続人であることを主張する商法です。

極めつけは、「キャメロン完全復活!」「ジェームズ・キャメロンがついに描く」の文言。
ターミネーター・ニューフェイトのチラシ

ジェームズ・キャメロンは、ターミネーター・ニューフェイトでは脚本も監督も担当していません現場にも足をまったく運んでいません。ジェームズ・キャメロンが発起した作品でもありません。「これは君の映画だ!」とティム・ミラー監督に丸投げです。
→詳細:作る前から失敗していた「ターミネーター・ニューフェイト」

つまりジェームズ・キャメロンが「ついに描く」もしていなければ、「完全復活」もしていないのです。 宣伝文句でハードルを上げ過ぎた結果、あとは落ちるだけ。
フタを開けてみれば、他の既存ターミネーター作品のコピペのようなシーンの連続。「『T2』の正統な続編!」というには、あまりにお粗末な内容。まったくジェームズ・キャメロン色はゼロ。ジェームズ・キャメロン・クオリティーから遠くかけ離れた内容に、観客は失望。大コケ大失敗に終わりました。そしてジェニシスのデジャブで、ニューフェイトも続編製作中止・・・ニューフェイト発の三部作も消滅となりました。
→詳細:老化ターミネーター(お爺ちゃん)は失敗-続編消滅(ジェームズ・キャメロン談)

ちなみに上の商品パッケージでいえば、サラコナーのショットガンも大失敗でした。ターミネーター相手に最大でも3発しか入らないショットガンを持ち歩くのは、説得力がありません。しかもそれを前面に出してかっこつけているのが非常にダサいです。
能書きにだまされやすい人、雰囲気に流されやすい人にしかウケなかった「ターミネーター・ニューフェイト」でした。
→詳細:サラ・コナーの疑問点(ターミネーター:ニュー・フェイト)

まとめ「宣伝のミスリードは失敗の始まり」

失敗した映画やドラマは、宣伝段階から何かしら 失敗していることが多いです。

ターミネーター・シリーズについても、その宣伝の失敗の内訳は、製作者側がやらかしたものから、宣伝側や日本サイドだけがやらかしたものなど様々です。

作品の内容的には、ジェニシスくらいまでが「かわいい失敗」。そして「ニューフェイト」が洒落にならないターミネーター史上、最も深刻な失敗だったと言えます。

ともすれば、エンタメは過剰な表現で注意を引く誇大広告に走りがちですが、宣伝でのミスリードは作品の成否を左右する・・・失敗の始まりにもなりうる、ということがターミネーター・シリーズからも見て取れます。

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